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『Egg Squeeze』感想:卵版「チキンレース」にはまった。卵が割れる直前まで「直感で」握り続ける奇妙な行為が、やめられない

卵がどれくらい強く握ったら割れるかなんて、そんなの習ってません。
しかも卵によって個体差があるんだから、完全に運。
「これ以上握れない!」と思って手を離したら、実はまだまだ握っても割れない状態だったり。
「まだまだ大丈夫だろう」と思ったら、すぐに割れてしまったり。
そんな、運ベースのゲームなのに、なぜか何度も何度も繰り返してしまう。
『Egg Squeeze』、直訳すると「卵絞り」は、そんなゲームでした。


ルールは簡単。クリックし続けることでゲーム中の主人公?が卵を握り、クリックをやめると握るをやめます。
卵は一定時間(おおよそ3秒~9秒)握り続けると割れてしまいます。どのくらいの秒数、握り続けられるかはランダム。そしてそのヒントもなし。
プレイヤーは直感で、「この卵はすぐ割れそう」「この卵は割れなそう」というのを感じ取り、ギリギリを攻めるのです。


なぜギリギリを攻めないといけないのか。
このゲームでは、卵を握って、割らずに手を離せた場合、どのくらい握れたかによってポイントを得ることができます。
このポイントが、卵が割れる直前ほど高くなるのです。
だからこそ、卵が割れるタイミングを「勘で」予測し、「そろそろ割れるか…?」という瞬間に手を離すのです。
ちなみに、卵が割れた場合は大幅にポイント減。
つまり、ビビッて卵を握る行為をすぐにやめてしまうと、ポイントは加算されるものの微々たるもの。
卵が割れる寸前まで握れれば高ポイントゲット。
ただし、割れてしまうとポイント大幅減。
この3つの観点から行われるチキンレース。いや、目隠しチキンレースであり、ギャンブル。
この部分の中毒性にやられてしまいました。


なんですかね。
ワンアイディアのインディーゲームであることは間違いないんです。
卵を握り、離す。これだけのプレイなんです。
そして、そういうプレイに本来必要であろう、「コツ」や「攻略法」というのがなく、完全にランダムなため、どれだけプレイしても結局は運という部分に収束するんですよね。
ただの運ゲーなんて、基本的には面白くありません。
しかし、それでもゲームに夢中にさせる要素が、実はいくつか実装されていた、そう思います。


例えば、ゲームプレイの早さ。
これは高難易度アクションゲーム『Celeste』の際にも思ったんですが、ゲームで失敗したときの「リスタート」の早さというのは、ゲームの継続に結構重要だと思っていて。特にこのEgg Squeezeも捉え方によれば(レベル上げも何もないので)高難易度ゲームだと思いますし、卵を割ってしまった際のリスタートが遅いと萎えてしまうこともあるのではないかと感じます。
というか、卵を握ってから離すまで長くても9秒くらい(それ以上は卵が割れる)上に、結果表示画面も一瞬で表示されるため、1分間に5-6回は握れるわけです。このテンポの速さ。成功しても失敗してもすぐにまた卵握りプレイが始まるので、途中で止めずについ握ってしまう。クリックのみという簡単操作も相まって、なかなかに中毒性がありました。


また、単調なプレイといえる卵握りに大きく新鮮さを与えているのが、そのサウンドトラック、つまりBGM。
このゲーム、単調な中にも50以上の楽曲が含まれているようで、実際にプレイしても卵握り中に様々な楽曲が流れます。卵握りのプレイがシンプルだからこそ、音楽による雰囲気の変化は凄まじいものがありました。また、「どのくらい握っていても大丈夫か」という、感覚的なものに対し、BGMのBPM、つまり曲のテンポも大きく影響…というか、感覚を乱されました。ゆったりした音楽だとつい握りすぎてしまうし、テンポが速い音楽だとつい早く手を放してしまう。大きく中毒性に貢献していたと思います。

(ちなみにEgg Squeezeのサントラを見つけたものの、結局卵握りは最長でも10秒もかからないので全部の曲が短いのが面白い)


そしてもう一つ付け加えると、飽きさせない追加要素がふんだんな、このゲームのメインであるDAY3の仕掛けについてです。
ゲームはDAY1、DAY2、DAY3と、徐々にプレイできるステージが増えていきます。どれもやることは一緒。全て卵握りです。
ですが、DAY1DAY2はほぼチュートリアルのようなもの。序章です。
DAY1をクリアするために必要なポイントは30,000点。DAY2は100,000点。しかしDAY3は9,999,999点です。まさにけた違い。
そうなると、必然的に多くの回数の卵握りをする必要があります。
さすがに飽きるのではないか。そう思ったものの、このDAY3に限り、様々な要素がアンロックされるのです。
詳細は省きますが、下のスクショのように色々な要素が追加され、中には得点に影響するものもあり、飽きさせません。


さらには、謎の電話がかかってきて(おそらくこの卵握りの主催者。英語がわからないのでストーリーを完全に解釈できていないけど、何か超能力関係のよう)、「今持っている全額を賭けて、ポイントをX倍にする卵握りをやらないか」というギャンブルの提案まで。


こういった演出がDAY3で初めて現れるので、飽きずにプレイすることができました。(またこの提案が、上記画像なら「ポイントを6倍にするから次の卵握りでは卵の耐久値のうち67%以上握れよ」という制約なのがいやらしい。握りすぎると卵が割れちゃうけど、でも(もう67%超えただろうか…もう少し握っていたほうがいいか…)というような葛藤がとても強くなる)

このギャンブルオファーに成功すれば、一瞬でクリアすることも可能


本当にただのワンアイディア・インディーゲーム。卵を割れないように握り続けるというシンプルなルールであり、完全に運ゲーでありながらも、飽きることなくクリアまで遊びました。
まあ荒いところがないわけではなく、だいたい卵が割れるのが最低3秒くらいなので、それより短い、例えば2秒握って離すのを繰り返していけば安全かつ無限にポイントを増やすことができます。時間はかかりますが、どうしてもクリアできないときはそういう方法をしてもいいかもしれません。もちろん、ゲームとしてはギリギリを攻めたときの快感が大きいため、楽しむのであればがっつり握ったほうがいいとは思います。
まあときにはそういった方法を駆使しつつ、一方でギャンブルオファーにぜひ応えて、所持した数百万ポイントが一瞬で無に帰す感覚や、絶対長く握って高ポイント獲得するぞ!と意気込んだのに3秒卵を握ったら割れてしまってポイント大幅減とか、そういった理不尽を体験してみてください。本当に、ギャンブルで大損したような、血の気が引く感覚を味わえます。


もちろん、実際にはお金は減らず、費やした時間のみが失われるわけです。
Egg Squeeze自体も定価で500円以下なので、実質無料。正直500円以上の価値は間違いなくありました。
今年プレイしたゲームの中でもかなりおすすめです。
ぜひあなたも非現実の世界で卵を握ってみてください。そして、思わぬストーリーを体感してみてください。


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