コミュニティカンファレンス

【1万字超え】「コミュニティ」✕「テクノロジー」トークイベント議事録 「コミュニティテックカンファレンス#3 ~感謝がめぐるコミュニティのおかね~by KOU」クルミドコーヒー影山さん講演

「コミュニティテックカンファレンス#3 ~感謝がめぐるコミュニティのおかね~by KOU」のまとめ

コミュニティテックカンファレンス第3回は、クルミドコーヒーの影山知明さんをゲストに迎え、「感謝がめぐるコミュニティのおかね」をテーマに熱い議論が交わされました!

コミュニティテックカンファレンスは、2019年を「コミュテック元年」と位置づけ、「コミュニティxテクノロジー」をテーマに全4回にわたり開催されるイベントです。

今回は、株式会社ツクルバ/kouの中村真広さんがファシリテーターとなり、議論が進んでいきました。
まず影山さんのお話があり、そのあと中村さんや会場の参加者との質問や議論の時間がありました。

議論をできるだけまとめたのでご覧ください。

画像1

クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店 店主
影山 知明
大学卒業後、経営コンサルティング会社、投資ファンドを経て、2008年、生家建て替えに際して、こどもたちのためのカフェ『クルミドコーヒー』を開業。2017年には、『胡桃堂喫茶店』をオープンさせた。出版業や書店業、哲学カフェ、田んぼづくりなどにも取り組み、設計図や事業計画をもたない「植物が育つような、いのちの形をした店づくり」を実践する。 地域通貨ぶんじ中心メンバーの一人。 著書に、『ゆっくり、いそげ』(大和書房、2015)、『続・ゆっくり、いそげ』(クルミド出版、2018)。

画像2

株式会社ツクルバ / KOU
中村 真広

1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年、実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する、場の発明カンパニー「株式会社ツクルバ」を共同創業。デザイン・ビジネス・テクノロジーを掛け合わせた場のデザインを行っている。著書に「場のデザインを仕事にする」(学芸出版社/2017)他。

影山さんのお話
(以下、お話:影山さん)
※文章におこす際、一部省略したり、表現を変えているところがあります。

・住環境を拠点にどうコミュニティを作っていくか

僕のライフワークが2つありまして、それはコミュニティとお金なんです。
なので今回は呼んでいただいて本当にうれしいです(笑)

僕は今、東京の国分寺で「クルミドコーヒー」というカフェの運営を行っています。
これまでにコミュニティとお金というテーマにいろいろ関わってきました。

「コミュニティは、最近1周回って、注目され始めているのかな」という気がしています。
コミュニティの話でいうと、コレクティブハウジングという考え方があります。

シェアハウスという言葉はだいぶ市民権を得たかなと思いますが、
シェアハウスの中でもコレクティブハウジングとは、
お互いのプライベートを尊重し合いながら暮らしを作っていく、そんな住形態です。

コレクティブハウジング社というNPOがありまして、私もその活動に関わってきました。
今、シェアハウスというと、どちらかというと、若い単身世帯の方が中心だと思いますが、
コレクティブハウジングの場合はファミリー層や年配の層も、一定の距離感を作りながら
暮らしていけるので、歴史的にずっと広まっています。

こうした住環境を拠点にどうコミュニティを作っていくか、これは1つ大きなテーマです。

--------------------------------------------------------------------------

コレクティブハウジング:北欧発祥の住まい方。
1970年代にスウェーデン・デンマークで生まれ、
現在では、北米などを中心に世界中に広まっている暮らし方。
http://www.chc.or.jp/collective/whats.html

--------------------------------------------------------------------------

・地域通貨「ぶんじ」で感謝の気持ちを伝える

あとは、お金とコミュニティの掛け算の話だと、「ミュージックセキュリティーズ」という会社の「セキュリテ」というクラウドファンディングのプラットフォームがあります。

過去の活動としては、東日本大震災の後に、「被災地応援ファンド」というものを立ち上げ、1口1万円から被災地の事業者さんを支援できるような試みをやったりして、お金とコミュニティを掛け合わせる活動をしてきました。

