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『DREDGE』感想:真っ暗な海で巨大な化け物から逃げる、クトゥルフ&ホラーな「釣りゲー」

おっっっもしろかった……。
久々に時間が一瞬で溶けたゲームでした。
一度プレイし始めたら止まらず、いつの間にか深夜に。
クリアまで約9時間、2日でやりきりました。
クトゥルフ×漁業、最高の面白インディーです。


ゲームシステムの基本は「釣り」。
プレイヤーは船に乗り、海で釣り……というか、漁業をします。
海には魚がいるスポットが可視化されているので、そこまで船を近づけ、そして釣る。釣り要素はタイミングに合わせてボタンを押すと早く釣れるようになるアクションゲーム。よくある感じのやつです。

船のキャパは決まっており、魚をテトリスのように縦横回してぎゅうぎゅうに詰める。これもまたひとつのゲーム性。

魚を釣って、積んで、街に帰り、売る。
船を強化できる材料をサルベージする。
魚を売ったお金+材料で船のエンジンを強化したり、釣竿を強化する。
より多くの魚を釣る。そして売る。

このスパイラルはいわゆるローグライクで、海というダンジョンに出発しては宝をゲットし街に戻り強化、また強化した船で海というダンジョンに出発……という繰り返し。どんどん出来ることが増えていくので、やればやるほどハマります。

本当に良く出来ているゲーム……なのですが、さらに上手いのがここに、クトゥルフ要素を取り入れたこと。このエッセンスが強烈にこのゲームの魅力を押し上げています。



クトゥルフにインスパイアされた化け物が跋扈する海

船で海に出るのは何時に出てもいいんです。朝6時でも、昼12時でも、夜18時でも。
しかし、夜18時以降の夜釣りは気を付けないといけません。
真っ暗な海の中から、いつの間にか化け物が寄ってきて、船を壊しにかかってきます。

これがもう怖いのなんの。
ぽつんと真っ暗な海の上で、どこからともなく襲ってくる化け物がいるという状況、軽くパニックになります。

特に、海の上という状況が恐ろしい。自分の乗っている船はただの漁船ですので、当然化け物に攻撃なんかは出来ません。出来るのは、とにかく急いで陸にある街に戻ること。そこまで戻れば難を逃れることができます。

ただ……このゲーム、一応地図を見ることは出来るけど、基本的に夜の海はほとんど光がありません。東西南北、簡単に方向を見失います。

慌てて化け物から逃げて陸に近づいていたはずが、ふと地図を確認するとますます沖に出ていた……。そんなこともしばしば。
辺りは真っ暗。度重なる攻撃を受けると、船は完全に破壊され、ゲームオーバーとなります。



時間管理の難しさ

「化け物から襲われないよう、ちゃんとゲーム内の時間を見て、暗くなる前に帰ればいい」

頭ではわかっているし、もちろんそのプレイを心がけます。
でも、魚釣りに夢中になっているといつの間にか時間が経ってしまう。これが本当にいやらしい。

その原因のひとつは、船のキャパシティが明確なこと。「なるべく多く魚を積んで帰りたい」そんな思いが高まるよう、まだ詰める空きがブロックで明確に可視化されています。なんとなくスペースを空けたまま街に帰るのは損な気がするように感じます。

せっかくだし沢山釣って帰りたい

そんな思いで釣りを続けます。この釣り、1回魚を釣るとゲーム内時間の30分~1時間30分くらい経過します。まあ平均1時間くらいでしょうか。船で移動するのも時間が経過するので、何度も何度も魚を釣るとあっという間に時間が経ってしまいます。
それでも、辺りがどんどん暗くなるんだから、日が沈むのも気づきそうなもの。

そこがこのゲームのいやらしいところなんですが、なぜか魚を釣るときだけ、船を真上から見た視点に変わるんですよね。画面中心に船、周りは海。
つまり、空が見えないんです。だからこそ、時間の経過に気づきにくい。特に、夕方に釣り始めるのはヤバい。2、3匹釣ったらもう危険な時間帯です。

