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筋肉が痛みや関節可動域制限の要因となるメカニズム

今回は、赤羽根良一先生の、「痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション」の内容を一部抜粋し紹介させていただきます。

関節可動域制限にはそれぞれ制限因子があり、どんな制限因子かによって、実施する治療も異なってきます。

筋の圧痛所見、硬さ、疼痛の種類をみることで、関節可動域の制限因子の鑑別を正確に行いましょう。

引用文献:赤羽根良一(2020)「痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション」羊土社

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https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758102469/

1)筋攣縮(muscle spasm)

筋攣縮は、筋が痙攣した状態です。血管が痙攣している場合もあります。関節の周辺組織が何らかの侵害刺激を受けると侵害受容器が反応し、その信号が脊髄内に伝えられます。脊髄反射によって前角細胞のα運動繊維に作用し、筋攣縮を引き起こします。

筋攣縮を生じると、筋細胞外に発痛物質を放散するため疼痛が発生します。その際、高閾値機械受容器やポリモーダル受容器の閾値を下げるため、圧刺激に対して感受性が高くなります。また、脊髄反射によって筋緊張ならびに筋内圧が高い状態が持続し、その状態で過度な収縮や伸張刺激が加わると疼痛を引き起こすきっかけとなります(神経筋反射障害)。

すなわち筋攣縮の評価は、圧痛所見、筋緊張、収縮時痛、伸張時痛をみる事が重要となります。

2)筋短縮(muscle shortning)

筋短縮は伸張刺激に対して筋が伸びる事ができず、抵抗性が高まっている状態です。これは、筋実質部の伸展性低下と筋膜の繊維化などによって生じます。

筋を引き伸ばすと筋繊維を構成する最小単位の筋節が長軸上に引き伸ばされますが、この筋節の量が減少する事で、伸びにくく抵抗性が増した状態となることを筋実質部の伸展性の低下と言います(筋実質部障害)。

筋膜の繊維化とは、関節の不動(固定)や運動不足によって、筋膜や筋内膜のコラーゲン分子の末端に架橋結合(平行に走行する組織に対して直行して結合すること)が形成されて筋膜が硬くなり、伸張刺激に対して伸びにくく抵抗性が増した状態を言います。しかし、組織としては安定しており、閾値が高いため圧刺激に対する疼痛は軽度です。また、過度な筋収縮を行っても疼痛は発生しづらいです。

すなわち筋短縮は、伸張痛・筋の硬さを認め、圧痛所見はないか、あっても軽度で、収縮時痛はない場合に疑われます。

3)癒着(adhesion)

癒着とは、組織間が一塊となって滑走しなくなることであり、粘性が高まり滑走性が失われた状態も含みます。軟部組織が損傷すると、その修復過程に於いてフィブリノーゲンの沈着や線維芽細胞の増殖・成熟による瘢痕組織が形成され、周囲の組織を巻き込みながら癒着・瘢痕化します。そのため、癒着部周辺は硬くなるとともに、近位方向や遠位方向への滑走性に対する抵抗が増し、収縮時痛や伸張時痛を認めます(組織感滑走障害)。

すなわち癒着の評価は収縮時痛、伸張時痛、組織の硬さをみる事が重要となります。なお、癒着は筋のみならず皮膚・皮下包・滑液包・脂肪体・靭帯・関節包など、あらゆる軟部組織間の隙間で起こることに留意する必要があります。

4)筋の硬さの違い

筋攣縮は関節肢位にかかわらず筋緊張が高い状態

筋短縮は伸張肢位に伴い筋が硬くなる状態

癒着は関節肢位に伴い癒着部周辺のみが硬い状態

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は、赤羽根良一先生の、「痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション」の内容を一部抜粋して引用させていただきました。

評価・治療手順が写真付きで詳しく解説されていますので、興味がある方は読んでみてもいいかもしれません。

関節可動域制限因子を正確に評価することで、日々の臨床に生かしていきましょう!そして、一人でも多くの患者さんを笑顔にしていきましょう!

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