このように、私もお金とコミュニティというテーマをいろいろな観点から考え、実践し、気づきを深めてきました。

10年前にクルミドコーヒーをやるようになり、地域との縁も少しずつ広がっていきました。

そんな中で、国分寺では、2012年から地域通貨の「ぶんじ」というものを導入しています。
今日はこの「ぶんじ」の話をメインにお話していきます。
詳しくは後ほどご説明しますが、ぶんじは名刺サイズの紙で、裏面にメッセージが書けるようになっています。

まず、この「ぶんじ」をどのように手に入れられるか?というと、

「汗をかいてくれる」と手に入れられます。

どういうことかというと、例えば毎月1回、国分寺でごみ拾いする活動をしています。

3月で記念すべき第100回というところまで来ています。なので100人でごみ拾いをしようと考えています。

こうしてごみ拾いに参加してくれると、ありがとう、ということで「100ぶんじ」がもらえます。

また、国分寺は新宿から電車で30分ほどの場所ですが、畑が多く、農業をやっている方が多いです。
そんな農家さんを応援しようと、畑の草むしりや収穫のお手伝いも行われています。
これに参加することでも「100ぶんじ」がもらえます。

・「ぶんじ」を渡すとき裏面にメッセージを書く

こうしてもらった「ぶんじ」をどこで使えるかというと、
1つは国分寺を中心とした40ヶ所のお店で使えます。
クルミドコーヒーでも使えます。

「ぶんじ」は1枚は、「100ぶんじ」という単位になってて、
例えば、クルミドコーヒーでのお代が1000円のとき、「100ぶんじ」と900円で支払えます。
僕らのお店では利用制限がないので、10枚「ぶんじ」をお持ちの方がいれば、
「ぶんじ」だけで支払っていただくこともできます。

ほかにもパン屋さん、ラーメン屋さん、整体サロン、ゴルフの打ちっぱなしなど、
いろいろなお店で「ぶんじ」を使えます。

2つ目の使い方は、個人間で感謝を伝える際に「ぶんじ」を渡すこともできます。
わざわざ菓子折りを持っていくほどではないけど、感謝の気持ちを伝えたいときに
「ぶんじ」を渡したりします。

「ぶんじ」の使い方で1つだけルールがあります。それは渡すとき、裏側にメッセージを書くことなんですね。裏側に吹き出しが10個近くあるんです。

「コーヒーおいしかったです。」
「自転車貸してくれてありがとう。」
など感謝の気持ちを表現します。

現在クルミドコーヒーの2店舗で集まる「ぶんじ」は月間50枚くらいになっています。
この集まった「ぶんじ」をどう使うかというと、地域の中で農家さんへ「ぶんじ」で仕入れ代金の一部を支払ったりしています。
農家さんは手に入れた「ぶんじ」を援農ボランティアの方にお礼として支払います。
そしてボランティアをした人はまたその「ぶんじ」をお店に来て使ったりします。

・1日30回は国分寺のどこかで「ぶんじ」が使われている。

このような活動を6年間やってきた中で、これまでに発行した「ぶんじ」の枚数が15,000枚くらいになっています。
金額として換算するのがいいのかは別として、1枚100円として、単純計算では約150万円分になります。

さらに1枚の「ぶんじ」の裏面に5回メッセージが書かれているとすると、
5回✕15,000枚で75,000回の感謝の気持ちを伝えるやり取りが
6年間で行われているということになります。

この回数を割り算してみたところ、1日あたり30回になります。ということは、1日に30回くらい、街の中で誰かが誰かを思っての仕事が行われている、ということになります。

これを多いと見るか、小さいとみるかで言うと、ちっぽけな、たかが知れてる数字とも思われるかもしれませんが、
国分寺という小さな街の中で、毎日こうした誰かが誰かを思っての活動が行われ、それに対して感謝の気持ちが表明されているという毎日行われていることの積み重ねは、意外にバカに出来ないな~、と最近は感じています。

