わがかそけき「宝塚体験」

去る2月15日(土)に御園座において宝塚歌劇月組公演『赤と黒』を鑑賞したことは、本欄でお伝えした通りです[1]。

今回の鑑賞は、私にとっては2011年1月2日に東京宝塚劇場で大空祐飛のロバート・ジョーダンと野々すみ花のマリアによる宙組の『誰がために鐘は鳴る』を観て以来、9年1か月ぶりの宝塚歌劇団の公演となりました。

このときの『誰がために鐘は鳴る』は、折から来日していた、当時はニュージーランドのオタゴ大学講師だったシェリー・ブラント博士の現地調査を兼ねて鑑賞したものです。

やや駈け足気味の展開が、抗いがたい運命の過酷さと悲惨さを簡潔に描き出しており、悲劇の物語にふさわしい重厚感のある舞台となったことが印象的でした。

ところで、遡ってみると、これまでに私が鑑賞した宝塚歌劇団の公演は以下の通りとなります。

(1)花組公演『失われた楽園』、『サザンクロス・レビュー』(1997年3月13日[木]、東京宝塚劇場)
(2)宙組公演『砂漠の黒薔薇』、『GLORIOUS!』(2000年3月28日[火]、TAKARAZUKA1000days劇場)
(3)宝塚歌劇90周年記念日生劇場特別公演『花供養』(2004年9月2日[木]、日生劇場)
(4)月組公演『パリの空よりも高く』、『ファンシー・ダンス』(2007年3月5日[月]、東京宝塚劇場)

実際に勘定すると思っていた以上に鑑賞の機会があったのは、東京宝塚劇場などの最寄り駅の一つである有楽町駅が通学、通勤先の最寄である市ケ谷駅から近かったことが少なからず影響していたこと、またTAKARAZUKA1000days劇場については有楽町線に車内広告を目にして期間中に鑑賞しようと思ったことが挙げられます。

上記の4回の公演でひときわ印象深いのは『パリの空よりも高く』で、「脚本、演出、装置、音楽のすべてがトップスターに焦点を当てる宝塚にあっては、女性役の存在感が重要」という日頃からの印象が確信になった内容でした。

この時の出演者中の白眉はホテル・ド・サンミッシェルの女主人エレノール役の出雲綾で、出雲の存在が、舞台に喜劇の軽やかさにもうひと味を加えていました。

また、後半のレヴューは1920年代の雰囲気をよく伝えており、「フィナーレ」はエセル・マーマンの『ショーほど素敵な商売はない』を髣髴とさせる華やかさであったことも興味深く思われたものでした。

私のかそけき「宝塚体験」であります。

[1]鈴村裕輔, 宝塚歌劇月組公演『赤と黒』. 2020年2月15日, https://note.com/yusuke_suzumura/n/nd6e7bbcd40f5 (2020年2月19日閲覧).

<Executive Summary>
My Faint Experiences of The Takarazuka Revue (Yusuke Suzumura)

I attended a performance of The Tsuki Gumi of The Takarazuka Revue, Le Rouge et le Noir held at the Misono-za on 15th February 2020. On this occasion I remember my experiences of The Takarazuka Revue since 1997.


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