「ゼレンスキー大統領の国会演説」は日本にとっていかなる意味を持つか

昨日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説しました。外国の要人がオンライン形式で国会での演説を行うのは日本の国会史上初のことです。

演説の中でゼレンスキー大統領は日本が米欧と協調してロシアへの経済制裁を行ったことに謝意を示すとともに、チェルノブイリ原子力発電所への攻撃やサリンなどの化学兵器の利用を用意している点などを挙げてロシアを批判しました。さらに、今回の紛争に際して国際機関が有効な対応を出来なかったことを踏まえ、新しい国際組織の設置を含む取り組みを行うとともに、さらなる経済制裁を求めるなど、日本の果たす役割への期待の大きさが示されました[1]。

今回の演説については、「日本側が事前に懸念していたような内容はなかった、全ては杞憂だった」といった見方もあるでしょう。

しかし、実際には日本側の「懸念」を受けて、国内の情報の収集と分析の任にあたる在日ウクライナ大使館が本国に適切な対応を具申していたと考えることも出来ます。

真相はいずれ明らかになるであろうものの、日本側にとって受け入れやすい内容の演説であったことに違いはなく、その点でも ゼレンスキー大統領は限られた機会を最大限活用したと言えるでしょう。

また、「日本国民への呼びかけ」を最後に置いた点に、今回の演説の劇的効果の高さが改めて感じられます。

何より、日本語への同時通訳が円滑になされたことも、演説を聞き手によりよく伝えるために不可欠でした。

国内外が注目する演説の同時通訳を務めた在日ウクライナ大使館の通訳者の努力は、実に大きなものです。

昨日の演説は、形式の点でも内容においても、日本の憲政史に残る出来事となりました。

それだけに、ゼレンスキー大統領の演説を受けてどのような態度を取るかは日本政府が自ら判断し、自ら決定することですから、今後の当局の動向が注目されます。

[1]ゼレンスキー大統領演説. 日本経済新聞, 2022年3月24日朝刊4面.

<Executive Summary>

What Is a Meaning of Ukrainian President Volodymyr Zelenskyy's Speech at the Japan's Both Diets? (Yusuke Suzumura)

Ukrainian President Volodymyr Zelenskyy made the speech at the Japan's Both Diets via online on 23rd March 2022. In this occasion we examine a meaning the speech for the Japanese Government.

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