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【前日譚】陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 【-妄想、或いは夢-02】

元消防士系Vtuber、朝霧侑志の過去、
それは、スレタイみたいな本当の話でした。


陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 通称:オタけし

前日譚:-妄想、或いは夢-02


──これは、太陽に近づき過ぎた少年の物語


※本noteは事実を元に作成されていますが、身バレ防止のため2割ほどフィクションを混ぜています。(主に消防の組織関係)




【自己紹介】

(話が進むにつれて年表が更新されていきます。)

-スペック-

名前:朝霧侑志(あさぎりゆうし)
年齢:28歳
性別:男
属性:陰キャ

-年表-

1994年 5月 誕生
1995年 1月 兵庫県南部地震発災 被災する
      祖母宅(静岡)に引き取られる
      不憫な子のレッテルを貼られる
      消極的な子として育つ
2007年 4月 愛知にて両親&姉と4人暮らしが始まる
      中学に進学するも陰キャは変わらず
2011年 3月 東北地方太平洋沖地震発災
      連日テレビに映るオレンジに魅せられる
      消防士になりたいと言う夢を持つ 
2011年 4月 高校2年生 友達作りを頑張る
      努力の結果かけがえのない友達が出来る
2012年 1月 消防になりたいと言う夢を友人に打ち明ける
      夢は口に出すと強い



2013年 4月 高校卒業と同時に消防士へ。



2021年 9月 とある事情で退職
2021年10月 Vtuber活動開始




【前回までのあらすじ】


あの日 眩しいほどのオレンジに魅せられた少年がいた

初めて抱いた夢を叶えるため 意味のある人生を送るため

彼は勇気ある第一歩を踏み出し 友という最強の味方を手に入れる

しかし 浮かれ舞い上がった少年は忘れていた

それは 変わらぬ不変の事実

少年は所詮 ただの陰キャオタクである





【4.朝霧侑志は貧弱である】


早速ですが問題です。
朝霧侑志という人間が消防になるために、足りないものは何か分かりますでしょうか?
正解はとってもシンプルです。

それは、センス。
つまり、全部。

情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ。
そして何より、速さが足りない。

人には誰しも許容レベルというものがあります。
「ここまではできる」「そこからは無理」のような、
先天性のステータス限界値とでも言いましょうか。

これは精神にも肉体にも言える事でございますが、
朝霧侑志という人間は、それが『陰キャレベル』である以上、
もはや何をしても、消防の基準点には到達出来ない訳です。

消防には筆記試験と面接の他にも、体力テストと言うものがあるのですが、

それに向けた筋トレ一つとってもそうです。

朝霧の場合は
【筋肉をつけるためのトレーニング】

ではありません。
【筋肉をつけるトレーニングが可能になるためのトレーニング】
から始まるのです。
シンプルに言えば「トレーニングって何?」からのスタートです。
運動得意な人は冗談だと思うでしょう?マジなんですよ。
貧弱な人間は、そもそもの身体の動かし方が分からないんです。

幸い、高卒公務員の筆記試験は最低限の道徳と教養があれば誰でも分かるような問題ばかりです。
コツさえつかめばゴリラでも解けます。
……これも誇張表現でも冗談でもなく、本当の事なのですよ。

だって、じゃねぇと朝霧が8年半もゴリラと一緒に勤務していた理由が分かりません。

よくわかんないけど、まずは人並みを目指す。
朝霧侑志の戦いは、他の消防を目指すライバルよりも数十手は遅れたところから始まったのです。

ところで、この落ちこぼれが頑張る感じ、
なんかオタクの琴線に触れませんか?

そうです。
これは正に、ガチの陰キャの成り上がり。

当時はそこまで主人公成り上がりのなろう系が流行っていなかった事が悔やまれますね。
流行ってたら多方面からモテモテだったでしょうに。
(こう言うことを言うところがもう既にモテないという事にいい加減気づいた方が良い)




【5.朝霧侑志は積み上げる】


かくして、強いメンタル及び強い身体作りを始めた朝霧君、

現状彼がおかれている立場が分かりやすいように、
高校当時の体力スペックを大体で書き殴ってみますと……

・腕立て
→最高15回

・懸垂(全伸ばし反動なし)
→最高3回

・50m走
→7.5秒

・1.5km走
→6分00秒 

・上体起こし
→34回

・反復横跳び
→55回

・握力
→29kg

……はい。貧弱人間でございました。

腹筋だけは某有名ネット掲示板の影響で、アニメ見ながらしていたので平均以上でしたが、その他の項目はほぼ全て平均を大きく下回ります。

運動得意な中学生とやり合ったら馬鹿にされるレベルですね。

今思うと不思議ですよ。
こいつどうやってこの日まで生きて来たんでしょうか?
こんなので体力試験が受かる訳がありません。

ひとまず最も劣っている部分から鍛えようと、
昼休みにグランドの隅で懸垂をすることから始めたのですが、
ここでも、朝霧を変えてくれるとある出会いがあったのです。

本当に、人との出会いに限れば、めちゃくちゃ恵まれた人生を歩んできました。女性との出会いには恵まれませんでしたけど。(女の子が悪かったみたいに言うな)

こう言うところで、神様は帳尻を合わせてくれてたのかもしれませんね。


高校2年の2月頃から、朝霧は体力試験に向けた筋トレを始めました。
(ちなみにこの時まで筋トレしてなかったのは、友のいる喜びに震えていたからです。ソロ陰キャだった彼を誰が責める事が出来るでしょうか)

