「ロシアのウクライナ侵攻」をわれわれはどのように考えるべきか

昨日、ロシア軍がウクライナへの侵攻を開始しました。

大国であるロシアが主権国家たるウクライナに全面的な戦争を仕掛けたという意味において、「まれにみる大国の暴挙」であり、「国際社会は第2次世界大戦後、最も深刻な危機に直面している」と言えるでしょう[1]。

今後、各国がロシアに対してどのような対応を取るのか、ロシアがどの時点で妥協するか、あるいはどのような新たな展開が生じるかは予断を許しません。

ところで、後に第一次世界大戦と呼ばれることになる、オーストリア・ハンガリー帝国のセルビア王国への宣戦布告に始まる戦争が1914年7月28日に起きた際、日本国内では欧州で行われる限定的な紛争と理解されていました。

すなわち、同年6月28日のフランツ・フェルディナント大公の暗殺事件に関し、セルビアがオーストリア・ハンガリーの要求に不十分な回答しか示さなかったことを考えれば当然のことであって開戦は驚くには値せず、両国の対立に関係のない英仏伊露の4強国が事態の打開に向けて協議し、当分は意見がまとまらないとしても最終的には深刻な事態には至らない、といった考えが持たれていました[2]。

もとより、日本にとってウクライナは地理的に遠いだけでなく貿易の取引高も大きくないため、今回の問題は欧州に比べれば切迫感を伴って感じられてはいないというのが実情と言えるでしょう。

しかし、「大事に至らず」と思われていたオーストリア・ハンガリーとセルビアの紛争に「日英同盟の誼」として参加し、欧州の戦線に艦船を派遣したことは、第一次世界大戦が日本にとって当初の予想と実際の結果が異なっていたことを示します。

第一次世界大戦当時と現在とでは国際情勢や日本の国際的な立場は異なります。そのため、一方の事例をただちに他方に応用することは出来ません。

それでも、過去に学び今後の進路の手掛かりを見出そうとするのであれば、当局者だけでなく、われわれもロシアとウクライナの紛争を自分たちに無関係な出来事と思わず、事態の推移に十分な注意を払わねばならないのです。

[1]秋田浩之, ロシアの蛮行 毅然と対応を. 日本経済新聞, 2022年2月25日朝刊1面.

[2]宣戦布告は当然 結局大事とならじ. 東京朝日新聞, 1914年7月30日2面.

<Executive Summary>

What Is a Meaning of Russia's Invasion of Ukraine for Japan? (Yusuke Suzumura)

Yesterday Russia starts to invade Ukraine and attack many areas of the state. In this occasion we have to pay our attention carefully to the situation.

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