自分を救ってあげる時間

「今の自分は自由で無敵だ！」
なんて思える瞬間が今まで何回あったのか。

次の日の休みが確定している時の深夜1時？
財布に予想以上に現金が入っていた時？
もしくは、終電を逃しても泊まる場所がちゃんとある時？

今回は「自分のエンジンが全開になるのはどんな時で、それは何でだろう」
という話です。

僕は思っていることはあまり言わないタイプかもしれません。というか言えません。というか言いません。自分に嘘をついているとも思いません。
ただ、「僕が言ってもなぁ」とはいつも思ってしまいます。
言って良い相手と言う必要が無い相手を自分の中で線引きしているからです。だからほとんどの人は初対面で僕のことを「わりと静かで何考えてるかわかんない奴」くらいに思っているかもしれません。

写真は小さい頃から好きでした。
多分理由は「親が褒めてくれたから」だと思います。
そこから修学旅行にカメラを持って行ったり、キャンプに行くたびにみんなの写真を撮ったり。ただそれで感謝されるのが少し嬉しかった。頼まれても無いのに人のために勝手に撮った。でも自分の写真は全く無い。それでも良いんです。撮られるのは苦手だし。

でもある日、「人のために、人のために」って勝手にやって勝手に疲れてしまったんです。写真に限った話ではなくて、人間関係的な話。誰も悪くないんです。
正直に言うと、今でもそれはよく起こります。
悪く言うと、人に自分のハンドルを任せすぎていました。それって楽だけど、自分で自分の生活をコントロールできていない。
何度やっても学ばない。

僕は写真を撮るのが好きです。1人で街中を練り歩き、ただ黙々と道の人々や植物の写真を撮り続けるのが好きです。少しでも気になった道や曲がり角があったら絶対に入ります。行き止まりだとわかっていても入ります。
数万歩も休みなく歩くし、雨が降っても傘なんてささない。濡れたって気にしない。
その時は「自分は今、無敵かも！」なんて錯覚を起こすくらいです。敵が何なのかはさっぱりわかりませんが、自分以外は何も自分の邪魔をしない。

心の底から楽しんでいる時は息があがるし体が熱くなります。それが1人で写真を撮っている時なんです。
一瞬でも気を抜いたら、もう一度エンジンをかけるのは時間がかかると分かっているから止められないし、止める気もない。でも終わった後は信じられないくらい疲れます。寿命縮んでないか心配になります。

正直何も余計なことは考えてなくて、ただ周りを忙しなくグルグル見回して、シャッターボタンを押しています。ありもしない宝物をずっと探し続けている感じ。

熱くなる時もあるし、不思議とずっと冷静な時もある。

なぜ1人で写真を撮るのが自分にとって重要なのか。それは多分、自分にとって、自分の欲望に正直に写真を撮り続けることが救いなのだという結論になりました。

自分がクリエイティブになっているなんて思った事もありません。僕は「自由にやって良いよ！」と放り投げられるのはどちらかと言うと苦手で、「最低限のルールを教えてくれればそれに添います」というタイプです。「センスに任せるよ」と言われるのが本当に苦手でした。

僕にとって写真を撮ることは創作行為とは遠いです。それは僕の写真のスタイルが大きく関係していますが、街の中で起こっている事柄を撮ることは僕自身が何かを生み出している訳ではなくて、そこにある人々や物質の時間を借りているようなものです。
それを人は自己表現と呼ぶかもしれないし、アートと呼ぶのかもしれませんが、僕は自由にコレクションしている感覚に近いです。
子どもがキラキラしているものや珍しいものを集めて自分だけの箱にこっそりとしまうように、僕も自分が良いと思うものを写真を通して集めているんです。

自分だけのモノ、自分だけのコレクション。
それが誰かに良いねって言ってもらえると同じ感覚の人が近くにいるみたいで少し嬉しくなるけど、人に褒められることは原動力でも何でもない。
自分のために、モヤモヤした思考をクリアにしたり、自分をちゃんと生かすために止められない。

全ては写真です。全て写真になる。
自分の欲望や好奇心に素直になることで自分を大事にしてあげられている感じがするんです。（他人に迷惑はかけませんけどね）

自分に素直に、自分を自由にさせてあげないと自分が救えない。

僕が自由で無敵だと感じる瞬間なんて1人で写真を撮っている時と椎名林檎の曲を聞いている時くらいなものです。心のお手入れは怠っちゃいけない。
最近やっと気づきました。

やらないと自分が自分じゃ無くなる気がします。
いい意味で自分勝手にならなきゃなと思いました。
お母さんに「もっとバカになりなさい」と怒られたことを思い出します。

#エンジンがかかった瞬間