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【前日譚】陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 【-妄想、或いは夢-01】

元消防士系Vtuber、朝霧侑志の過去、
それは、スレタイみたいな本当の話でした。


陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 通称:オタけし

前日譚:-妄想、或いは夢-01


──これは、太陽に近づき過ぎた少年の物語


※本noteは事実を元に作成されていますが、身バレ防止のため2割ほどフィクションを混ぜています。(主に消防の組織関係)




【自己紹介】

(話が進むにつれて年表が更新されていきます。)

-スペック-

名前:朝霧侑志(あさぎりゆうし)
年齢:28歳
性別:男
属性:陰キャ

-年表-

1994年 5月 誕生



2013年 4月 高校卒業と同時に消防士へ。



2021年 9月 とある事情で退職
2021年10月 Vtuber活動開始




【1.朝霧侑志は隠キャである】


何よりも先に朝霧侑志という人間の生まれについてご説明をする必要があります。

朝霧侑志は1994年兵庫にて誕生しました。
その一年後の1995年静岡の母の実家に引き取られる事になります。

……『1995年』『兵庫』というキーワードでおそらく“伝わる”とは思いますが、
当時生まれていない世代の方もいる事でしょう。一応お話ししておきます。


1995年1月17日、兵庫県南部地震。

皆さんの馴染みのある方で言えば阪神淡路大震災です。
朝霧侑志は、この地震の被災者になります。

とは言え、当時朝霧は生後数ヶ月
物心つく前の話ですので朝霧はこの時の記憶はありません。

なので……、これはあくまでも後から聞いた話ですが、
父の実家は全壊、当時朝霧が住んでいたアパートも半壊したそうです。

朝霧がまだ生まれて間もない事、今後の生活の事等を考慮し、
母と6つ上の姉、そして僕は合わせて母の実家に預けられたと聞いています。
(父は兵庫で仕事を続けていましたが、忙しい合間を縫って、月に一度は必ず様子を見に来てくれていました。)

ともかく、そこから朝霧は少年期を静岡の片田舎で過ごす事となるのですが、
震災でやむを得ず預けられた我々の事を、周りは不憫な子として見ておりました。

周りに山と川しかない田舎ですからね。噂が広まるのは早いものです。

この為、朝霧は物心ついてからも周りに上手く馴染む事が出来ず、消極的な子供に育ちます。
分かりやすい言い方をするのであれば隠キャですね。

思えば、昔から漫画ばかり読んでいましたね……。
父親の影響で姉がジャンプを読んでいて、その影響で自分も早くしてジャンプを読み始めました。
毎週母が買ってきてくれるジャンプを、姉と奪い合うように読んでいた事を覚えています。
(朝霧がとある麦わら帽子を被ったヒーローの事が大好きなのは、ここが始まりだったり。)

そんなふうに、せっかく自然が近くにある場所で生活していたのに、朝霧はほとんど引きこもって暮らしていました。
今思えばもったいない話ですが、当時はこれでも生きる事に精一杯だったんです。

中学からは父の転勤先である愛知に引っ越し、父と母、姉との4人で暮らす事になります。

朝霧は先程申し上げた通り、震災の記憶がありません。
あくまでも写真や映像で見た事が全てですが、それでもあそこまで悲惨な状況を一度経験しながらも、立ち直って立派な家を建ててくれた父を本当に尊敬してます。

ちなみに……あんな一家崩壊みたいな事あれば当然ちゃ当然ですが……両親共に度を超えた過保護です。

(成人後もボケほど過保護だったので、「自由になりたい」と痺れを切らした姉は大学入学と共に家を出ていき、かれこれ10年近く半絶縁状態です。一年に一度連絡があるかないかレベル。現在関西にいるらしいけど詳細は謎です。)

親がそんな感じだと、門限も早いし、同級生とも殆ど遊べないしで、結果的に朝霧はここでも孤立した日々を送る事になります。

ソロプレイヤーです。正にキリトですね。(言うほどキリトか?)

とまぁそんなこんなで、温かくも歪んでしまった家庭環境の中、朝霧侑志という人間は絵に描いたような量産型隠キャオタクとして甘やかされて生きてきたのです。

Googleで『隠キャオタク 最たる例』で検索すると1番上に当時の僕の写真が出てきます。嘘です。

特に夢も無いし、才能も力も無いし、このまま平凡に生きて、平凡に死んでいくんだろうなと、ある種諦めのような思いを抱きながら生活をしていました。

──あの日、2011年の3月11日までは。

と、この辺がこの話を聞く上で最低限知っておいて欲しかった予備知識、前日譚の前日譚です。




【2.朝霧侑志は産声を上げる】


時は流れ2011年3月11日、まだまだ記憶に新しい事ですので語る必要はないかもしれませんが念のため。

東北地方太平洋沖地震、俗に言う東日本大地震が起きた日です。

朝霧はこの時高校一年生で、実際この地震で被害を受けた立場ではありませんでした。

当時、何も分からないまま突然学校を早退させられ、帰宅後に家で見たTVで事態の深刻さを知り衝撃を受けた事を覚えています。

そして当然思い出される、朝霧が幼少期母の実家に引き取られた理由。
実際被災しておらずとも、どこか他人事とは思えない自分がいました。

そんな時です。連日放送される、被災地の映像。
オレンジの服に袖を通した正義の味方の姿。

それは、きっとあの日も僕らを守るために戦ってくれた人の姿と同じで。

朝霧が彼らに魅せられてしまうのに、時間はかかりませんでした。

当時、毎日のように考えていた事があります。
『あの日、もし災害が起きなかったら、自分ははどう生きていたのか?』
いくら考えても答えなんて出るはずがありません。

では、もしもう一度あの災害が起きた時、自分は何が出来るのか?