「ぶんじ」の裏面を見ていて面白いのは、誰がメッセージを書いたかはわかりませんが、
筆跡やコメントからなんとなく誰が書いたのかわかることです。

さらに、裏面が埋まると、新しい「ぶんじ」と交換できますが、意外とみんな、裏面がメッセージで埋まった「ぶんじ」を手放さない(笑)

国分寺の一部では裏面がメッセージで埋まった「ぶんじ」を「コンプリートぶんじ」
と呼んでいます(笑)

・新たな試み① 金本位制ではなく、米本位制


こうやってやってきた「ぶんじ」ですが、新しい取り組みをご紹介します。

その前に、まず厳密に言うと、「ぶんじ」は資金決済法上の通貨にはあたらない、メッセージカードとしての位置づけです。しかし今日この場ではわかりやすく地域通貨と呼ばせていただきます。

通貨はそもそも昔はバックアップがあるものでした。金本位制では金(ゴールド)がそのバックアップでした。
「通貨をもっていれば、困ったとき、最後は金(ゴールド)に変えられるよ」という仕組みで通貨としての価値を信任していました。

今はそうではないので、通貨が紙切れになってしまう可能性もありますね。

「ぶんじ」では金本位制ではなく、米本位制をやろうとしています(笑)
というのは「ぶんじ」だけで生活できる世界を作り出せないかな、という気持ちがあります。

事務局に米1合を持っていくと、「100ぶんじ」もらえるシステムがあります(笑)
そうやって手持ちの米が余っている場合、米を差し出すことで「ぶんじ」がもらえます。
反対のことも可能で、「ぶんじ」を持っていけば、米と交換もできます。
この仕組みで、とりあえず主食はなんとかなる、という状況ができます(笑)

・新たな試み② 「ぶんじ食堂




ほかに新しい試みとしては「ぶんじ食堂」があります。これは「ぶんじ」だけでご飯が食べられる食堂です。

きっかけとしては、街の中でみんなでご飯を作って、みんなで食べられる場所があれば楽しいよね、というところから始まってます。

「ぶんじ食堂」は街のいろいろな場所で開催されていて、クルミドコーヒーでは私がシェフとして料理しています。
配信されているところで言うことでもないんですが、私、飲食業をやりながら本当に料理ができなくて(笑)
なのでメニューは欲張らない、カレーのみ(笑)

「ぶんじ食堂」の特徴は持ち寄り制です。
各自が食材を持ちよることでやっています。

9ヶ月間で20回くらい開催されていています。
今は街の4~5ヶ所で開催されていていますが、さらに開催場所が増えれば
毎日どこかで「ぶんじ食堂」が開かれるようなことにもなると思います。

「ぶんじ食堂」は1回「300ぶんじ」でやっています。
それが成り立つ秘密は、「100ぶんじ」が場所代、
「100ぶんじ」がお米代、
残りの「100ぶんじ」が作ってくれる人へのお礼となっています。

こうしていい面を取り上げてお話すると、とてもうまくいっているように見える「ぶんじ」の仕組みですが
現実にはいろいろな苦労があり、浮き沈みがあった6年間でした。

これまでに800くらいの地域通貨が作られてきたそうです。
日本で最初の火付け役となったのがNHKで「エンデの遺言~根源からお金を問う~」というドキュメンタリーが放送されたことです。

--------------------------------------------------------------------------

『エンデの遺言 ~根源からお金を問う~』
1999年にNHKのBS1で放送されたドキュメンタリー番組。
ドイツの作家、ミヒャエル・エンデが死の直前に、現代の貨幣システムをテーマに
2時間に及ぶNHKのインタビューで語った内容をもとにしている。

「エンデの遺言」のYouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=Hh3vfMXAPJQ
「エンデの遺言」の書き起こし
http://www.asyura2.com/09/idletalk37/msg/118.html

