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2023年に読んだ中での「イチオシのビジネス書」7冊

※12/25追記:なんと公開した翌日に「先週もっとも多く読まれた記事」に選ばれました。

Xでも好評をいただいてます。

では、本編をお楽しみください。


今年も豊作の年。
次から次へと、気になる本が出てくるもんで、今年も300冊以上のビジネス書を読みました。

  1. 300冊中100冊は、古めのベストセラー本です。一番古いやつだと『読書について』とか『生の短さについて』とか、お恥ずかしながら今さら読みました。

  2. 300冊中200冊は、最近出た本です。2022年8月以降に出版された本が、今年読んだ本の2/3を占めています。

1で述べた「古めのベストセラー本」は、すでにいろんな有識者が紹介しているので、割愛しておきます。私なんぞに聞くよりも『読書大全』を読んでみてください。選りすぐりの古典たちが、えっぐい切れ味の書評(あれは、相当な古典を読み込んで自分の言葉で全部語れるまで血肉化しないと書けないw)と共に紹介されてますので。

一方で、2で述べた「最近出た本」の中から、イチオシ本をご紹介する。
ここは、皆さんのニーズにお応えできるテーマかなと。
なんせ、書評サイト「ビズペラ」で書評記事を400本以上書いて、本の読み方の本『投資としての読書』まで出版していて、しかも最近出た本を200冊読んでいる。
それなりに信用いただいて差し支えないかと。

てことで、今回は「最近出た本(2022年の後半~2023年12月)」の中から、イチオシのビジネス書を7冊ご紹介いたします。


イチオシのビジネス書をどうやって選ぶか?

とはいえ、いきなり「独断と偏見で選びました。ドン」で紹介しても、説得力もクソもないですよね。
けっきょく独断と偏見に変わりはないんですが、選定にあたって次の2点くらいは整理しておきます。

  1. どのジャンルの本を選定するか?(ぜんぶ自己啓発本です!だと胃もたれするんで)

  2. どの基準で評価するか?

「さっさと7冊を教えてくれ」と思った方は、ここからの話はすっ飛ばしてもらって構いません。

ビジネス戦闘力を上げる「5つのジャンル」で選定しました

ビジネス書を何のために読むか?
それは、ビジネス戦闘力を高めるためです。
では、ビジネス戦闘力とは何か?

まず大別すると

  • スキルセット

  • マインドセット

この2つに分けられる。ここは、あまり異論ないでしょう。


スキルセットを分類している文献なり本はたくさんあります。
個人的に一番シンプルでわかりやすいと思うのは「カッツモデル」ですかね。アメリカの経済学者ロバート・L・カッツ氏が1950年代に提唱したといわれる、あれですね。
カッツ氏によると、マネジメントには「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つが必要だそうで。
ただ、横文字は苦手なのもあり、私は次のように理解するようにしています。

  • コンセプチュアルスキル→問題発見&解決力

  • ヒューマンスキル→人を動かす力

  • テクニカルスキル→知識運用力


次にマインドセットについて。
ここは「プロフェッショナル意識」とか「キャリア構築」とか「心身を健康に」など様々な概念を含みます。
これらをまとめて「自分をリードする力」とラベリングしておきます。

また、スキルとマインドに跨る話として「学ぶ力」も見逃せません。
マイケル・オズボーン教授が2030年に必要なスキル1位に掲げた「戦略的学習力」しかり、
OECDが「Future of Education and Skills2030プロジェクト」なるもので超大事!と言っていた「ラーニングコンパス」しかり。
「学ぶ力」を入れておかないと、世界中からバッシングをくらいそうです。入れておきましょう。

