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読書日記(5冊目)『論語と算盤と私―これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について』朝倉 祐介(ダイヤモンド社)

素晴らしい本でした。

著者は元ミクシイ社長で、同い年であることは何となく知っていたがなんと誕生日まで一緒のようでびっくりです。やや自虐的ですが同じ年月生きていても、大事なのか中身・濃さであると痛感した次第。

いずれにしても本書はリーダーシップやプロフェッショナルということについて示唆溢れる良書です。ベンチャー企業の元社長が書いた軽薄な本では全然ありませんというか、真逆な感じ。34歳にして老成したオーラすら漂う。さて全7章は以下の通り。

第1章 職業としての経営者とリーダーシップ
第2章 集団・企業が陥る自己矛盾
第3章 起業・スタートアップの環境変化
第4章 成熟・衰退期を迎えた企業の処方箋
第5章 既存企業のイノベーションに対する渇望
第6章 資本市場に翻弄されないために
第7章 個として独立するための原則と心意気

正直第1章を読み終わった時は、巻末の岡田監督のコラムのインパクトが強過ぎて、また割と一般的な内容かなと思ったのですが、第2章からぐいぐい引き込まれました。企業という存在がはらむ矛盾、ミッションやバリューの定義等実際に経営に携わったことのある著者ならではの記述が光ります。ただ独りよがりにならず、歴史的な著名な名言をさらっとひくなど文章も読みやすい。あと第2章の巻末コラムもとても興味深くて「3ヶ月前は黒歴史」「与党であれ」というフレーズに強く共感。

第3章はスタートアップ論で、シリコンバレーを理想化する必要はない、アメリカだとIPOよりも事業売却がメインという話はなるほどと納得。起業家と投資家が同床異夢になりがちである点や、エンジェル投資家の必要性についても言及されている。ただファイナンスの専門的な話もあり、個人的には結構難しかった。

第4章が個人的に一番痺れました。というのは私自身が創業100年を超える衰退期?の企業で働いているため、身につまされる話ばかりで「そうだ、本当にそうなんだよ」と。はっとしたのはP210に「自分自身のアイデンティティや自己評価が、携わる事業に対して密接に関係づけられていることは、必ずしも健全な状態とは言えない」、と事業は事業、自分は自分と結構ドライなことを書いている。

第5章はさらっと書かれているが、日本においてイノベーションを担っていたのは大企業であり、ものはやりようだということがわかる。ベンチャー万歳!ではないのだと。

第6章は、企業のガバナンスや経営論についてだけど、著者の興味がこのあたりにあるのだとわかる。自身で経営をすることよりも制度を作ることに関心が移られたのかもしれない。

そして第7章は生き方の指針で締め括られている。

①動機:ポジティブもネガティブもあり
②選択基準:みずからが納得するために
③代替案:人生の致命傷を避ける

とある。

著者の知識と経験、理論と実践、抽象と具体のバランスが素晴らしく、頭の良さに触れて、こっちまで賢くなったと勘違いをしてしまう。

そうどんな生き方を歩もうとも、すべては自分次第なのです。









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