--------------------------------------------------------------------------

これを私もリアルタイムで見ていて、衝撃を受けました。
その後、地域通貨のブームが起こり、2次ブーム、3次ブームが起こりました。
しかし残念ながらそのときにできた地域通貨のほとんどは今は続いていません。

僕も地域通貨に興味があったので、そうした事例を参考にして良いところを取り入れつつ
悪い点を改善しながらやってきました。

影山さんと中村さんのトークセッション
・面倒くさいメッセージのやりとりが大事

中村さん「ありがとうございます。いくつか質問や疑問があったのでぶつけてみたいと思います。」

「農作業を手伝ったときにお礼として100ぶんじを渡すというお話がありましたが、お礼は100ぶんじと決まっているのですか?例えば300ぶんじあげちゃう、とかもあるんですか?」

影山さん「そうですね、そのへんの通貨単位みたいなところは、はっきりとは決まっておらず、曖昧にしています。最初は1時間汗を流したら100ぶんじとしていたんですが、それだと時給100円てこと?のようにすごい安働きをしているような気分になり、モヤモヤするということにもなるんです。なので今は、1回の仕事当たり、1枚というようになっています。ただ明らかに大変な仕事をしてもらったときはさらに渡したりします。」

中村さん「それってトライ・アンド・エラーの中で、運営の方々の協議の上でそうなったんですか?」

影山さん「そうですね、企画会議でそういう話題が出てきて、今申し上げたようなアバウトさに落ち着いてきました。」

中村さん「私もコミュニティを作ったとき、相場をどうするのか考えたり、他のコミュニティをやっている方からもよく質問をもらうのですが、『そのへんは自分たちで考えて』としか言えないんですよね。ぶんじの場合はどう作られたのかなあと思いまして質問しました。」

影山さん「そこを考えるための交通整理でいうと、『ぶんじ』や『kou』だったり、いくつかの通貨のパターンがある中で、『ぶんじ』の特徴は、ある部分において日本円と接続している、という点だと思うんですね。つまりお互いを助け合ったりして感謝を示すだけでなく、お店で100円相当としても使えるということです。こういう使い方をする良し悪しはあると思うんです。つまり、『100ぶんじは100円の価値かよ』という比較感からは逃れられない、ということはあります。
けれども、お店で使うということがなければ、『100ぶんじ』の100の単位すらなくてもいいと思います。」

中村さん「なるほど、メッセージカードを~枚もらったという意味合いになりますね。」
    
「他にも伺いたいのが、米本位制って非常にキャッチャーだなと思うんですが、ぶんじを実際にお米に換えた人っているんですか?」

影山さん「今のところ、いないです(笑)」

「まだ始まったばかりで、認知されていないのと、実際にはお米を1合単位で交換に来る人はなかなかいないかなと思うんですが、街の中でパーティーなどをするときに、そのためのお米を交換に来ることはあるんじゃないかと思います。」

中村さん「お米だけじゃなくて、他にも不用品トレード所みたいになると面白そうですね。」

影山さん「それはほんとにやりたいと思っていて、いわゆるフリーマーケットのようなこともやりたいねと話をしています。」

中村さん「可能性が広がりますね。」

「あともう一つ、これは質問ではないんですが、ぶんじ食堂に関連した話では、僕も『発明酒場』というのをやっていて。。」

影山さん「中村さん料理うまそうですね。」

中村さん「いやいや、カレーとパエリアくらいしか作れなくて(笑)」

影山さん「2番目にパエリアが出てくる時点ですごい(笑)」    

中村さん「でもそういう持ち寄りでやったりする場を作るのは単純に楽しいし、そこから何か関係性ができてくるといいですよね。それを街ぐるみでやっているのはいいですね。」

中村さん「では、ここからは会場の皆さんを巻き込みながら進めていきたいと思います。」

会場の人「ぶんじを使っているのはどのくらいの人数で、またどういう人が使っているんでしょうか?
またメッセージを書くことは面倒くさいときもあると思うんですが、使っている人のメンタリティーはどんな感じでしょうか?」