以上の話を整理してですね、「ビジネス戦闘力」を次の5つにまとめてみました。

  1. 自分をリードする力

  2. 問題発見&解決力

  3. 人を動かす力

  4. 知識運用力

  5. 学ぶ力

うん、キレイな逆三角形(自分で言ってしまった)。
この5ジャンルでイチオシの本を選定していきます。

「わかりやすさ×深さ」のモノサシで評価しました

当たり前ですが、ビジネス書は「わかりやすくて、深くてなんぼ」ですよね。

  • わかりにくくて浅い本は論外

  • わかりにくくて深い本は学術書

  • わかりやすくて浅い本は綿菓子

有象無象の中から「わかりやすくて深い本=栄養価の高い本」を引き当てるために、いつも血眼になって本屋を徘徊しております。

まず、わかりやすさを測るときは、以下の2点をチェックしています。

  • 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?・・・目次を読んでチェック

  • 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?・・・3ページくらい読んでみて、言い回しをチェック

次に、深さをチェックするときは、コンサルティングファームでの学びを応用して、本に対して「So what?」「Why so?」「How?」と突っ込みを入れるようにしています。

  • 他の本にない「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)

  • 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?理論やデータに支えられているか?(Why so?)

  • 明日からすぐ実践できるレベルで具体的に記されているか?(How?)

この「わかりやすさ×深さ」の基準でダントツで高評価の本を7冊選定いたしました。
もう一度おさらいしておくと、次の5部門で選定しました。

  1. 自分をリードする力

  2. 問題発見&解決力

  3. 人を動かす力

  4. 知識運用力

  5. 学ぶ力

①「自分をリードする力」部門

この分野、良書が多すぎて本当に困りました。
以下ツイートで「4~5冊程度ピックアップ」とか抜かしておいて、甲乙つけがたい本がいくつかあったんですよね。

優柔不断でごめんなさい。
でも、いい本をたくさん知れるぶんには問題ないですよね。
「自分をリードする力」部門、3冊ご紹介します。

『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』

選定対象とする本を「出版日が2022年8月~」としたのは、どうしてもこの本を紹介したかったからです。でも読んだのは本当に今年なんですよ。ギリ「最近の本」としてお許しいただければと。

さて、この本を手に取ったきっかけは、「この本、控え目にいってヤバい」というツイートを見かけたからです。
本書のタイトルの「ナヴァル・ラヴィカント」というキーワードを見てもピンと来ず、何のテーマの本なのかもよくわからない。
しかし、日本にやってくる前の原書は、Amazonで7200超のレビューがついて、星4,7という異例の評価がなされている・・・何やら只者ではない気配に惹かれ、本書を手に取ってみました。

実際に読んでみた感想は、マジでヤバい本でした。語彙力がなさすぎて申し訳ないのですが、文字通りヤバい本なのです。
個人投資家としてUberやTwitterに初期投資を行うなど、圧倒的な行動力と先見の明を兼ね備えた「ナヴァル・ラヴィカント」が語る、幸福の原理原則。
ジャンルとしては自己啓発書なのですが、巷にあふれる自己啓発書とは一線を画しています。
あえて名づけると「合理的な自己啓発書」といいますか。
ナヴァル氏の圧倒的な思考力や経験量に裏付けされた、「幸福の原理原則」がロジカルに解き明かされています

ナヴァル氏は、幸福を次のように定義しています。

幸福=よい人間関係+健康+富

本書はこの方程式を骨子として、目から鱗が落ちる原理原則を教えてくれます。
語り口はいずれもシンプルだけど奥が深い。実践し続けるのは容易ではないが、本書で提案されている行動をし続ければ、確実に幸福度を高めていくことができると確信できる。そんな一冊でした。

ちなみに、本書の学びを1枚で示すと次のとおりです。
この図はスマホのアルバムでお気に入りして、いつでも参照できるようにしています。

『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト』

2冊目がこちら。
この本は、間違って2回買ってしまうくらいイチオシの本です。

本書のタイトルに「99のスキル」と書かれていますが、スキルの説明の随所に「コンサルではこの水準が求められるんだぞ=プロフェッショナル意識とはこれだ」というメッセージが滲み出ております。

