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ヒトが好きか、モノが好きか。

CMO(マーケティングのトップ)の採用面接をしていると、P&Gやコカ・コーラ、或いは欧州のラグジュアリーブランド等で豊富なマーケター経験のある方から、いま一番イケてるプロダクトの裏話を聞いたりして、出席一同興奮冷めやらぬ、みたいな瞬間がある。以前、そんな瞬間の一つを体験した後に、チームメンバーから、「そういえば、モノへの愛情は伝わってきたけど、ヒトの話が殆ど有りませんでしたね」というコメントが出て、はたと考え込んだ事があった。確かに、その方からは部下とか顧客とかのヒトの話が殆ど無く、記憶を手繰ると、少しだけ触れられていたヒトの話は、エッジが立っていて、絵になるというか、プロダクトと化してるヒトの話であって、確かに余りヒトへの興味が無いのかもしれない、と思った。大きな組織であれば、ヒトのマネジメントは得意なメンバーに任せて、ブランド・エバンジェリストみたいな専門職を用意する事も可能であろうが、ミッドキャップの投資先では、CMOにヒトもモノも見て欲しいのが実際であり、どれ位チームの面倒を見れる方なのか、という難しい検証にその後挑むことになる。

一方、CMOの経験があるけれども、モノよりヒトの話が多い方もいる。「誰それがやったキャンペーン」「このプロジェクトは、チームと悪戦苦闘して大変だった」「この時の社長の○○さんはこう言ってて」みたいな内容である。それだから駄目という事は無いが、モノへの確たるビューをある程度は聞きたいのが、CMOというポジションである。

さて、それを聞いてるPEファンドの人は、過半が金融出身な訳だが、金融出身者でヒトやモノへの強い興味や関心、あるいは自己研鑽を積んでいる人はそう多くない。そもそもヒトに強い興味を抱いている人は、余り新卒で投資銀行やバイサイドに行かないもので、モノに強い興味のある人は、メーカーなり広告代理店なりに行くものである。では我々金融出身者は何に興味があるのかと言えば、基本的にカネである。なので、CMOから見たPEファンドマンは、モノへの愛情不足でカネの話ばかりというイメージになる。が、職業柄これはこれで良いのであって、カネに興味のないPEファンドマンには恐ろしくて投資の意思決定を任せられない。ちなみに、カネを基本に、モノかヒトのどちらかに更に興味があると、「あの人は金融っぽくなく、事業にも造詣が深い」なんて評価になる

この、ヒト・モノ・カネのどこに興味がある人が、どんな産業にいがちかを下記に乱暴に示してみる。

ヒトモノカネ

実は、この外側に更に「考え」が好きという戦略コンサルタントやジャーナリストという人種が存在し、悪く言えば、金融出身者から見た戦略コンサルタントは、儲けより考えてばかりという印象になり、戦略コンサルタントから見た金融出身者は、考え無くして儲けられるのか、みたいな感じになる。少数民族を入れると話がややこしくなるので、図は3つに絞ってみたが、ヒト・モノ・カネ・考えのどれに興味がある人なのか、自分や仕事のパートナーをポジショニングしてみると、向き不向きが分かると思うし、組織内である程度は多様性がある方が、見方やケイパビリティが偏らなくて僕は良いと思う。

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