影山さん「人数はだいたい430人くらい参加してくれていると思います。
メンタリティーでいうと、ドライな人もいると思います。こういうこと言うとまた誤解を生むんですが、僕も国分寺を別に愛してなくて(笑)国分寺は生まれ育った場所なんですが、自治体としては何の関心もないんです。
でもお店をやっているんで、その関係の中での『街』というものには非常に愛着を持っています。
だから無条件に何でもします、という人より今言ったような気持ちの人が多いのではないかと思います。
メッセージを書くのが面倒くさいのではということについては、10枚使ったときに10枚全てにメッセージを書く必要はないです。しかしそれでも面倒くさい、というのはあると思います。でもその面倒くささが大事だと思っています。メッセージを書くことで、『自分が何を受け取ったのかを改めて考える機会になる。』と思っています。コーヒーを淹れてくれた人がいるんだ。だからこの時間を過ごせる、ということを想像できると思います。話は逸れるんですが、今は電子マネーになったり、バーチャルになっていて『僕らのこの世界のすべてが誰かしらの仕事で出来上がっているという実感を失っているんじゃないかと思うんです。』そんなとき、一呼吸を入れる、その役割があると思うんです。」

・「誰の仕事を受け取りたいか」と考えると、ひょっとしたら入るお店が変わるのかもしれません。

中村さん「関連するワードでいうと、『ギブからはじめる』というワードがあると思うんですが、そのへんはいかがですか?」

影山さん「そうですね、『ゆっくり、いそげ』(著書)で、『ギブからはじめる』ということを書かせてもらいました。『ギブからはじめる』と聞くと、何か能動的にする行為ををイメージすると思いますが、本当は、『ギブされていることに感謝を表明するということの大切さ』を伝えたかったのです。つまり『贈ることより、受けることから始めませんか?』ということです。いきなり何かギブしようと思うと、途端に何をしたらいいかわからなくなると思います。しかし自分はいろいろな人の仕事を受け取っていることで今の自分があるんだということを想像したときに、仕事を送ってくださった方に感謝の気持ちを表明していく。そういう受けることが上手な人が増えると、贈る側も張り合いが出るしいろいろ受けているうちに、受け取ってばかりじゃいけない気がしてくるという『健全な負債感』に繋がり、それが結果的にギブに繋がってくると思うんです。」

中村さん「実は僕が『感謝経済』という言葉を使っているのは、受け手側の感受性が重要なんじゃないかと思うんですね。去年、屋久島に行ってきて、圧倒的な自然の中で人間がアウェーだと思って、そういうところにいると自然と、自然のありがたさに気づけるんですね。そのとき思ったのは感謝っていうのは自分から出せるんですね。
そういう感謝のエネルギー量は屋久島にいた方があると思うんですね。なんかそういう受け手の感受性から始まるストーリーに注目してみたい、そんな思いです。」

影山さん「最後のセリフが突然CMっぽくなりましたね(笑)でもほんとそうだと思う。都会にいると、自然と触れる機械が少ないからだけじゃなくて、センサーをシャットアウトしてしまうんですよね。満員電車とか渋谷のセンター街とかにいるときとかセンサーをシャットアウトしないとやっていけないですよね(笑)だから世界がそこにリアルにあるっていう実感を感じにくいんですよね。」

中村さん「本の中で『特定多数』という言葉を使っていらっしゃったり、このへんのワードを含めていかがでしょうか。」

影山さん「クルミドコーヒーではコーヒー1杯650円で、100m先のドトールコーヒーでは1杯220円で飲めるじゃないですか、十分美味しいよね(笑)さらにコンビニでは100円で飲めるんですよね。では何でクルミドコーヒーに来てくれるか?」