例えば、コンサル会社に入ると
「結論から話せ。まずは"結論から言うと"という枕詞を矯正ギプスとして使え」
「まず質問に答えろ。思いついた順に話すな。相手が聞きたい順に話せ」
「社員証をかけてランチに出かけるな。てか、昼は片手があく食べ物にして、机で仕事しろ。1時間で君にいくらのフィーが発生していると思っているんだ」
「パワポやExcelをいじっている時間は1円たりとも価値が出ていない。思考しろ、思考しろ、思考しろ」
「オープンクエスチョン禁止。必ず自分の仮説を持ってくること」
「新卒には一切期待していない。まあ1つ期待値を上回るとすれば、スピードくらいはせめて意識しなさいよ」
・・・みたいなやりとりが、冗談抜きで行われます。

こういったフィードバックを、タフな精神力で受け止め続け、自分の暗黙知として刻み込んで生き残った人たちが、コンサルとして自立していきます。

話がそれましたが、本書には99のスキルが詰まっています。しかも1つひとつがプラクティカルかつコミカルで、読み応え抜群。
これらのスキルをすべて、本書で書かれている水準で身につければ、どんなフィールドでも一目おかれるはずです。
それだけ「高い水準の仕事レベル=プロ水準」が本書には詰まっています。
ぜひ、自分を高みへとリードしていくためにも、高みの水準を覗いてみてください。

※余談ですが、本書に「議事録進化論」なるパートがございます。このパートが個人的ハイライトでして。この議事録進化論から着想を得まして「読書メモ進化論」を発見しました。これで読書が一変したので、本書には感謝しております。

※さらに余談ですが、著者の高松さんの本が気に入りすぎて、外部メディアに寄稿をさせていただいたこともあります。こちらの記事で紹介している本は2年以上前に出たものなので、今回の企画の対象外なのですが、よろしければ合わせてご覧ください。

※さらにさらに余談ですが、著者の高松さんと対談させてもらったので、Youtube動画も貼っておきます。

『ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー 食べログ、クックパッドを育てた男』

3冊目がこちら。
12月半ばあたりに、Amazonのランキングを覗くと、この本がランクインしていました。
しかも見間違えじゃなければ、発売日前後にAmazonのページを見ると「1か月後に発送」と出てたんですよね。(スクショ取っておけばよかった)
なので、往復1.5時間とか使って、丸の内丸善に買いに行ったところ、無事この本を購入できました。

本書は、価格.com、食べログ、クックパッドを育てた投資家であり経営者、穐田誉輝氏の半生を語った本です。
お恥ずかしながら穐田氏のことを本書で初めて知りましたが、界隈ではかなり有名な方だそうです。「あの堀江貴文がスマホを止めて敬語で話す…「IT企業の本質をわかっている」と評する先輩経営者の正体」とpresidentの記事タイトルにある通り、只者ではなさそうです。
期待に胸を膨らませて、本書を読んでみましたが、圧倒されっぱなしでした。

例えば、本書のタイトル「ユーザーファースト」。顧客第一とかクライアントファーストとか、数多の企業の理念やらバリューやらに書かれている文言。なので、「ユーザーファーストの意味は?」と聞いたら、ほとんどの人が答えられるはずです。

しかし、本書を読んでみると、多くの人が「ユーザーファースト」の意味合いを根底から覆されるはず。
いや、文字面では「ユーザーファースト」以外に表現しようがないんですけど、その程度というか度合いが、私たちの想像の遥か上を行っているんですよね。

穐田氏本人が実体験を通して「これが欲しい」「これがあると、絶対に客は助かる」と思うものだけをこだわりにこだわって作る。

  • 中学3年生のときにステレオを買いに秋葉原に通いつめ、価格や商品を調べまわった実体験から、価格.comを作りこむ。電化製品の価格調査はもはや趣味

  • 社長として会食つづきのときに、料理の味・個室の有無や広さなど店を選ぶのが大変極まりなかった…その実体験から、食べログを立ち上げる

など、「自分が一番のヘビーユーザー」というレベルで、サービスを考え抜く。
穐田氏の一挙手一投足に宿る、異常なまでの「ユーザーファースト」が、生々しい現場感と共に表現されている。
そんな、読み応えたっぷりの本でした。

