卵を運ぶ

センター試験というのは、そうとうな気遣いをもって運営される。

会場の大学で2日間で動員する人員は、自大学の入試のときより多い。
いつもより暖房も焚くし照明も明るくするし、看板や掲示や試験室の設営も細かくやるし、車や人の動線を規制して不足なく人を置く。
センター試験にはほとんどの教職員が関わり、役割を持つことになる。(ので、センター対応で初めて顔を合わせる教職員も結構いる)

センター試験の運営の独特な緊張感と慎重を期す感じというのは、へんなたとえだが、スプーンで生卵を運ぶリレーみたいな気持ち。
自分のところで何かが起こらないように。
落っことさずヒビも入れず確実に次に渡せるように。
全員そう思って関わっている気がする。

関わる人数が多いと、すべての担当がきちんとそれぞれの役割と動きを把握したり、それを全うするのもそれを確認するのも大変になる。何千人もの人で行う伝言ゲームを想像してもらえば分かりやすいかと思うが、人が多ければ多いほど、すべてを確実に実行する難易度がそうとうに高くなる。だが毎年全国津々浦々の大学・高校の何百もの試験会場でそれは完遂されている。簡単なことじゃない。毎回奇跡的だなと思っている。

それを支えているのは、さっきの絶対落とせない卵リレーでどきどきして怖くて震える感じの、運営の末端に至るまでの一人ひとりの気持ちであると思っているのだが、それを今後、果たして入試に関わる全員が持てるんだろうかというのは、やはり心配に思う。民間企業に入試の一端を被らせたそのときに。
やっぱりあの緊張感と慎重さ、確実さというのは、大学や国がきちんと入試の責任を引き受けることでしか、保てないような気がする。

来年からはどうなるのか、不安でいっぱいな受験生や受験を控えている学生たち。
大学側も、心配でたまらないが、今は今年のセンター試験運営の1ピースになりきって、確実にやり遂げるだけだ。そしてそれが正しいことだと信じている。

学生はもっと不安で緊張しているだろう。寒くなる予報だから、暖かくして。受験票とお弁当は忘れずに。時間にはゆとりを持って会場に来て。あとは何かあっても対処するから。

そんないまのこのそわそわした緊張感を、忘れないでいたい。

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