「それは、まず一定の数の人が650円払っても飲んでいいと思ってくれているんですね、単位でいうと数千人くらいいると思います。1万人でも、数百人でもない、それが特定多数です。ではその人たちは、国産コーヒーだからとか、ダブル焙煎だから、低温殺菌牛乳だから、とかそういうストーリーに対して払う人もいると思うんですが、それは少数派だと思います。それは左脳的な理解なんです。それよりも、入り口としては楽しいとか、うれしいとかのポジティブな感情がコーヒーを飲みに来てくれることに繋がっていると思うんです。だから左脳的というよりも右脳的な理解ですね。
それで繰り返し、繰り返し来ていてくれるうちに、これが丁寧な仕事からできてるんだなと、右脳から入って左脳的な理解に繋がっていくのだと思います。」

中村さん「さっきの『コンプリートぶんじ』もそういう右脳的理解ですよね。
大人になると、合理的な理解になりがちじゃないですか、でもうれしいとかの楽しさを追求していくと可能性が広がる気がしますね。それではまた会場の方でほかに質問はありますか?」

会場の人「特定多数というワードに関連して、クルミドコーヒーさんのような形態で商売を地方でやる場合、どうしたらいいのでしょうか?影山さんは『特定多数』の人の集まりを作ることで経営されてますが、地方は国分寺のように人数がいないため、特定少数になってしまいます。」

影山さん「この前も、滋賀県米原市で新しくチャレンジをしようとしている方ととやり取りをしていて、同じような話題が出たんですね。
米原市は有名な市ですが、実は3万8千人ほどしかじんこうがいないんです。そうすると、
現実的なところで言うと、まず、東京でやったときのような売上げをあげるのは無理だと思うんです。
なので、代わりに仕入れなどの出ていく方のお金を抑えていくということが大事だと思います。 
次に、(質問者の方が)経済圏という言葉を出してくださったように、その地域の人へお金が流れるようにしていくことです。
以前、どこにお金を使っているかということを出してみたら、意外と地域にお金が落ちていないという面があるんです。だからお金をどこに使うかが大事だと思います。」

中村さん「お金の使い方はその人のセンスや価値観が出ますよね。消費活動的に使うのか、その先の関係性を作るために使うのかによって質が全然違いますよね。」

影山さん「今はグローバル資本主義の中で、通貨が統一されていますが、昔はいろいろな地域でいろいろな通貨が使われていたんですよね。今のお金の定義をみんなに聞くと、『ほしいものを手に入れるための道具』って答え方をする人が多いんですよね。これはテイクするためにお金を使うということが当たり前に行われています。 
しかしお金をギブするものと定義すると、お金は『人の仕事を受け取るための道具』といえると思います。
なのでみなさんが今日の帰り道にお腹が空いて何かを食べたいときに、一瞬だけでも考えてみて下さい。
何を食べたいかというのも大事なのですが、「誰の仕事を受け取りたいか」と考えると、ひょっとしたら入るお店が変わるのかもしれません。と言いながら、私が帰り道にすき家に入っていたら、言っていることとやっていることが違うじゃないかとなるとは思いますが(笑)」

中村さん「それはすき家を応援したいということかもしれません(笑)」

影山さん「(笑)」

・コミュニティで1人に負担が集中すると崩壊する

中村さん「ここでslidoからの質問をご紹介したいと思います。」
質問者「長続きする地域通貨と続かずに消えていってしまう地域通貨の違いはなんですか?」

--------------------------------------------------------------------------

slido:スマホから質問などを主催者側へ送れるサービス。
今回はYouTubeライブ配信を見ている方からも質問を受付けていました。
https://www.sli.do/

--------------------------------------------------------------------------
     

高橋さん「よろづに関しては運営を年々、楽にするようにしています。ぶんじはどうですか?」

--------------------------------------------------------------------------

地域通貨「よろづ」
神奈川県相模原市藤野地区で普及している地域通貨。
今回はその運営にも携わる高橋さんも会場にいらしていました。
https://fujinoyorozuya.jimdo.com/

