一時的な一念発起
1月になると走りたくなるのはなぜだろう。
以前はかなりの頻度でランニングをしていた。一度に走る距離は10kmほど。それを1時間くらいで気持ちよく走るというのが私の「日常」だったのだ。
それがいつの頃からか、ランニングシューズに足を入れる頻度がめっきりと減った。ここ3年くらいのことだろうか。それに伴ってだんだんと身体はふっくらとしていき、去年は急激に太った。夏頃の私はなんだかプロレスラーみたいな体型になっていた。
その頃に比べると今は少しだけスッキリしてきたが、まだまだ私の中ではかなり余分な肉がついている方である。
中学から大学までは短距離走に打ち込んでいたこともあり、私にとって運動することは当たり前だったのだが、ここ数年でゆっくりと「運動しないこと」が習慣となってしまった。一度慣れると運動なしでも日々快適に過ごせてしまう。そうやって私は、「怠惰」に飼い慣らされてしまった。
なんとも、恐ろしい話である。
ただ、どういうわけか毎年1月は走りたくなる。1月の私はいつも自身にこう投げかける。
「ここ最近は運動していなかったけど、やっぱり走るのは気持ちがいい。今からこれをしっかり習慣づけて、夏頃にはスリムな身体を手に入れよう。そうだ、せっかくだから合わせて筋トレもして、腹筋を6つに割るのもいいかもしれない」
もちろん、その意思はパリに降る雪のように早々と消えてしまうのだが、とりあえずこの「一時的な一念発起」は必ず1月に私に訪れる。
1月というのは得てしてそういう月なのかもしれない。年が明け、気分も一新されたところで、新しいことや今まで手がつけられていなかったことに挑戦したくなるのだ。そしてそれは“1月の魔力”が消える2月中旬ごろには、泡沫のように消えてなくなってしまう。
御多分に洩れず、この1月も走りたい欲求に駆られている。今年のパリの冬は思いがけず寒くないので、午前中に近所の森にある湖の周りを一周している。ざっくり5〜6kmほどは走っているはずだ。
ただし、今年の「一時的な一念発起」はどこか様相が違うような気がしてならない。例年の走りたいという欲求は、どこか健康のため、とか、ダイエット、とか、それに付随した目的のためという節があったのだが、今回の「走りたい欲」に関しては、ただひたすらに走りたい、という、より純度の高いものであるように感じるのだ。
もしかしたら、今回の「一時的な一念発起」は、“1月の魔力”とはまた別の力が働いているのかもしれない…と思わないではない。
さて、私のこの「一念発起」は一時的なもので終わらずに継続されるのだろうか。そして私は、夏頃にスリムなボディラインと6つに割れた腹筋を手にしているのだろうか…？
乞うご期待、である。
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