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TOYOTAの決算発表を通じて研究開発型事業を創る人が学べること(前編)

少し前の話になるのだが、TOYOTAの決算発表をWebで見る機会がありました。僕は自動車業界の片隅も知らないし、株主でもないし、TOYOTAの車を自分で所有したこともない。

自分がやろうとしていることの参考にするべく、あえて異業種の観察をしている。常時決算発表をウォッチしている立場でもないのでこれから書くことは、当たり前のことに気がついただけかも知れないだけかもしれない。

しかし、世の中の大きな変化を前に日本最大企業のトップが何を考えているのかを垣間みることで、特に研究開発型の新規事業を創る上で大切な「視点」を見つけたので紹介したい。

本編の書き起こしと動画は最後にリンクを入れてある。

準備の徹底

章男社長はリーマンショック直後からの長期に渡り経営している強みを活かして、10年超の時間軸の中での取り組みを以下の4点に絞ってアピールすることを選んでいる。

ポイント①:前回の外部要因危機であるリーマンショック前後と現在のコロナ禍前後数字上のインパクトを対比して見せる。

ポイント②:現在の方が、売上高が伸びなくても、その間の経営改善により利益確保できる体制になっていることをアピール。

ポイント③:手持ち現金(リーマン時:3兆、今8兆)と未来への投資を止めなくて済む状態になっていることをアピール。

売上高の減少要因の考察がないことに不安を覚える人もいるかも知れないが、一般的に見たら株主から「信頼」を得るには十分かと思う。

以下研究開発型事業を預かる立場の視点から参考になったことを纏める。

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【置き換え視点】

株主への報告という場でなくても、ちょっとした支援をしてくれる人に報告する機会はある。その前の準備として、前回触れた話題を振り返り、そこから良くなった点や、成長した点をまとめてみるのはすごく効果的。

日々の忙殺の中で忘れがちな自分orチームの良い点に気づくことができれば自己肯定感が高まる

支援者に対してもたとえ挑戦の結果が思い通りにならなかった場合でも、その中で見えた改善点などを話すうちに、思いがけないアイディアが生まれたりするものだ。


変えるべき事と変えない事を自らの分析(科学)と直感(哲学)をもって説明すること

記者からの質問で

「100年に一度の変革期と言われている自動車産業や、あるいはトヨタのあり方といったものをどう変えていくのか。逆にですね、変わらないもの、守れなければいけないものというのはなにか?」

というものがあった。

これは想定内の質問だろう。コロナ禍で自分自身の働き方が変わった事を定量的(移動時間80%減、接触人数85%減、会議時間30%減、会議資料50%)に述べた上で、

「直接会う必要があること/ないことを峻別する必要」について触れたこと。特に、これまでの常識だと、

「自らが足を運んで、ごあいさつに行かない状況を説明しないと失礼に当たるんじゃないか」

と思っていたけれど、「謝罪とかでなければ、別に面着でなくて必要なことだけクイックに確認できる方がいいですよね」という感じで話されていたのはちょっと驚きとともにナイス!と思ってしまった。

確かに誠意を伝えなくてはイケない部分では面着が必要なのかも知れないけれど、オンライン上でのクイックなミーティングには相手の時間を無駄に取らなくて良いという最大のメリットある。

実業界の重鎮がこうやって自分の中で得た新常識を堂々と言ってくれるとこういうアポのとり方がオーソライズされていく過程にあるようで良い傾向だと思う。

本トピックでもうひとつ面白い質問と回答があった。

私からも一つ、変化の観点から質問させていただければなと思います。先ほどの社長のスピーチの中で、今こそが構造変える大きなチャンスだという言葉がありました。新型コロナの時代、ニューノーマルとか、新しい日常とかっていうふうな言い方も出ていますが、トヨタの経営哲学の一つに、現地現物主義があるかと思われますが、この現地現物主義にも変化はあるのでしょうか。

これに対して以下回答。

商品の現物を見るというものに関してはですね、いわば変化点をしっかりと自分自身が感じるそのためには、説明者が見せたい画像だけじゃなく、それ以外にそこで働いている人たちの目つきとかですね、車から感じられるオーラとかいうものが必要なことってあるんですね。

不易流行の彼なりの哲学を感じる。

単なる数字屋ではこのような発言は出ず、車屋としての矜持のようなものがあると思った。特に「説明者が見せたい画像だけではミスリードしてしまう」という今のオンラインでの限界も認識する必要がある。

以下研究開発型事業を預かる立場の視点から参考になったことを纏める。

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【置き換え視点】

・社外やあまり面識ない偉い方に対しても、初期段階では特段面着して何か提案する必要はなくなる(相互に非効率)

提案内容(What)と提案している人物が誰(Who)なのかがより重要になる。

・提案内容(What)は取得できる情報から、相手の内部、外部環境、心情を想像して刺さる内容を考える。情報収集能力(ツール使いこなし技術含め)+妄想力が重要になる。

・誰(Who)については、インターネット上に自分の活動記録を残し、そこをリファレンスできるようにする。積み上げが必要

・ネット上の活動記録については、意見の違う人との対応力(スルーや組織的に対応するなど)により、ポリシーを決める必要はあるが、実名で行う方が仕事には繋がる。若年者やレジリエンス訓練が脆弱な場合は実名使用でないほうがメリット多いかも知れない。

・Web会議では受け取れない部分があるという当たり前のことを理解した上で、自分達の場合は何が画面上から見えていないのかを想像することが重要。

後編の内容

以下を予定しています。

・企業経営で最低限守らないとならない組織や人に関する考え
・質問に対し極力誠実に回答した上で違うものは「違う」と主張するための技術

後編はこちら

参考資料

決算説明会本編の書き起こし。

質疑応答の書き起こしは以下




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