--------------------------------------------------------------------------

影山さん「ほんとそこは大事で、事務局や特定の誰かに負担が偏ると、その人の心が折れた瞬間に終わるんですよね。
これは地域通貨に限らない話ですが。なので『ぶんじ』でも20人くらいのコアメンバーでフォローしあいながら続けています。加えて、うまくいっていない地域通貨のよくある例は割引券になっているパターンです。
お店側とするとやはり現金のほうがありがたいということになり、だんだん使われなくなってしまう。
つまりお店とお客さんがテイクしあう関係になると、関係が続かなくなります。だからギブする関係にするのが大事だと思います。」

中村さん「お二人の取り組みやコミュニティコインなども含めてみると、同じ地域通貨という括りでも地域振興券などとはかなり設計思想が違うと思いました。」

影山さん「そうですね、そこを理解するにはやはり右脳的な理解が欠かせないです。メッセージのやり取りもそうですし、たまに宝くじみたいなゲームをするんです。そういうゲームにも使えたり、面白さがあります。」

中村さん「カードゲーム的にも使えるんですね。やっぱり今回、楽しさとか、右脳的な入り口にあるのはポイントな気がしました。」

会場の人「会社で外国人向けのコミュニティを作ろうと考えているんですが、コミュニティ自体、みんななかなか馴染みがないんですが、影山さんはどういった設計思想で今のコミュニティを作られたんでしょうか?」

影山さん「重要なポイントだと思います。実はコミュニティという言葉は私は最近使っていないんです。なぜならコミュニティという
言葉を使うと、どうしても一定の境界線を思い浮かべてしまうんです。そうではなくて、クルミドコーヒーでは『あなたと私の関係性の束』を作ろうとしています。
今、コミュニティという言葉を使いたくないもう1つの理由が『メリット・システム』として使われているからです。そうなると何か、得があるから参加する。ということになります。そういうコミュニティはもろいんです。なぜなら得がなければ人がいなくなってしまう。すると残った一部の献身的な方がなんとか回そうとして、その人の心が折れると崩壊してしまう。
そうではなくて、僕は「持ち寄り・システム」にしたいんです。自分の持っているものを持ち寄っていく仕組みです。そうすれば、自分に得にならなかったとしても、その場を育てるために大事だと思うことには汗を流せるようになります。」

中村さん「では最後に、質問ありますか?」

会場の方「会社員からフリーランスになってすごく解像度が上がったように思うんですね。感じる感覚、仕事の意味などが変わってきて、心の豊かさがは増したように思います。金銭的には別として。今日のお話は、どうやって私たちが豊かに幸せに生きていけるのか、というのがテーマのように感じたのですが、世界中で流通しているお金をより豊かになるための使い方のヒントはありますか?」

 影山さん「今の話を聞いて、余談的に思ったのは、お金って、『人との関係を省略する道具』だと思うんですよね。だからお金を持つほど、不幸になると思うんですよね。お金を持っていると人と関わる機械が減るんですよね。」

中村さん「kouでも試験的に使っているサービスで、限定されたコミュニティコインでしか支払いができないようにしているものがあります。例えばこの会場を借りるとき、3万円とすると、お金を払えば何でもしていいのか、という話になります。それを少し『ずらせる』と思うんですね。」

影山さん「とは言え、企業はやっぱり利益を優先せざるを得ない、力学を受けるのは資本主義の中で仕方ないんですよね。個人の方にお話を聞くと、ひとりひとりは人生は決してお金がすべてとは思っていないけれど、資本主義の中ではそれに合わせざる得ないんですよね。なので僕はどこかで資本主義のシステムをいかにアップデートできるかが大事と思います。それは通貨であったり、クルミドコーヒーでやっている活動で少しずつ実現していきたいと思います。」

中村さん「そういう意味でICOなど、少しずつ変化が起こっていますね。今日はありがとうございました。」


少しでもサポートいただけると、書き続けるモチベーションにもなります。よろしくお願いします。