東京都知事選挙の結果はわれわれに何を教えるか

昨日投開票が行われた東京都知事選挙は、現職の小池百合子候補が3回目の当選を果たしました。次点は前安芸高田市長の石丸伸二候補、第3位は前参議院議員の蓮舫候補でした。

また、今回の東京都知事選挙の投票率は60.62%で、2012年12月16日の都知事選の62.60%以来12年ぶりに60%台に達しました。

これまでの実績を強調し、課題への解決の意欲を示すことが出来る現職が優位にある首長選挙において、小池氏が三選したことは当然の結果であると言えるでしょう。

一方、2位と3位については事前の予想を覆すものとなりました。

すなわち、石丸氏は意外な大健闘、蓮舫氏は意外な大惨敗ということになります。

今回の東京都知事選挙の結果が蓮舫氏にとって悩ましいのは、参議院議員として東京都選挙区を地盤とし、民主党政権時代の国務相、民主党の後身である民進党代表など、中央政界での実績も十分であったにもかかわらず石丸氏の後塵を拝したことです。

蓮舫氏は都知事選に際して参議院議員時代に所属していた立憲民主党を離れ、選挙中も党の推薦を得ず、幅広い層からの支持の獲得を目指しました。

ただ、実際には立憲民主党や共産党、社民党が前面に立って支援しており、こうした選挙活動が中道から保守の票の取りこぼしに繋がったことが推察されます。

現在の国政では自民党や日本維新の会などの保守的な傾向を持つ政党と共産党や社民党のような革新勢力の間にあって、本来は中道である公明党が中道右派となり、立憲民主党は中道左派的な傾向を強めています。

そのため、立憲民主党はほとんど空白となっている中道勢力を代表することで党勢を拡張し得るものの、現時点では共産党や社民党との連携を重視しています。

それだけに、今年に入って各種選挙で比較的良好な成績を残してきた立憲民主党にとって、総選挙に向けた戦略と現在の執行部のあり方を見直さざるを得なくなるでしょう。

一方、石丸伸ニ氏にとっては、選挙前まで有権者の多くにとって知らない人物であったにもかかわらず、政治家としての知名度や実績で勝る蓮舫氏をしのいだことで、その存在感を高めることに成功しました。

NHKの出口調査の結果によれば[1]、石丸氏は無党派層の30％程度から支持を得たほか、自民党支持層の10%台後半の支持を得ました。

自民党支持層の60%台半ばを固め、その他の層からもまんべんなく支持を集めた小池氏との差は主たる支持基盤の有無にあったものの、立憲民主党や共産党、あるいは社民党の支持層を完全にまとめきれなかった蓮舫氏の受け皿となったことが、告示時点での知名度やこれまでの政治家としての実績が皆無であった中で次点となった要因の一つでしょう。

それとともに、これまでの実績のなさを補うために「何かを行いそう」と有権者の期待を高める戦略で選挙戦を行ったものの、今後は同様の方法を取るのは難しくなるだけに石丸氏が次に何らかの選挙に立候補する際は、新たな手法が求められるところです。

ただし、蓮舫氏と石丸氏との順位を逆転させた要因の一つにSNSの活用法の違いがあったことが推察されるだけに、既存の有力政党は今後の選挙活動の根本的な見直しを迫られることに変わりはありません。

振り返れば、1991年の都知事選挙で現職の鈴木俊一氏の四選を巡り、自民党執行部と東京都連の確執が表面化し、鈴木氏の当選を阻もうとして失敗した小沢一郎幹事長の権威の低下を招きましたし、都議会議員選挙では1993年に日本新党、2017年に都民ファーストの会と同党を起点とする希望の党というように、国政に少なからぬ影響を与えてきました。

従って、依然として指摘される小池氏の国政への復帰を含め、来るべき総選挙や来夏の参院選を考える上でも、今回の都知事選挙の結果は我々に大きな教訓を残したと言えるでしょう。

[1]都知事選 現職の小池氏が3回目の当選 石丸氏 蓮舫氏らを抑える. NHK NEWS WEB,2024年7月8日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240707/k10014502181000.html (2024年7月8日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Result of the Election for Tokyo Governor 2024? (Yusuke Suzumura)

The Election for Tokyo Governor was held on 7th July 2024 and Candidate Yuriko Koike was elected. On this occasion, we examine the meaning of this result for the future elections.