②「問題発見&解決力」部門:『完全無欠の問題解決』

世界最高峰のコンサルティングファームであるマッキンゼー社で使用されてきた社内資料が書籍化したもの。それがこちらの本。4冊目ですね。

ちまたに出回っている問題解決本やロジカルシンキング本の著者経歴を見てみてください。有名な本のほとんどは、マッキンゼー出身の方による著書です。
企業参謀』『ロジカル・シンキング』『問題解決プロフェッショナル』なんかは、まさに私たち日本人にとって、問題解決本のバイブル。
そのマッキンゼーで「伝説の社内資料」と評されているのが、この『完全無欠の問題解決』という本。バイブルのバイブル。
もう買わない理由がない・・・そんな期待感を持って読んでみましたが、期待を上回る本でした。

まず、世に出回っている問題解決本のエッセンスがギュッと無駄なく凝縮されています。
しかも、出てくる具体例の解像度の高さには驚愕させられます。「え、こんなに生々しい企業データ、使っちゃっていいの?」と思うくらいリアルな情報も出てきます。

そんな本書の目次は次のとおり。

  1. 「完全無欠の問題解決」をマスターする

  2. 問題を定義する

  3. 問題を分解し、優先順位を付ける

  4. 作業計画を立てる

  5. 「経験則」で問題をざっと分析する

  6. 「奥の手」で問題を深く分析する

  7. 結果をまとめ、ストーリーで伝える

  8. 不確実性に対処する

  9. 「厄介な問題」を解決する

  10. 優れた問題解決者になる

なかでも、問題定義のためのフレームワークが有用すぎました。
私なりにとった読書メモがこちらです。

中でも、特に大事だと思ったのは、「問題の境界線/制約」の部分。

例えば、「当社の利益を最大化するために、どうすればいいか?」という問題定義だと、扱う範囲が無限大に広がってしまいます。
そうではなく「当社の利益の鍵である"在庫の回転率"をXX%上げるために、どうすればいいか?」のほうが、考える範囲もグッと絞ることができます。
しかし、考える範囲を絞りすぎると、ちっぽけな問題解決になりかねません。

考える範囲をどの程度にするか?このグレーゾーンを突き詰めるところが、問題定義の難所であり差がつくポイントなのかもしれない。

・・・と、問題定義のフレームワーク(の中の1つ)を読むだけでも、お腹パンパンで、消化しきれないほどの学びがありました。
ぜひ正月の胃もたれした身体に、とどめの一発として投下してみてください。

③「人を動かす力」部門:『「変化を嫌う人」を動かす』

  • 今の業務を変えたくないから、とりあえず抵抗する。

  • すごい合理的だし効果ありそうな提案だけど、変える労力のほうが気になりまくるから抵抗する。

  • 業務が自動化されると労力はゼロになるけど、自分らの仕事まで無くなりそうだから抵抗する。

  • Aさんがリーダーだと、なんか気に食わないから抵抗する。

・・・みたいな感じで、抵抗された人、抵抗してみた人、それぞれいらっしゃるんじゃないでしょうか?
私は、DX(デジタルトランスフォーメーション)とかを推進する機会が多いのもあって、こういう抵抗によく合います。
新しくシステムを導入しようとすると「操作方法を覚えるのが面倒くさい」と非難され。
じゃあ、面倒くさいのを取り除くべく、メール送信を自動化しようとすると「1人ひとり真心を込めて手作りでメールを書くのが大事だ」と非難され。
あとは、自分とまったく同じことを、別のBさんが話すと、すんなり納得してもらえたり。

もう何が何だかわからん・・・と思った方にオススメしたいのが、
本書『「変化を嫌う人」を動かす』です。やっと5冊目まで来ました。

本書は、世界的な経済新聞「ウォールストリート・ジャーナル」でベストセラーに選ばれた本です。
しかもこの本の帯にはなんと、マーケティングの権化of権化フィリップ・コトラー氏の推薦文が書いてありました。
コトラー氏が「新しいことを始めようとしているなら必ず読むべき本だ」と書いています。
なので、何らか新しいことを始める人は、読みましょう。
新しいことを一切やらない、旧態依然オブザイヤーな方は、そっと画面を閉じてください。

