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僕はパイロット(惑星ホス)

『帝国の逆襲』の冒頭で登場する惑星ホス。そこにあるエコー基地で僕たち反乱軍は帝国軍との来たるべき戦いの準備をしていた。僕は反乱軍の象徴であるミレニアムファルコンのパイロットなのだ。

その日、その時間はロッカールームで仲間たちと談笑していた。きっと戦いのことなど忘れてくだらない話をしていた。戦時中であってもくだらないことで笑うのは大事である。むしろ戦時中だからこその大切な時間だ。そこには学生時代の友人やお世話になった先輩もいた。反乱軍のロッカールームは限られたスペースに作られている。一人一人のロッカーなど本当に小さくて窮屈なものだ。限られた資源と予算で戦う反乱軍だから文句など言えない。冬用のコートが2着しか入らないロッカーがひしめき合っている。しかし、こんな狭苦しい場所も戦時下において唯一心が休まり、緊張の糸を緩むことができるのだ。



ドーーーーーーン‼︎

大きな音とともにロッカールームが揺れた。みんなの話し声が止まった。一同が耳を澄ましている。


ドン・ドン・ドーーーーーン‼︎

帝国軍の奇襲だ。基地に鳴り響くアラームより先にロッカールームの整備士や先鋭のパイロットたちは事態を察知し自分の仕事場へ次々に駆けていく。

やばい。僕も早くミレニアムファルコンで出撃せねばならない。僕はロッカールームから戦闘機の待機する飛行場へと通じる細い廊下のような道を走った。男二人がすれ違うのもやっとの廊下はたくさんの混乱した戦士たちでごった返していた。爆発音と叫び声がこだまする。


!!!!!!

その瞬間、僕は自分のポケットを叩いた。反乱軍の軍服にはたくさんのポケットがある。上半身に四つ。ズボンには六つだ。一体これほどのポケットを誰がデザインしたのかは不明だが立ち止まりポケットの中をくまなく調べた。

・・・鍵がない。

ミレニアムファルコンを起動するための鍵がない!!

僕が存在するこのスターウォーズの世界線には車やチャリンコ同様、戦闘機にもが存在する。夢から醒めて考えてみれば当たり前のことだ。鍵がないから映画の中で敵に戦闘機を奪われたりするのだ。僕が生きる夢の世界はセキュリティが映画の中よりも強固だった。だがそれは裏目に出てしまったようだ。

しかし夢だと気づかない僕はロッカールームへと大急ぎで戻っていた。

ドーン!・ドーン!帝国軍の攻撃は鳴り止まない。

部屋に着くと自分のロッカーを開けて掛けてあるコートの中のポケットも調べた。ない。ロッカーの中のものを全て取り出し探す。ない。


「ミレニアムファルコンの鍵知らへん!?!?」

「鍵、見いひんかった?」

僕は見かけた戦士たちに泣きっ面で片っ端から尋ねてまわった。しかしみんな自分のすべきことに必死で相手にしてくれない。


帝国軍のミサイルが止まらない世界で僕は己の無力さに絶望し、そしてゆっくりと夢から覚めた。