ある日、
「おお!何やってるの!?」
と、懸垂をしていた(出来てはいない)朝霧に声がかかります。

振り返えると、体育の担当教師(以下N先生)でした。
若い熱血系の先生です。絡み方が陽キャっぽいので正直嫌いでした。

……今思うと至極当然のセリフですね。

受け持ってるクラスの陰キャがおもむろに懸垂してたら、
そら「何やってるの!?」と声をかけたくなるに決まってます。

朝霧が「実は……」と事情を説明します。
当然「何故急に消防?」という疑問に続く訳で、自身の生まれの事もここで打ち明けました。
焦っていたのもあったと思います。きっと誰かに聞いてほしかったのでしょう。

最初は面白半分、という顔で聞いていたN先生は、
そこに至るまでの過程を聞く内に、だんだんと表情が真剣なまなざしに変わっていました。
そして、最後まで聞くやいなや、朝霧の両肩をグッと掴みます。

「協力させて。絶対に受かろう。」

その日から、N先生との熱血特訓が始まったのです。

N先生は陸上部の副顧問だったのですが、部活の合間を縫って面倒を見てくれました。陸上部の練習に混ぜてもらうこともありましたね。

ちなみに、この陸上部との交流で朝霧は最高のオタク仲間を作るに至るのですが、それはまたその内FANBOXの方で話そうかなと思います。
(さりげない誘導)

そんなこんなで、有酸素も無酸素も、自重もマシンも、
これでもかってくらいやらされました。正直とってもつらかったです。
逃げたくなった事もありましたが、引ける訳が無いんですよね。
だって初めて出来た夢だったので。
冗談でもなんでもなく、あの時の朝霧は
「消防に受かるか、死ぬしかない」
と思ってました。

余談ですが、初めてプロテイン飲んだのもこの頃ですね。
N先生が耳元で「内緒だからな」と言って一袋くれたのです。
この発言は大人になった今考えたら当然
「(他の生徒等にバレると、立場上角が立つから)内緒だからな」
という意味なのですが、そんな難しい事は知らない高校生の朝霧は、
普通にホモっぽい発言に後ずさりしていました。
N先生、あの時はマジでごめんなさい。

そしてついでの余談ですが……、
そんなN先生が卒アルに書いてくださった言葉、
今でも読み返さずとも、一言一句たがわず覚えています。

「大丈夫!君は天才だ!近くで見ていた俺を信じろ!!」

あなたのおかげでメンタルも強くなりました。
今はどこにいるかもわからないですけど、                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       いつか一緒にお酒飲みたいなぁ。


閑話休題


そんな生活を約半年以上続けて、果たして朝霧がどれくらい運動ができるようになったかと言うと、こっちは体力テストのような成績表がないのでうろ覚えですが……

・腕立て
→最高50回

・懸垂(全伸ばし反動なし)
→最高11回

・50m走
→6.9秒

・1.5km走
→5分20秒 

・上体起こし
→40回

・反復横跳び
→64回

・握力
→45kg

確かこんなもんだったかと記憶してます。
全て平均か、少し超える程度には強くなれたのです。

秀でているとまでは言えない。
でも、決して劣っていないくらいは高めることが出来た。
これで無理なら諦めもつく。
と、そんな風に思っていました。

そうこうしている内に季節は秋、だんだんと高卒の消防職員採用試験が各地方で始まってきます。
朝霧は東京消防庁、地元である愛知県内、そして他県から合計5か所を受験しました。
(※大体日にちが被っているので、どれだけ調整しても4~5か所くらいが限界です。)

先ほども言った様に、ゴリラでも受かる筆記試験に関しては割愛します。
気になる方は
【高卒 公務員試験 判断推理】
とかで検索してみてください。

知識というよりも、一般的な思考ができるかどうかみたいな問題ばかりです。
真面目に学校の授業を受けてきた人ならば、
「これどうやったら間違えるんすかwwww」
みたいな感情を抱くことと思われます。

というのも、筆記も体力テストも本来落とすための試験ではないんですよね。最低限出来るかどうかを試されているわけですよ。
落ちる方が難しいってもんです。
そんなわけで、朝霧は5か所全て、筆記試験は問題なくクリアできました。


しかし、ここでもう一つの脅威が朝霧を襲うことになります。

これは経験則ですが、筋肉なんて、多少努力すれば割とすぐに手に入れられますよ。ええ。勉強もそうでしょう。やれば出来る。

でも性格、あるいはメンタルは別です。
何故なら、それはそこに至るまでのプロセスが形成するもの。
一時の何かで大きく変わる事は少ないです。
ましてや、その性格を形成する大部分が、トラウマ級の何かが由来するものであればなおさら。

朝霧の陰キャ的な性格の根底には震災があります。
記憶さえないものの、朝霧の全てを変えた未曾有のあれです。

今ならはっきり言えますよ。
どれだけ学生時代が多感な時期といえど、
朝霧のこの性格・メンタル的な問題は、時間以外が解決する事は不可能でした。
その証拠に、今だって完全に矯正されたわけじゃない。

ともかく、次にそんな陰キャ少年朝霧君を襲ったのは、

面接試験でした。

このとき彼は、初めて本物の陽キャに出会ったのです。




【次回予告】


井の中の蛙は、ついに大海へと手を伸ばす。
己の無力を知る日々、次々に届く不合格通知。

絶対絶命の朝霧がとった苦肉の策は、
何の因果か、今のVとしてのスタイルによく似ていた。

それ即ち妄想の具現化、
フリをするのではない。

まるで、元々そうであるように。
最初から、そこに在ったかのように。

苦しくても、怖くても。
自分に言い聞かせろ。

朝霧侑志は陽キャであると。






次回に続く。

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