この本では、変革を推し進めようと意気込んでいる人を大いに助けてくれる考え方が語られています。
通常、何か提案を通したいときは「提案の魅力」を語りがちです。
しかし、それだけでは人は動きません。
ではどうするかというと…相手が受け入れたくない理由=「抵抗」に目を向ける必要がある。
そのことを、本書は教えてくれます。

本書によると、「抵抗」には次の4種類があります。

  • 惰性:慣れているものにどどまろうとする欲求

  • 労力:変化に必要な努力・コスト(価値より労力が気になる)

  • 感情:変化に対する否定的感情(アイデア自体への反応)

  • 心理的反発:変化させられることへの反発(アイデア推進者/方法への反応)

この4つの切り口を知っておくと、冒頭に述べたことも説明ができます。

  • 今の業務を変えたくないから、とりあえず抵抗する。←惰性

  • すごい合理的だし効果ありそうな提案だけど、変える労力のほうが気になりまくるから抵抗する。←労力

  • 業務が自動化されると労力はゼロになるけど、自分らの仕事まで無くなりそうだから抵抗する。←感情

  • Aさんがリーダーだと、なんか気に食わないから抵抗する。←心理的反発

この本を読むと、惰性・労力・感情・心理的反発それぞれの事例と対処法が隅々まで理解できます。
事例の話とか読んでいると、頷きが止まらなくなるはず。

読書メモも載せておきます。

④「知識運用力」部門:『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』

続いて6冊目をご紹介します。
「知識運用力」部門です。
この「知識運用力」とは、「実務で使える引き出しの蓄え」のこと。
経営戦略とか、マーケティングとか、会計ファイナンスとか、テクノロジーとか、組織人事とか、デザインとか。

今年もいろんな引き出しを増やすことができましたが、真っ先に思い浮かぶのは本書『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』の学びです。

このツイートの反響からも、多くの人が感動した本なんじゃないかと。

コロナによる自粛モードがなくなり、「出社解禁」を宣言する企業が多いなか、
「本当に出社するルールに戻す必要があるのか?」
「フルリモートだと本当に業務が回らないのか?」
に強い疑問を持っている人が多いはず。
これらの疑問に一つの答えを授けてくれるのが、本書なわけです。

ところで、GitLab社とは何かというと、アプリケーション開発を効率化できるプラットフォームを提供している企業です。
エンジニアが協業してプログラムを書いたり、修正したりしやすい仕組みを提供してくれます。

この企業は、他の会社にはない特徴を持っていて・・・それが「フルリモート組織」という点です。
社員は世界中にいて、オフィスなしで業務を回していく。
言葉にするとこれだけなのですが、実現するのは相当難しい。この難しさは、リモートワークをやったことある人であれば、誰もが実感するはずです。
しかし、GitLab社は2011年の創業以来、2000名を超える規模になるまでフルリモートで成長し続けています。

フルリモートの組織にするメリットはたくさんあります。
「世界中から優秀な人を採用できる」
「従業員に、柔軟な働き方を提供できる」
「移動や対面でのコミュニケーションなどの工数を効率化できる」
などなど。

一方で、デメリットや難しさも数多くありまして。
「誰が何をやっているか見えづらい。マネジメントが大変」
「対面でコミュニケーションが取れないので、仕事のスピードが落ちる」
などなど。

しかし、本書を読むと「マネジメントが大変」「対面でコミュニケーションが取れない」といった言葉を漏らした自分が恥ずかしくなってきます。
徹底した仕組み化とドキュメント活用」があれば、フルリモートでもスピーディーな組織運営が可能。
そのことを、本書は思い知らせてくれます。


特に「ドキュメント活用」のところが大いに学びがありまして。

本書には「物事を書き留める」と表現されていましたが、私はその意味合いを「文章化、文章化、文章化・・・とにかく文章化だ」だと理解しました。
GitLab社の根幹をささえるスキルであり文化であり仕組み。それが「文章化」です。

文章化は私自身もアホみたいにこだわっている要素でして。
例えば、オフィスで会って口頭で業務指示のやりとりをした際も、必ずSlackやメールで文章化するようにしています。
理由はいくつかあるのですが、

