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ビジネスパーソンとしての戦闘能力

以前、働く人がどこに興味があるのかを、ヒト・モノ・カネ・考えで整理して、どの産業にどんな人が居がちか示したnoteを書いた。

これは興味に基づいた分類だが、ビジネスパーソンとしての戦闘能力の要素として捉える事も出来る。ヒトの戦闘能力が高い人とは、要は大きくかつ成長する組織を作れる人である。こんな感じで整理すると下記の通りである。

  • ヒトの戦闘能力が高い人:大きく、成長する組織を作れる人・キーパーソンを説得できる人

  • モノの戦闘能力が高い人:スケールするプロダクトを作れる人

  • カネの戦闘能力が高い人:資金調達力があり、資本市場での評価を上げられる人

  • 考えの戦闘能力が高い人:戦略家だったりスキルフルな人

上記すべての要素が高い人もいるが、優れた経営者やプロフェッショナルは、特定の要素が極端に高い事がある。簡単に言うと

スティーブ・ジョブズは未来のプロダクトを語るが、人財とか言わない

という事である。今調べてみたら、チームメンバーのハードワークを称賛するジョブズの名言が幾つか出てきて困ってしまったが、僕には良いプロダクトを作らせる為に限界まで働かせるジョブズの霊圧が名言の行間に見えてしまう(昨日限界まで働いたゆえの幻影かもしれない)。

プロファームの戦闘能力

では、ジョブスは特にモノの戦闘力に優れてるとして、プロフェッショナルファームのシニアは4つの戦闘能力の内、どれが高いのか。全員に当てはまる訳では無いにせよ、考えの戦闘能力は押しなべて高いだろう。彼らのインサイトやナレッジそのものがファームの売り物そのものであり、売った結果で顧客の意思が定まる様なインパクトを持つからだ。

よって、プロフェッショナルファームのジュニアは、タスクへのアウトプットを続けながら、考えの戦闘能力を売り物になるレベルに徐々に伸ばしていく必要がある。が、そこだけに興味や能力開発が閉じてしまうのはキャリアにとって制約に成りかねない。プロフェッショナルファームでは、ジュニアのうちはスキルが求められるがシニアになると急に営業が求められる、とは巷間言われるが、営業だけが求められている訳では無い。ヒト・モノ・カネの要素にわたって組織を稼がせて大きくさせる事がシニアであり、マネジャーの役割なのである。成長しているファームというのは、考えが売り物になる程度には尖っていつつも、ヒト・モノ・カネの拡大再生産についても優れているものだ。

モノとPEファンド

PEファンドのシニアとして、自分のビジネスパーソンとしての戦闘能力の発達過程を思い返すと、このヒト・モノ・カネ・考えの間をぐるぐる回りながら、聳えるビジネスの塔の螺旋階段を登っていったなと思う。そして、一番のブレークスルーになったのは、モノの改善にバリューアップ活動で携われた事であった。モノがブレークスルーになった理由は、モノがPEファンドから一番遠く、若い時の自分を含めて、多くの金融出身のファンドのスタッフは、投資先のモノを所与として考える傾向にあり、その思考パターンをアンラーンする価値が大きかったから、だと思う。

これまで自分とチームは、プロダクトのリアル・オンラインを問わず、外部者である株主の立場からの遠慮を飛び越えて、ユーザビリティを改善するアイデアを出したり、顧客提供価値の大胆なポジショニング変更を行なったり、生産SCMへ投資を行いながら長年続いたコスト構造を変えたりといった試みを続けてきた。成功もあれば失敗もあったし、捗々しい提案が出来なかった投資先もあった。が、試行錯誤の中で、モノを良くするとヒトが付いてくるとか、カネの世界が顧客より先にモノの良さを理解する、の様な要素間の波及や連動が起こる経験もして、自分のビジネスへの考えは随分と深まった様に思う。実際、事業デュー・ディリジェンスをするにしても、投資主体にモノの良し悪しや改善や変化の幅の感覚があるのとないのとでは、何段階か深さが変わってくるのでは無いだろうか。

PEファンドは、ハンズオンが特徴だと言われるが、そのオンかオフかは大きな論点でない。例えば、事業会社の子会社出向は超ハンズオンだと思うが、経済的付加価値を産んでいるかはケースバイケースだからである。プロダクト関与のオンとオフは、もう少し経済的付加価値に近い場所にある分岐点である。ハンズオン・オフと比べると、プロダクト関与のオン・オフは外から分かりにくいと思うが、ファームや担当者個人によるスタンスの違いが大きいと推察する。自分が投資からバリューアップまでの一貫した担当を支持する一つの理由は、バリューアップの経験や数字の感覚と投資判断との間の正のフィードバックであり、その中核要素がプロダクトへの関与であるが、出来得るなら、プロダクトから更に爪を伸ばして、

未来のプロダクトを語るが、人財も語る

位の戦闘能力を、ビジネスの塔で持ちたいものである。それが出来たら、神の罰によって、共通言語が乱れ、ヒト・モノ・カネ・考えを信奉するそれぞれの部族が、てんでに話す状況を脱して、一つの大きな仕事を成し遂げられるかもしれない。

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