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メスを入れる…?

私は佐賀県にある全寮制の中高一貫校に通っていたが、中学1、2年は完全な男子校、中学3年と高校1年は高校だけ共学化の男子クラス、高校2、3年はクラスも共学、と2年おきに学校を取り巻く環境が変わっていった。

それぞれに良し悪しはあったが、男子校、一部共学、完全共学とあれこれ経験できたのは、今になって思うと貴重な経験だった。


先日、『オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです!』の下のYouTubeを観ていた時のこと。

「男子校あるある」についての回で、「『共学になる』という噂がしょっちゅう流れる」という“あるある”を目にした際、とある出来事を思い出した。


それはまだ私が通っていた中高が完全に男子校だった時のこと。御多分に洩れず私の入学時点から「共学になるらしい」という噂はまことしやかに流れていた。実際入学から2年後に一応共学化したので、もしかしたら私の学校の場合は根も葉もない噂というわけではなかったかもしれないが、それが正式にアナウンスされたのは、実際に共学になるほんの少し前だったように記憶している。

確かそれは始業式か終業式でのことだった。校長先生が挨拶の中で悪化する進学実績を危惧して檄を飛ばしだした。中堅進学校ではよくあることなのかもしれないが、進学実績が次の生徒募集に大きく影響することもあり、校長先生の挨拶というのは大体いつも厳しい口調だったような気がする。

ちなみに、その頃は「共学になるらしい」というのは根拠のないただの噂でしかなかったし、それがなんらかの形で先生方の口から出たことはその時点では一度もなかった。

檄を飛ばす中、校長先生が、

「メスを入れなければならない」

と口にした。

もちろんこれは言葉通りの意味、つまり、思い切った改革をしなければならない、というニュアンスで発せられた言葉だった。

すると、ひとりの生徒が、ぼそっと

「女子を入れる、ってこと…?」

と呟いた。

メスを「雌」だと捉えたのだろう。その呟きは、思いがけず広く伝播し、集会が行われていた体育館中がザワザワし出した。ひとり校長先生だけが何が起こっているのかわからないようで、そのザワザワを鎮めようとしたが、全く効果がなかった。

誤解のないように書いておくが、校長先生もその意味で「メスを入れる」といったわけではないし、呟いた生徒もふざけたわけではなさそうだった(もしかしたら「メスを入れる」の本来の意味を知らなかったのかもしれない)。どちらにも悪意は一切なかったはずだが、共学化に対する途方もない期待と一抹の不安の両方を胸に抱えたほとんどの生徒にとって、公の場で、しかも校長先生の口から“それらしきこと”が発せられたということは、見逃すことのできない大きな出来事だった。

もちろん、もし本当に“そっちの意味”だったら、不謹慎極まりないが…


とんだ勘違いを生んだ男子校生の浮き足だったあの日を、『オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです!』の番組によって、ふと思い出すことになった。共学化したことで、いい女友達が出たり、大学生になってもわりとすんなりと女性と交流を持てたりと、いい面もたくさんあったが、あのある意味での純粋さは、あれはあれで悪くなかったのではないか、と思わずにはいられなかった。

それにしても、もし私が通った中高が6年間完全な男子校だったとしたら、卒業後私はどうなっていたのだろう。山奥の全寮制の学校だったので、普通の男子校よりも女性と接する機会はさらに少なかった。私のことだから、拗らせに拗らせ、女性の目を見てまともに話せない、とんでもない奥手男子が出来上がっていたことかもしれない。だとしたら、女性のお客さんが多い今の仕事は絶対にできていなかっただろう。

共学化して、よかった…


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