支持率低下に直面する岸田文雄首相に勧める「菅流」からの脱却
各種世論調査での支持率の低下に直面する岸田文雄内閣がどのような方法で苦境を脱すべきかという点については、一昨日の本欄で指摘した通りです[1]。
すなわち、海部俊樹内閣のように政治改革を標榜し、そのためにあらゆる努力を惜しまない方法が岸田文雄首相にとって重要な方策となります。
ところで、岸田内閣に対する世論の批判の背景となる事柄の一つとして挙げられるのが、安倍晋三元首相の国葬の問題です。
安倍氏は在職中から反対派から政治手法が強引であるといった理由で批判を受け続けてきたものの、逝去後に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係の深さが明らかになり、世論の強硬な反発を受けることになりました。
こうした状況に対し、岸田首相は国葬を行うことは適切な判断であると主張し、国民に対して丁寧な説明を行うとしたものの、9月8日(木)の衆参両院の閉会中審査においても同様の意見を繰り返し述べ、人々の支持を失う結果となりました。
もちろん、あらゆる判断には賛否が伴うものであり、一切反対の声の上がらない政策を実行することは理想ではあっても現実的ではありません。
その意味で、安倍氏の国葬について様々な意見が示されることは不思議ではありません。
問題なのは、こうした状況に対し、岸田首相が「丁寧に説明する」とは言うものの、国民に対する説明だけでなく、国会においていさえ反対派の理解を得るための努力を行っているようには思われないという点です。
「丁寧に説明する」と繰り返しながら実のある説明を行わなかったことで国民の支持を失い、退陣を余儀なくされたのは、菅義偉前首相です。
菅氏の例を参考とした岸田首相は、演説や記者会見では努めて快活で明快な発言を行うようにし、それによって清新さや若々しさを演出することで支持を得てきました。
しかし、安倍氏の国葬問題では菅氏の時代に戻ったかのように発言の内容が明瞭さを失い、かえって人心の離反を招いています。
従って、岸田首相は政策の面では「海部流」の政治改革を標榜して目的の達成のために邁進するとともに、国民との対話の点では「菅流」への回帰を避け、あくまで明快な説明を行い続けことが不可欠なるでしょう。
[1]鈴村裕輔, 支持率低下に直面する岸田文雄首相に勧める「海部流」の政権運営. 2022年9月19日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/1f773a7562673ac62b20223e36053b04?frame_id=435622 (2022年9月21日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 「安倍元首相の国葬を巡る閉会中審査」はいかなる意味を持つか. 2022年9月9日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/e055bc8cccd869d7b98a0ed72bbaf8bc?frame_id=435622 (2022年9月21日閲覧).
<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Prime Minister Fumio Kishida to Overcome a Decline in Public Approval Ratings? (Yusuke Suzumura)
A public approval ratings for the Fumio Kishida Cabinet is declining after occurrence of the "Unification Church Issue". On this occasion we examine a way for Prime Minister Kishida to overcome this situation based on distrust in politics.
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