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古貸家を掬い、編集する「大利根の貸家」

僕の本業は、建築設計です。
asas 新井+須藤アーキスタジオという設計事務所を営み、
相方と二人組で住宅や店舗、オフィス等の設計を手掛けています。

近作 萩野邸 モノと暮らすお家です。

日々粛々とデザインを追求していますが、
プロセスから成果まで、いろんな事を考え、気づくこともあるので、
これも形にして残して行けたら良いなという試みです。


仕事記はこんな方々のために

というわけで、
今回は、最近工事の始まった「大利根の貸家」の仕事記です。
「空き家問題」「リノベーション」「建築デザイン」
等の話題に興味のある方、
「誰かの何かの仕事を覗き見」したい方にもおすすめです。

文化住宅という、微妙な遺産

「大利根の貸家」は、いわゆる”文化住宅”と呼ばれる、
昭和の高度成長期に多く作られた、平屋の貸家の改修計画です。

現況。ネオ古民家といった風情。同じ形式で複数棟建っていることが多いです。

”古民家”と言われるレベルの建物には、
他では得られない雰囲気があって、その非日常感にファンもつきますが、
こういう”ネオ古民家”くらいの建物は、
昭和の、畳とホコリの匂いを思い出す、
既に乗り越えてきた価値観の生き残りのように思えるのか、
あまりポジティブに捉えてもらえないところがあるようです。

今回依頼を受けたのも、持ち主にとって、
「この建物、どうしたらいいんだろう」
という悩みの種になっていたから。

古さを感じる文化住宅のイメージが強いと、
新しい借手がつきにくいのです。
かといって、取り壊して一から集合住宅を作るにしても、
供給過剰な部分もあるし、
昨今の建設費高騰の中で、差別化を図りつつ採算性を取るのは至難。
そこで、新しい価値を与えるようなリノベーションを施して、
この建物にこれからの役目を与えて欲しいという依頼でした。

僕たちの提案

既存調査に訪れてみると、
市街地からそう離れていないのに、
自然豊かで静かないい場所に建っていました。
それに、各棟南側には大きく庭が取られていて、
借家住まいであっても、
自然を感じて豊かに暮らすイメージが膨らみました。

そこで、僕たちの作った提案がこちらです。

稲荷新田ガーデンハウス リーシング資料
2棟のうち1棟はまだ空きがあります。ぜひお問い合わせください。

細かく割られていた和室の仕切りを解体し、大きな土間をつくる。
奥にはコンパクトな寝室と、書斎にもなる収納空間を配して、
平屋の伸びやかさを最大限に活かした自由を感じられる建物にしよう。
建物自体の古さも、ラフに使っていいんだ、
と親しみを覚えてもらうきっかけに転換すれば、
愛犬やたくさんの植物に囲まれて、静かに豊かに暮らせる場所にできる。

そんな提案です。

さて、この青図が実際にどんな空間になっていくでしょうか。

今日の進捗 解体工事と造作の打ち合わせ

今日は解体工事が少し進んで、
大工さんと、各部の作り方を打ち合わせしてきました。
僕は、大工さんが大好きです。
体を使って建物を作り上げながら、経験を交えて、
最終的な仕上がりの良さを見据えて、話し合いをしてくれます。
幼い頃は、大工さんに憧れていたことを思い出します。
当たり前に暮らしているあなたの家にも、
確かに大工さんが居て、あれこれ悩みながら綺麗に仕上げて、
またどこかへと仕事をしに出かけて行ったのです。

話したことを図面に書き込んでいる大工さん。
和室の床が取り壊されました
現場では、何気なく置かれたモノの配置になぜか心打たれます
解体途中の、複雑な状況も面白い

解体が始まると、いよいよ、リノベーションが始まったなと、
わくわくと緊張感が高まってきます。
いかんせん、一から作るものではないので、
セッションのようにアドリブが求められるので、
面白さと大変さがずっと降り掛かってくるのです。

これからも、写真を交えて、
考えたことを記して行こうと思います。
「大利根の貸家」設計記 第一号
お読み頂き、ありがとうございました。
続きをお楽しみに。

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そこで新たな発見があるのが、何よりの楽しみです。
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