「新型コロナウイルス問題に対するITの貢献」に思ういくつかのこと

新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界各国で「都市機能の制限」が行われ、日本においても「物理的距離の確保」や「3つの密を避ける」といった取り組みが励行されています。

日本においては、これらの活動が実際に効果的になされているか、あるいは種々の取り組みによって新型コロナウイルス感染症の拡大が抑制されているかという点に検討の余地があることは否めません。

その一方で、「不要不急の外出を控える」、「企業は在宅勤務を進める」といった取り組みが成り立つことや官公庁による情報の発信をわれわれが同時的に視聴できること、さらには休日に外出を控えている間もわれわれが様々な情報を発信し、相互に連携できることが、情報通信技術の発展を背景としていることは誰もが実感するところでしょう。

すなわち、各種のソーシャル・ネットワーキング・サービスの発達と普及とにより、多くの人が情報の発信を容易に行えるようになったことで、われわれは物理的に他の人と接触できない間も、視覚や聴覚などを通して他社の情報に接し、あるいは自らの情報を伝達することが出来るようになりました。

もちろん、情報の伝達は、従来からテレビジョンやラジオ、電話、さらに雑誌や新聞などの媒体がありました。

しかし、これらの媒体の多くは情報の発信者は一部に限定されており、より多くの人が情報の発信に与ることは困難でした。

一方で、1990年代後半以降は、所定の設備があれば誰もが情報の発信の担い手となりなる機会を得ましたし、ソーシャル・ネットワーキング・サービスがそのような機会を促進したことは周知の通りです。

実際、1人が伝達できる情報の量は過去100年間で149万9177倍になったという試算[1]もあり、人々の情報伝達力は確実に向上しています。

こうした状況は情報の発信の容易さとともに不正確な情報の発信の増加という問題も引き起こしています。

それでも、情報の発信への障壁が高いままであれば、「外出を自粛」という要請に従う人はより少なかったかも知れませんし、困難な状況にある人が救援を求める声を上げることも容易ではなかったでしょう。

その意味で、現在の新型コロナウイルス感染症対策の一端は、情報通信技術の発達なしには考えられないものであっただろうと、改めて思われるところです。

[1]善意の投稿 人類翻弄. 日本経済新聞, 2020年4月6日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is a Contribution of Information Technology against the Measures of the COVID-19? (Yusuke Suzumura)

After Februray 2020 to conduct measures against the COVID-19 is most important issue for the world. On this occasion we examine a contribution of IT to the measures.

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