空が見えないから意外と暗くなったことに気づかない

ハッと気づいたときには夜の闇と化け物の気配。絶望。



怖い→逃げる→衝突する

化け物が暗い海から、どこからともなく襲ってくる……。これは恐怖です。
そして先ほども書きましたが、自分は本当に無力。逃げるしかない。

30代以上には伝わるかと思いますが、マリオ64のウツボのステージみたいな怖さがあります。

とにかく、怖いは怖いものの陸地に逃げないと船が壊され、ゲームオーバーになります。
夜の海で先が見えなくても、とにかく地図を見て陸地、街の方角へと船を走らせます。
そこで、このゲームのいやらしさにまたもや直面するのです。

暗い海、船のライトはあるもののあまり先は見えません。
ときどき、海の岩や陸地に船がコツンとぶつかることがあります。
そして、そんな軽い衝突でも、船が破損するのです。

これ、本当に思っているより軽い衝突で、船が破損します。触れるくらいでもダメなんです。

だから、釣りをしに沖に出るときも、注意して船を操作しないといけません。これ、明るいうちはいいんです。周りが見えるから。

岩にぶつからないよう気をつける

でも、それが真夜中で辺りが真っ暗だったら。そして、化け物に襲われて、暗い中でも全速力で陸地に向かわないといけなかったら。
当然、ぶつかります。

目の前に来ないと岩が見えない

ぶつかるとどうなるか。船の耐久力が減って、ゲームオーバーに近づくのはもちろん、時には船の装備が壊れます。

積み荷が海に落ちてしまうこともあれば、エンジンが壊れてしまうときだってあります。エンジンが壊れたら、もはや詰み。スピードが出なくなった船は化け物の格好の獲物、狙い打ちで襲われ、船は全壊、ゲームオーバー。

つまるところ、夜は化け物からの襲撃だけではなく、なんらかの障害物にぶつかることに対しても気を付けないといけません。焦らず、急ぐのです。
この、「襲われているけど慎重に逃げないといけない」というジレンマが、本当にいやらしく、ゲームに刺激を与えている、よく考えられたポイントでした。



不気味な人々

ゲームの世界観を彩るのは不気味な登場人物。
オープニングからゲームクリアまで、どこか陰鬱な空気は彼らが醸し出していると言っても過言ではありません。

街にいる謎の灯台守、不気味なアイテムを集める謎の男……。
クトゥルフ的な化け物や時折釣れる奇妙な魚、それだけでもやや気持ち悪いのに、不気味な人々もまた、いい味を出しています。

そして、不気味なだけでは終わらないのがこのゲームの良いところ。
彼らは大体、何らかのお願いをしてくるのです。

それはいわゆるメインクエストだったり、サブクエストだったりするのですが、そのお願いを聞くことでどんどん話が明らかになり、また世界観や物語が具体的になるのは非常に面白かったです。RPGのようなストーリーテリングで、「どんどん先に進めたい」と思わせるものでした。

クエストの達成理由も大体が特定の魚を釣ることなので難しくないですし、量も少ないのでサクサク話が進むところもまた良い。インディーの魅力の一つだと思いました。



終わりに

シンプルな釣り要素、クトゥルフ的化け物要素、急いで逃げることへの容赦ないペナルティ、魅力的な世界観。
翻訳も素晴らしいし、UIも申し分なし。
非常に良く出来たインディーゲームだったと思います。
いつも近くにいる、見えないだけの化け物。
常にうっすら不安がつきまとうものの、日中は極めて平和な世界。

まるで都合の悪いものを見ないように過ごしている居心地の悪さは、陰鬱な小説を読んでいるときのようなどろどろとした、鬱屈した気持ちです。
しかし、ゲーム全体を通してストレスの無いプレイフィールは、魚釣りの魅力を存分に高めるとともに、その陰鬱な世界をもっと知りたいという気持ちを強く後押しします。

結果、一度始めたらやめどきが見つからない、とても魅力的なゲームとなっているのです。

不気味な魚も釣れる

いわゆる魚釣りのアクション、そしてどんな魚が釣れるかのワクワク感をベースに、船を強化していく高揚感、先が気になる物語、手も足も出ない不気味な化け物、それらの要素がお互いを高め合うように組み合わさったこのゲームは、間違いなくお勧めできるインディーゲームです。

どこかの要素に興味があれば、是非プレイして欲しいです。
きっと、プレイ開始から数時間が一瞬で溶ける体験が出来ると思います。
『DREDGE』、超おすすめインディーでした。


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