「維新と国民の相互推薦合意」はいかなる意味を持つか

昨日、日本維新の会の馬場伸幸共同代表と国民民主党の前原誠司代表代行が会談し、今夏に行われる参議院議員選挙について、静岡県と京都府の選挙区でそれぞれが支援する候補者を互いに推薦することで合意しました[1]。

両党が相互推薦の合意文書を取り交わすのは初めてとなります。

国民民主党に対しては、党の淵源とともに労働組合を主たる支持母体とすることでも共通項の多い野党第1党の立憲民主党が選挙協力を働き掛けています。

しかし、京都と静岡という2つの選挙区に限定されるとはいえ、立憲民主党と対立する日本維新の会の側に国民民主党が立ったことで、調整の難航が予想されます[2]。

今回の両党の合意については、大阪府では強固な地盤を持ちつつ他の地域への支持の広がりに欠ける日本維新の会と、昨年10月の衆議院議員選挙で「野党共闘」を推進する立憲民主党が改選前の議席を下回る勢力に留まったことで新たな選挙戦略を模索する国民民主党の利害が一致した結果であると言えるでしょう。

一方で、独自路線を標榜し、「野党共闘」を「野合」と批判してきた日本維新の会にとっては従来の方針との整合性ゆあ新しい戦略の正当性が問われます。

また、国民民主党も、重要な支持母体である連合が自民党への接近を図り、保守化が進んでいるとはいえ[3]、
日本維新の会とが対立関係にあります。従って、自民党以上に保守的な要素が強い日本維新の会との間で、限定的であるとはいっても選挙協力を行うことについて、どのように連合側に説明を行うかという難問があります。

こうした状況を考えれば、「野合は理念なく選挙に勝つためだけに協力すること。日本の課題、難問に取り組むには数が必要でそれは野合とは呼ばず、『崇高な目的を達成するための協力関係』だ」という馬場氏の説明[2]をそのまま受け入れることは難しく、現時点では選挙目当ての連携の域を出ないことは容易に理解されます。

これに加えて、前原氏には、2019年の参院選で京都・静岡両選挙区について立憲民主党の福山哲郎氏との間で結んだ「候補者一本化の合意」が崩れた経緯があります。

政治においては、理念や政策以上に人間的な好悪の感情がしばしば重要な点となります。

それだけに、昨日の合意を契機として立憲民主党と国民民主党の関係がどのように変化するか、あるいは日本維新の会が京都、静岡以外の地域での勢力の拡大を目指して国民民主党との連携を深めるのか、今後の動向が注目されます。

[1]維新・国民が相互推薦. 日本経済新聞, 2022年4月21日朝刊4面.
[2]維新と国民民主、選挙協力. 朝日新聞, 2022年4月21日朝刊4面.
[3]連合会長、自民会議に出席. 日本経済新聞, 2022年4月19日朝刊3面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of Electoral Cooperation between the Japan Innovation Party and the Democratic Party For the People? (Yusuke Suzumura)

The Japan Innovation Party (JIP) and the Democratic Party For the People (DPFP) agreed for Electoral Cooperation for the Election of the House of Councilors on 20th April 2022. It seems a kind of an illicit union for the election itself, since there are some remarkable problems between the JIP and the DPFP.

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