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新宿駅構内RPG

東京にまだ雨が降っていなかった午前11時頃、
僕は新宿駅構内を足早に進んでいた。
いつになったら新宿駅の脳内地図は完成するのだろう、
5年目にして出口を間違えてしまった。
代償としてじめっとした地下を進み、牛丼・カレー・ラーメン・蕎麦などあらゆるジャンルのチェーン店が所狭しと肘を張り合っている通りを歩く。
嗅いだことのある臭いがカオスに混ざり合い、なんとも言えぬ臭いとなって鼻腔を刺激した。
臭からはやく離れようとした僕の歩幅と回転数は他者を遥かに上回り、前を歩く者すべてが触れられぬ障壁となった。
障壁の進路を予測しながら予定の出口を目指す様はBGMさえ付けてくれれば売れないRPGのようであった。
あと少し、あと少し。
しかし、急いでいるのに頭の中はわりとのんびりしていて、今朝コンビニで『チャスッ(失礼します)』と言ってレジに入ってきた青年店員のことを思い出していた。
どう考えても、何度も回想しても、あれはチャスとしか言っていなかった。
そんなことを考えていると目的地が見えてきた。
この冒険が本当にゲームであるならば、恐らくラスボスはチャス店員なのだろうなと妄想を膨らますとつい鼻で笑ってしまった。またカオスな臭いが鼻腔を刺激した。

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