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ハタと気づけば

何度か書いているように、わたしは日本旗章学協会に所属している。わたしが入会したのは11年前に本格的に帰国してからなので、ハタと気づけばすでに10年以上が過ぎている。

じつはその何年も前から何名かの会員とはネットを通じてやり取りがあった。当時はまだブログ全盛期で、ソーシャルネットワークはまだ黎明期と言ってよく、ハタと気づけば国産SNSのミクシィが流行りはじめた頃。そのミクシィの国旗コミュニティで活発にやりとりをしていたのがきっかけになった。いつも尋常じゃない数の旗画像と関連情報を提供してくれていたユーザーがコミュニティの管理人で、そのかたが日本旗章学協会初代会長の苅安望氏だった。

わたしはそんな頃から入会を勧められてはいたのだけど、名古屋に住んでおり遠方なので遠慮していた。当時の会合は東京都内だけだったので、参加できる機会が少なくて申し訳ない気持ちがあった。

名古屋で非常勤の仕事をしていたわたしは、ハタと気づけばモンゴルに住んでいた。さらに遠方になったが旗がらみのネットのやりとりは継続していた。やがてモンゴルを引きあげ、約半年のあいだタイにいたあと帰国することになった。

苅安会長とはネットだけでなくウランバートルとバンコクで実際にお目にかかってはいたものの、ハタと気づけば、なぜか日本国内では会っていないという不思議なことになっていた。

帰国後、関東地方に住むことになった。ハタと気づけばようやく会合に出られる環境だった。そのタイミングで入会。当時は協会設立から13年で、今にくらべればまだずっと小規模な団体だった。

インターネットの一般普及にともなって会員数は少しずつ増えてゆき、ハタと気づけばわたしは事務局で企画管理を担当するようになっていた。そしてハタと気づけば、他の会員とともに出版委員会を組織し、学術誌を出すようになっていた。

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そして今年。苅安会長が引退され、わたしが会長を引き継ぐことになった。以下、協会のウェブサイトに書いた挨拶文を転載しておく。

このたび、2代目の会長に就きました桂田祐介ともうします。
創設以来12期24年にわたって日本旗章学協会を率いてこられた前任の苅安望前会長は、数々の著作を発表されるとともに、2009年の第23回国際旗章学会議の成功をはじめ、旗章学の周知と協会の発展に大きく貢献されてきました。
現在は会員数が大幅に増え、協会に期待される活動内容は多岐にわたっています。これまでの業績と多様な会員の潜在力を原動力に、学際的な研究領域としての旗章学の発展と次世代への継承をさらに進めていきたいと考えています。
令和6年1月 日本旗章学協会 会長
       桂田祐介

日本旗章学協会ウェブサイトより

会長交代にともなって各所に表敬訪問をした。そのうちのひとつが、協会設立時からの法人会員、大阪にある田中旗店さん。

なんと創業は大正元年とのこと。これは忠岡町にある工場に保管されていた古い看板。

訪問時には何から何までお世話になり、縫製や刺繍の現場、旗以外の製品を作っている工場などを見学させていただいた。なかでも田中旗店さんが信頼をおいている兵庫県伊丹市の大路染工場さんでは、実際に日の丸を染色するという貴重な体験をさせていただけた。

円形の型を通して赤の染料を塗り込むわたくし。撮影は同行した会員の江川知影氏。

これは日干しする関係で天候に左右される作業のため、見学をアレンジしてくださった田中旗店の社長室の清水室長は天気予報がとても気がかりだったとのこと。天候にめぐまれて良かった。

◇◆◇

ハタと気づけば早くも3月。

年始早々にポプラ社から出た幼児向けの書籍『はじめてのせかいのこっき』の監修を担当した。国旗関連の一般書では、4年ぶり。noteで告知しそびれていたので、どさくさに紛れて宣伝しておく。

197ヶ国の国旗が載った書籍としては700円ほどで買えるのはおそらくこれぐらいではないかと思う。幼児が扱うからか、紙も製本もとても頑丈だ。

大型書店の児童書コーナーに置かれているのをときおり見かける。

こういうのを回転塔というらしい。この本の監修を担当してはじめて知った。

そしてもう1冊。山と渓谷社より『くらべてわかる国旗』。わたしはこの本でも監修を担当した。

今月6日の発売日に告知すべきだったのかもしれないけれども、こちらも機を逸してしまっていた。ハタと気づけば、本日3月20日は奥付の発行日ではないか。告知するタイミングとしてはちょうど良かった。

山と渓谷社さんはアウトドア専門の出版社というイメージがあったのだけど、このように周辺分野も手掛けられている。

この「くらべてわかる」シリーズは、名古屋で一緒に仕事をしていたかたが執筆したものがあったので知っていた。ハタと気づけば、わたしも同シリーズで、しかも本業ではないところで名を連ねることになった。なんとも不思議な感覚になる。

比べることはサイエンスの基本である。

これは旗章学を提唱したホイットニー・スミス氏の言葉だ。彼は、旗と関連情報を比較し体系的にまとめることで学問的なアプローチを試みた。

この本のアプローチはさまざまなテーマで国旗を比較した内容である。わたし自身、ライターさんが書いた原稿をチェックするなかで気づきがあった。よくある国旗の図鑑よりも、そうした気づきの多い構成になっている。自画自賛になるけれど、旗章の入門書としてもオススメしたくなる。

なお、版元のnoteでも新刊案内のなかで紹介してくださっている。新刊案内を見ると、ほかにも面白そうな書籍が多い。わたしは『海のへんな生きもの事典 ありえないほねなし』がものすごく気になっている。ハタと気づけばもう発売日を過ぎているではないか。書店に行かなくては。

◆◇◆

昨日小包が届いた。品名には「日の丸」とある。そう、我が国の国旗の日の丸である。染色の体験をさせてもらった日の丸が仕上がって、ご丁寧なことに送ってくださったのだ。感謝。

ハタと気づけば、いろんな国の旗は持っているのに自国の国旗は持っていなかった。日本は変な国で、自国の国旗を掲げづらい風潮がある。

ハタと気づけば、今日は春分の日。祭日すなわち旗日である。

旗竿を持っていないのですぐには掲揚できない。リモート会議でやっているように部屋の目隠しをかねて旗章学コーナーに掛けてみた。今回の見出し画像がその様子。日の丸の白地は生成りのようで、赤の発色はじつに良い。

ハタと気づけば、ハタと気づけば・・・。

ちょっと調子に乗って書いていたら、ハタだけでなく気づきも多いエントリになった。なにかと忙しくなりそうな今年、これからはさらに旗関連でのやることも増えそうだ。

国旗にまつわるわたしの監修書籍、もしよければ手にとって見てみてくださいませ。

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