国民民主党の代表選挙の結果はいかなる意味を持つか

9月2日(土)に行われた国民民主党の代表選挙で現職の玉木雄一郎氏が再選されたことを受け、自民党内では同党の連立政権入りを模索する動きが出ています[1]。

確かに、法案ごとに対応を決め、政権と時に対峙し、時に協力するのが玉木代表の下での国民民主党であっただけに、玉木氏の入閣を含めて連立政権入りが取りざたされるのは無理からぬところです。

また、公明党との関係が円滑さを欠く場面が増えている自民党にとって、国民民主党の持つ労働組合からの支援という集票力は魅力的であり、同党の最大の支持母体である連合の芳野友子会長が政権と友好的な関係にあることも、こうした見方を傍証的に支持します。

芳野会長が国民民主党の連立政権入りを「聞いていない」としたのは[2]、一面において発言の時点での真実であるかも知れず、他面では現在何らかの交渉が行われていることを秘匿するための陽動的な措置かも知れません。

そして、このとき、苦境に立たされるのが、国民民主党とともに旧民主党及び旧民進党を淵源とし、野党第一党ではあるものの昨年の統一地方選挙で伸び悩み、衆参両院の補欠選挙で全敗するなど、党勢が振るわない立憲民主党です。

現在の立憲民主党が置かれた状況は、党勢の点で野党第二党である日本維新の会の下風に立たされるとともに、自民党内に明確な後継者がいないという状況もあって岸田文雄政権が早期に退陣する要因が見当たらず、存在感を発揮しにくいというものです。

一方、衆議院の早期の解散論も取りざたされる中で野党間の選挙協力をどこまで進めるのか、特に共産党との関係をどのようにするかという点で党内の見解が一致していないことは、立憲民主党にとって大きな問題です。

もちろん、淵源が同じという点で国民民主党と立憲民主党が合流することは望ましいとはいえ、両党の設立の経緯とその後の展開を見れば、二つの民主党の合同は国民民主党の連立政権入り以上に難しいと言わざるを得ません。

しかし、立憲民主党が共産党との関係を強化して候補者の調整などを行えば、総選挙で一定の成果を残すかもしれないものの、国政の場から中道政権が事実上消滅し、あたかも保守勢力と革新勢力の二つに収斂されるかのような状況が生じます。

これは、結果的に本来保守政党である自民党が進歩的な政策を提起し、革新政党には距離を置きたいものの教育や福祉の充実を含む社会の不公平の是正を願う多くの有権者を取り込むことに成功している現在の潮流に掉さすことになります。

日本維新の会の躍進は保守政党という見かけと掲げる政策の間の差を巧みに利用した結果であり、現在の立憲民主党の党の方針の揺らぎは、このような看板の使い分けを難しくしています。

このように考えれば、今回の国民民主党の代表選挙は、同党にとって存在感を向上させただけでなく、野党勢力のあり方そのものの見直しを迫る一面を有していると言えるかも知れません。

[1]国民民主、玉城代表が再選. 日本経済新聞, 2023年9月5日朝刊4面.
[2]連合会長「聞いていない」. 日本経済新聞, 2023年9月4日朝刊2面.

<Executive Summary>
The Presidential Election of the Democratic Party For the People Has a Remarkable Impact for the Opposition Parties (Yusuke Suzumura)

The Presidential Election of the Democratic Party For the People was held on 2nd September 2023. On this election examine an impact of the result for the opposition parties, especially the Constitutional Democratic Party of Japan, the leading opposition.

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