あの頃は幼く、自分が何を取りこぼしてしまったかも分かりません。
故に当時の事がショックかと問われても正直実感が湧かないと言うのが率直な感想です。
しかしそれでも、どこか一つ足りないような、そんな寂しさは消えないままです。

もう、何も取りこぼしたく無い。
もう、何も失いたく無い。

朝霧侑志という人間は、幼い頃から【何かを助けられる力が欲しい】と、何処か心の奥で渇望していたのだと、今ではそう思います。

初めて、目標という目標が、
生きる理由ができた様な気がしました。

「消防士になりたい。」

きっと朝霧侑志という生命体は、この時初めて産声を上げたのです。




【3.朝霧侑志は前を向く】


夢を持つのは自由です。ええ、持つだけなら。
しかし皆さんお忘れですか?いいや、忘れてはいないでしょう。

そう、朝霧侑志は隠キャなのです。

いわば消防士と対極の存在です。
男の娘女装男子くらい違います。
本来、朝霧様な人間に消防士になる資格などないのでした。

朝霧が消防士になるため、その採用試験の土俵に上がるためには、
否が応でも自分を変える必要がありました。

夢を持って1ヶ月後、4月の上旬。
高校2年生になり、丁度学校で新たなクラス分けがされた頃です。

朝霧は本能で理解しました。

変わるなら今しかない。

と。

臆病な隠キャこと朝霧は、まず友達を作る事から始めたのです。

ちなみにここで朝霧が立てた作戦は超打算的でした。
今でも鮮明に覚えてます。
作戦は
【クラスのティア4〜6くらいの陽キャ寄りの奇数の少人数のグループに声をかける】
でした。

まずクラスのティア1〜3のグループは選択肢から外します。
何故ならアイツらは高確率でガチガチの陽キャだから。
仮に絡んだところで会話についていけません。

そして2人組、もしくは4人以上も選択肢から外す。
こちらも理由は簡単です。奇数だとハブられる。
また、人数が多いと優先順位が低い人間からハブられる(つまり僕)からです。

そんなこんなで選択肢を絞り、白羽の矢が立ったのは
クラスでティア5くらいの3人組の準陽キャ(なんだその言い方)
です。
朝霧は彼らに、震える足をそれでも前に踏み出して声をかけたのです。
思えばあの時が、人生で1番勇気出したかもしれません。

彼は最初こそ急に話しかけてきた僕に驚いていましたが、段々と話す機会も増え、
晴れて数ヶ月経つ頃には、3人組グループ4人組グループになっていました。

生まれて初めて、朝霧侑志に家族以外の居場所ができた瞬間でした。

学校帰りの買い食いとか、カラオケとか、オールでのゲーム大会とか……、

本来普通の人が中学2年生くらいで済ませている様な友達との交流を、
朝霧は高校2年生にして初めて体験しました。
誇張でもなんでもなく、朝霧は彼らから全てを貰いました。
出会い方こそ打算的でしたが、彼らに逢えた事だけが朝霧侑志の誇り。

「自分には何も無いけど、友達にだけは恵まれた」

と。それだけは、胸を張って言えるのです。

高校生にもなると、日常会話に進路の話が出るのもなんら不自然ではありません。
3年生になる少し前の冬だったかと思います。
進路の話題が出た時に朝霧は彼らに伝えました。

「実は自分は消防士になりたい。」

と。

初めてそう伝えた時、彼らはとても驚いた顔をしていましたがすぐに
「かっこいいじゃん!」
「応援するよ」

と声を掛けてくれました。
不思議と背中を強く押された気がしました。
やはり、夢は口に出すと強いのです。

……とは言え、余談ですが彼らは当時の事をこう笑いながらこう言います。

「あの時は本当におかしくなっちゃったかと思ったよ」

それを聞いて、僕も笑うのです。
当然ですよね。ちょっと頑張って無理してる隠キャが急にそんなこと言い出したんですから。

これは高校を卒業してから、初めて4人で集まった時も言われたし、
皆が大学卒業するタイミングで行った国内旅行の時も言われたし、
そして今でも、定期的に集まる酒の席で必ず言われる。
……本当に、かけがえの無い宝物です。
朝霧は陽キャが大っ嫌いですが、彼らだけは別なのです。

……ともかく。

朝霧侑志の妄想、或いは夢を現実にするための戦いは、こうして始まったのでした。




【次回予告】


そんなこんなで最強の武器、友人を手に入れた朝霧侑志、
しかし、待ち受ける現実は非常に過酷なものでした。

いつだってそうです。

この世界は、いつも陰キャには少しだけ厳しい。




次回に続く。

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