ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

最近の記事

🍥燻製オイルサーディン🍥

スーパーの鮮魚コーナーに差し掛かったとき、私の脳に埋め込まれた燻製探知機がディン、と反応を示した。その先を見やると、ざるに重ねられた鰯が私の目をぢ、と見つめていたのだ。 鰯か…燻製にしてオイル煮──からのパスタでビールなんて、最高にもほどがあるな… などと思い立ったはいいものの、缶詰で見るような小さいものではなく、15cmほどの中羽鰯である。 さて、どうしたものか。 私は目を瞑り、心を鰯にして彼に語りかけた。 きみは随分と大きいが──オイルで煮ても大丈夫かね。 ──

    • 🍥大葉と燻たこの冷製パスタ🍥

      「一番に好きな食べ物は?」と問われても答えに窮してしまうが、香草はと訊かれたら答えはひとつだ。 私は、大葉偏愛型人間である。 先日の記事で紹介したジャンボン・ペルシエを大葉に置き換えてジャンボン・シソにするほうが好きだし、ペペロンチーノだってイタリアンパセリを使うよりも断然大葉だ。ついでに言うと、厄除けには盛り塩ならぬ「盛り大葉」だし、悪魔祓いに使う聖水なんてたっぷりの大葉入りで堕天使も裸足で逃げ出すほどに爽やかな香りがする。結婚式の御祝儀には5枚も包んで大葉だけに大盤振

      • 🍥ジャンボン・ペルシエ🍥

        トンネルを抜けるとそこは雪国であるように、ハムを作ったその肉肌の先には必ず浮かぶメニューだ。 ジャンボン・ペルシエとは、復活祭に食べられるフランスはブルゴーニュ地方発祥の郷土料理である。手塩にかけた可愛いハムが輝ける場所を探しているときに出逢った料理だ。 東北で生まれ、ずんだ餅や納豆で育った私としては、イースターにジャンボンペルシエをどうぞボナぺティってシルブプレ、などと急に青い目で迫られたものだから、「知らない人にはついていくな──と親から言われていまして」などと弁解を

        • 🍥山椒仕事🍥

          地域の農産物直売所を徘徊していると、掌大にパックされた山椒の実が小ぢんまりと積まれているのを発見した。 梅雨時になると料理家たちがSNSに投稿する「山椒仕事」という言葉に憧れ、指を咥えて眺めるだけで旬を逃し続けていた私だったが、今年は山椒の眼鏡にかなったようで、晴れて採用の運びとなった。ようやく仕事にありつける喜びを噛みしめ山椒を手に帰路に就いたのである。 山椒の手仕事は、目を瞑ってもこなせる程度には何年も前から本やネットで予習済みだ。さっそく枝から外していく。 無数にあ

        🍥燻製オイルサーディン🍥

          🍥ロースハム🍥

          「今年の夏は暑くなるでしょう」 などと、お天気キャスターが眉を八の字にしてのたまっていた。猛暑を予言するばかりか、その眉すらも灼熱の八月を示唆する暗喩にしか思えず、ふた月も前からゲンナリとした心持ちになる。 ウンザリゲンナリと気が重くなったときには、ズッシリモッチリと重いロースハムを作って暗い気持ちを相殺するのが肉塊啓蒙家の作法だ。 思い立ったら吉肉である。なるべく質の良い豚ロース塊を手に入れよう。 運命のロースを連れ帰り、早速トリミングをする。この工程は、いわゆる「

          🍥ロースハム🍥

          🍥燻製麻婆豆腐🍥

          葉にんにくを手に入れた。 スーパーをはじめ、滅多に姿をみせることなく「幻の領域」に至りつつある葉にんにくである。ここは、すみやかに刻んで麻婆豆腐に加えて差し上げることが、葉にんにくに対しての礼節というものだろう。 そして、私は麻辣偏愛型人間である。葉にんにくを迎える麻婆豆腐は、胃腸が苦痛と絶望でのたうちまわるほどの──四川ならぬ死線を感じる危険物がいい。 多少の淘汰はありつつも年々増えていく材料だが、ふとした思いつきで加えた食材まで泰然として迎え入れてくれる懐の深さが麻

          🍥燻製麻婆豆腐🍥

          🍥牛喃尾巴飯🍥

          たったひと口で──過去の景色が蘇ることがある。 中学の修学旅行で訪れた横浜中華街。その混沌とした街の佇まいは少年の心をプスプスと射抜いた。それから数年が過ぎても憧憬の矢が胸に刺さったままの少年は、ついに故郷を離れ横浜で暮らし始めたのである。そして、事あるごとに──事なきときも、中華街を訪れるようになった。 むせかえるような香を焚いた雑貨屋、得体の知れない乾物が並ぶ食材屋、古今東西の剣や暗器を扱う謎の武器屋など、金がないのに暇だけを持て余していた私は、日がな一日、あてどもな

          🍥牛喃尾巴飯🍥

          🍥燻製スパイスケーキ🍥

          赤いパンツを買った。 歳をとると新しいこと対して億劫になる。いわゆる、焼きがまわる──というやつだ。 このまま老いさらばえて、昔話ばかりする説教くさい老人になるのだけはごめんだ。ここは日常にスパイスをパパッと振りかけ、単調だった味わいを変えていこうと思い立ったのである。 その第一歩が、いままでの人生では絶対に選んでこなかった「赤いパンツ」というわけだ。早速、風呂上がりにそれを穿き、なんだか生まれ変わった心持ちになってビールを片手に徘徊していると、 「浮気でもしているんです

