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日本はもはや「医療費の安い国」ではない

前回の記事で、日本が10年くらい前までは「世界一の長寿国で、医療費も安い」世界がうらやむような医療制度を持った国であったと説明しました。しかし、日本のそのような立ち位置は崩れつつあります。

まず医療費に関して見てみましょう。

最新のデータを見てみましょう。これは各国がGDPの何%を医療支出に使っているのかを示したグラフです。医療支出とは、医療費に介護保険に係る費用のほか健康診査などの予防の費用を加えた数字で、一般的に医療費の国際比較で用いられる指標です。

2022年のデータを見てみると、日本の医療支出はアメリカ、ドイツ、フランスに次いで、世界第4位と高いことが分かります。OECD平均の9.2%と比べても、11.5%と約25%ほど高いことがわかります。

(出典:OECD

しかし、そもそもなぜこの「GDP比の医療支出」を指標として使うのでしょうか?この指標はどのように解釈すればいいものなのでしょうか?

このGDP比の医療支出とは、実は「国民一人当たりの医療支出」を「国民一人当たりのGDP」で割った数字になります。分子と分母が打ち消しあって、「国民一人当たり」の部分が無くなることになります。

GDPとは「国内総生産」のことで、国内で産出された付加価値の総額のことです。これを国民の数で割った「国民一人当たりのGDP」は、その国の「平均所得」の指標であると考えられます。

よって、「GDP比の医療支出」とは、国民の所得の中に占める医療費の割合を表す指標なのです。日本の数字は11.5%なので、平均すると日本人は所得の11.5%を医療費に使っていると考えることができます。

日本の医療費は昔から高かったわけではなく、OECD平均を超えるようになったのは2015年頃から以降の話です。その頃に何があったのでしょうか?

次回は、日本の医療費の歴史的推移と、その要因に関してご説明したいと思います。

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