  • 口頭で喋っていることは、割とチグハグで曖昧だったりする。ちゃんと言語化することで、自分の思考の雑さを排除できる

  • 口頭でのコミュニケーションは、その場にいた当事者にしか共有されない。別のオフィスやリモートで働いている仲間と情報格差を生んではいけない

こう書くと「いや、口頭でコミュニケーションしたほうが早い」というツッコミを受けることがあります。
そういう人には、次のように言いたい。
「口頭でごまかすな。サボるな。口ではなく手を動かせ」と。

口頭でコミュニケーションしたがる人は、一時的な楽さに逃げようとしているだけでは?と思ってしまいます。
たしかに、その場で5分で話したほうが、早いように思えるかもしれない。
しかし、2人いれば10分かかったことになるし、同じことを質問する人が今後10人、100人と増えてきたら、どんどん工数が増えていきます。
そんなことになるんだったら、20分くらい頭をひねって、「誰が読んでも3分で理解できる」よう文章を作ったほうがマシです。

そのことを再確認させてくれた一冊として、2023年に読んだ本の中で強く脳裏に刻み込まれています。本書のことなら、何も見ずとも、酒を飲みながら2時間(で済めばマシ)は語れます。

⑤「学ぶ力」部門

『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』

「もっと稼ぐために、教養を学ぶ」
「仕事で置いてけぼりにならないよう、教養を学ぶ」
「忙しくて時間がない中で、Youtubeを使って10分で教養を学ぶ」

一見すると、どれも真っ当な思考回路に思えます。
しかし「この教養の捉え方が行きすぎると危険である」と警鐘を鳴らしてくれる本があります。
それが、今回ご紹介する『ファスト教養』です。ようやく7冊目ですね。

まず「ファスト教養」とは何なのか?
私なりに定義すると、ファスト教養とは、「意味がある」ではなく「役に立つ」から色々な知識や文化に触れること。

・・・と、私の解釈はどうでもいいかもしれませんね(笑)
本書の見解を簡単に記しておきます。

ファスト教養なるネーミングは、筆者が「ファストフード」をもじってつけたものです。
ファストフードのように「栄養バランスを多少損ねるのと引き換えに摂取しやすい形(=ざっくり全体を手っ取り早く把握できれば、表面的な説明でも良しとする)」を是とみなす考え方、ってことですね。
なので、分厚い古典を長時間かみしめながら読むよりも、ざっくり全体像を10分くらいで理解できればOK。

では、何のために「手っ取り早く、ざっくり全体像を知りたいのか」というと、ビジネスで役立てるためです。
それも、「自なりのものの見方や骨太な思考力を身につけたい」ではなく「ビジネスの場面で、相手に話を合わせたい」くらいのニュアンスで。

山口周さんの『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』の表現を借りると、
「意味がある」ではなく「役にたつ」から教養を学ぶ、ということなのでしょう。

では、そんなファスト教養には、どんな利点なり留意点があるのか?

利点明らかでしょう。
本来は古典をじっくり読まなくてはいけなかったのが、Youtubeで10分動画を見たり、Twitterに流れてくる図解を見ておけば理解できるようになりました。
要は、情報処理のスピードが爆上がりしました。これに伴い、余剰時間も増えます。
さらに、動画なり図解を見て得た知識を入り口に「もっと学んでみたいな」と思うきっかけも生まれます。

うん、利点まみれです。いいことしかない。
・・・と思いきや、そうでもないみたいで。

留意点もいろいろあって、まとめると2点。
第一に、「わかった気」になってしまうこと。
知識を「自分なりの原理原則」に落とし込むには、読む→考える→実践→振り返り→読み直す→考える→実践…のサイクルを回しながら、じっくり熟成させていく必要があります。
しかし「じっくり熟成」と「ファスト教養」はあまり相性がよくなく・・・
生煮えの薄っぺらい文字列を「わかった気」になっておしまい・・・なんてことになるリスクに気を付ける必要があります。