          🍥燻製スパイスケーキ🍥

          🍥焼き鳥🍥

          例のごとく精肉コーナーを徘徊していると、鶏もも、砂肝、はつ、皮、といった部位が、視界から侵入し、私のがらんどうな心に次々と嵌っていった。 おっと…せせりまであるじゃないか…。思わず「チェックメイト」と呟く。嘘をついてしまった。人混みで「チェックメイト」などと口に出すほど、私の羞恥心はユルくない。 「ほじる」のことを西の古い方言で「せせる」という。つまり、首骨から肉を「せせり取る」ことが由来とされているせせりだが、スーパーに冷凍ではないプリプリのそれが置いてあるとは──僥倖と

          🍥焼き鳥🍥

          🍥燻製蛍烏賊のラグーパスタ🍥

          持つべきものは市場の友で、富山のホタルイカが大量に届いた。 ホタルイカを見かけると、燻したくて燻したくて白目を剥いて震えだす、蛍烏賊燻製偏執狂の私は、届いたそれを心ゆくまでスモークし、そして例のごとくオイルで封をしたのである。 ホタルイカの燻製レシピについては以前記事でご覧あれ。 大量に作ったはいいものの、レパートリーに乏しい私の使いみちといえば、オイルパスタにするか、アヒージョにするか、はたまたそのまま酒のあてにするのがせいぜいだ。オイルに沈み犇めき合う燻製ホタルイカ

          🍥燻製蛍烏賊のラグーパスタ🍥

          🍥燻製勘八のカルパッチョ🍥

          スーパーの店内を回遊していると、私の目は鮮魚コーナーの勘八に引き寄せられた。 回遊魚である勘八に、スーパーの回遊男である私が邂逅したことは、当然の帰結かもしれない。 こういった邂逅いは、煙を燻らせ祝福するに限る。なぜなら、私は燻製家だ。 燻製をせずにはいられない。 地球を観たガガーリンが「青かった」と言わずにはいられなかったようにだ。 早速、勘八を拡げたピチットシートに置き、満遍なく塩と三温糖、黒胡椒を振る。分量は…その…アレだ…行雲流水だ。 そのまま勘八をピチットシ

          🍥燻製勘八のカルパッチョ🍥

          🍥桜刺し🍥

          結婚の承認を得に、妻の実家である熊本へ行ってから十余年。 その折に食べた熊本の桜刺しに感動し、いまでは季節の変わり目には膝の痛みとともに、額に「馬」という文字が薄らと浮かびあがり、スニーカーのNのロゴがHに変わるほどの好物になってしまった。 それって…ニューバランスの偽物なのでは… などと思ったあなたは修行が足りない。鼻人参の刑に処す。 キャロットノーズはさて置いて、ありがたいことに誕生日に義母から馬肉がたくさん届いた。 「おれんちの冷凍庫には桜肉がたくさんあるんだ

          🍥桜刺し🍥

          🍥燻製牡蠣のおぺぺ🍥

          鮮魚コーナーで、ぷっくりぷりぷりとした加熱用の牡蠣を見つめていると、 「加熱だけで済むと思うなよ…」 などといった嗜虐的な心持ちになって、矢も盾もたまらずに連れて帰ってしまった。 牡蠣を見かけると煙責めの刑に処したくなる。それが燻製家という生き物の宿痾なのだ。 早速、刑を執行していこう。 牡蠣に塩少々と片栗粉をまぶし、優しく揉み洗いする。汚れが濁りとなって出てくるので、水に泳がせてざるに上げる。 この揉み洗いを3〜5ターンほど繰り返して汚れを落とすのだが、生の牡蠣

          🍥燻製牡蠣のおぺぺ🍥

          🍥ベーコン🍥 〜燻製編〜

          前回のベーコン作り下準備編では、勢いあまって話が避妊具に帰結してしまった。 生きていれば不可解な出来事のひとつやふたつはあるものだ。立ち止まらずに先へ進もう。 さて、ここからは、ベーコン作りで最も重要な温熱乾燥の工程に入っていく。 燻製の大敵は、結露による水分である。いくら食材の表面を乾かしても、肝心の内部が冷えたまま燻煙にかけると、その温度差により「結露」が発生し、その燻された水分は木酢液となって、エグい酸味が乗った最悪な仕上がりとなる。 燻製で失敗する原因の9割は、

          🍥ベーコン🍥 〜燻製編〜

          🍥ベーコン🍥 〜下準備編〜

          イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの金言だ。 なるほど。 賢者はベーコンを見つけるよりも 自らベーコンを創りだす ということか。 思い立ったが吉肉。早速ベーコンを作っていこう。 豚バラ肉の重量に対して、 ・岩塩4%  ・きび糖2%(または三温糖) ・セージ ローズマリー オレガノ 少々(乾燥) ・乾燥ローリエ 1kgに3〜4枚程度  ・黒胡椒 0.5%(挽きたて◎) ・ナツメグ クミン コリアンダー カルダモン等少々(挽きたて◎) 以上の材料をよく混ぜ合わ

          🍥ベーコン🍥 〜下準備編〜

          🍥燻製キャロットケーキ🍥

          「だって…果物じゃないじゃん…」 などといった偏狭な理由で避けていたキャロットケーキだ。 妻の好物であること。素人でも簡単に調理できること。そして、ナッツとクリームチーズが夜な夜な私の枕元に立って「燻せ燻せ」と訴えかけること。 以上が、私が重い腰を上げキャロットケーキを作るに至った理由である。 早速、クリームチーズとナッツを煙で改造していこう。 溶けやすいクリームチーズは、冷燻にかけていく。チップは、ミズナラとリンゴに、栗を少々混ぜたものだ。 具体的なチップの分量

          🍥燻製キャロットケーキ🍥