第二の留意点は、他人を見下す言動につながるおそれがある点です。
「自称、教養のあるインフルエンサー」的な人が、非道徳的な発言をして炎上する、なんてシーンをたまに見かけます。
教養のある(風)な人が、教養のない人を見下してしまう・・・中途半端な教養を身につけると、そんな落とし穴にはまる可能性だってあります。
本来の教養は「未知のものへの畏れや例外的な出来事への配慮」「違う立場に対する想像力や思いやり」を養うもののはず。
しかし、中途半端に教養(もどき)を摂取すると、無意識に他人にマウントを取ってしまう副作用に陥りかねません。

これは、とあるMBAの教授が言っていた言葉ですが
「MBAはナイフと一緒。本来は料理に使うものだが、使い方を誤ると人を傷つけかねない」
・・・とおっしゃっていました。
この言葉とも通ずるものを、『ファスト教養』から学びました。

7冊といいつつ、8冊目をねじ込ませてほしい・・・

7冊ご紹介します、と言いつつ、8冊目をねじ込んでしまいすみません。
ただ、どうしても、今年読んだなかで「一番思い入れのある本」があります。
それが拙著『投資としての読書』です(笑)。

それなりに頑張ってまして、ベストセラー1位を取ったり(カテゴリが経営情報システムなのは謎ですがw)。

さらに「SNS本大賞」でも、ビジネス書部門で第2位になった本でもあるんです。

ここで少し真面目な話を。
この本は、2022年5月に他界した叔母のおかげで執筆できました。

元々わたしは「時間を無駄にしてはならない。人の2倍生きねばならない」という信念を持っています。
きっかけは、私と同い年の従兄弟の存在です。従兄弟は、耳が聴こえず、足が不自由な状態で誕生しました。母と叔母が非常に仲が良かったこともあり、叔母にもこれ以上ないくらい可愛がってもらいました。そんなときに、ふと言われた言葉がありました。
「この子のぶんまで、充実した人生を送ってほしい」
保育園児だったため、当時の言葉を一言一句正確に覚えているわけではありませんが、今でもずっと心の中に残っています。
ですので、幼いころから「人生をこの時間に使う意味は何なのか?」「従兄弟のぶんまで頑張らなくてはならない」と強く強く感じていました。

なので、少しの隙間時間も自己研鑽に充て、1日1%でも成長をし続ける。そのための「読書」でした。
読書のおかげもあって、コンサル時代は激務を乗り切り、ほぼ定時帰りながら上位5%の評価を獲得。
MBAも「限られた時間で、誰よりも学び倒してやる」と鼻息荒く、全科目A評価のトップ成績で卒業。

そうやって、自分のために突っ走っていた矢先に、叔母が他界しました。
このとき「時間を無駄にしてはならない。人の2倍生きねばならない」と、より一層強く感じるようになりました。
同時に「いつ死ぬかわからない。今のうちから、自分が得たものを周りに還元しなくてはならない」と決心しました。

そう決心したタイミングで、天の導きなんてものは存在しないと思っていましたが、なんと出版社から「本、出しませんか」とお声かけをいただきました。
二つ返事で、本書を書くことにしました。

この本を書くことは、私の信念とも重なる部分がありまして。
「時間を無駄にしてほしくない。読書のタイムパフォーマンス最大化に、何とか貢献したい」という想いを込め、本書を書きました。

ですので、本記事のタイトルは「イチオシ7冊」なのですが、8冊目として拙著をオススメさせてください。2023年度版の記事なので、今回限りお許しいただければと。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
1冊でも「読みたい」と思える本が見つけてもらえれば、これ以上なく幸せです。
今年もお世話になりました。来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

まとめ:今回ご紹介した本

  1. シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント

  2. コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト

  3. ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー 食べログ、クックパッドを育てた男

  4. 完全無欠の問題解決

  5. 「変化を嫌う人」を動かす

  6. GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた

  7. ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち

  8. (『投資としての読書』)

追記:皆さんから教えてもらったオススメ本

せっかくなので、「今年読んだオススメ本」をXで皆さんに聞いてみました。すると、大反響で、たくさんの本を教えてもらえました。今年おわりを目前にして、本代で支払いがパツパツになってしまい…
それくらい、オススメの本を教えてもらったので、↓ツイートのリプ欄を覗いてみてください。


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