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【story】『蓮華が風にゆれていた頃①』


春うららかな夕暮れ時…


いつもみたいに、眠っているような、起きているような、まどろんだ時間を過ごしていた…


そんな時…


コトコト……と、何か物音がした。


閉じていた目をぱちっと開けて見てみると、小さな20センチぐらいの、上下黒い洋服を着た男の子が、私の伸びきっている膝の上あたりに立っていた。


何…この子…お人形なの?…人間なの?…一体どこから来たのかしら?


そんな事を考えていると…その心がわかったのか…


『僕は時空を超えてここに来たんだよ。僕は、行きたいと思った時に、行きたいと思った場所にひとっ飛びで行けるんだ。』


と、自慢げに言った。


だけど…一体この子は誰かしら?


なんだか前に出会った事があるような、なつかしい感じがするけど…。


そんな風に思っていると…彼は、又、答えた。


『僕の名前は、チェンジ・・君とはもうずいぶん長いお付き合いになるよね。』


えっ?…そうなの?


そんな風に驚いていると…またまた…


『そうだよ、忘れちゃったかな?』


と言って、くるんと宙返りをして見せた。


そして、突然…


『じゃあ・・行こう!君の望むところへ!!

タイクツは、もう飽き飽きだろう?』


えっ・・?
そんなの無理だよ!と、慌てていると…それもわかってしまったらしく…


『大丈夫!行きたいところを強く思うとすぐにいけるんだよ!

行きたいと思う心を強くして!』


行きたいと思う心を強くっぅう………う~ん…難しいよう…。


そして、たとえ、強く思ったところで…私には歩ける足がないわ…

と心でつぶやいていると…


『足なんて、この地上をほんの少しお散歩するのに必要なだけ。

本当に行きたい場所へは、心を使って行くんだよ。

さあ!!』


えっと…私の行きたい場所は…どこかな?えっと…

そうだ!一面の蓮華畑がみたい!

ずいぶんと昔に見た景色よ!

ピンクの蓮華たちが、風にゆれて…まるで歌っているようだったわ。


あの夢の中にいるような美しい景色が見れたならどんなにいいでしょう!


そんな風に思っていると…チェンジは…


『じゃあ行こう!僕と手をつないで!』


と言った。


えっ?…手をつなぐ?


そんなの無理よ!私にはつなげる手がないわ。


だって…この手も、この足も…ただ体にくっついているだけで動かせないんだもの。


でも、チェンジは…


『さあ・・手をかして!』


と、言う。


だから、無理なのに…

と、思っていると…

チェンジは…


『手をつなぐっていうのは、僕を信じてくれればいいんだよ。

その、心が・・手と手をつなぎ合わせてくれる。ほらっ!』


えっ!手をつなぐって…

心をつなぎ合わせてくれることだったの?


じゃあ…やってみようかな…


私は、チェンジさんを信じています!


手をつなぎ、私の行きたい場所へ…一緒に行きたいです!!


そう心で思ったとたん…いつも静かにしているだけのベットが急に…


ゴトゴト…

ゴトゴト…

ブーン…

ブーン…

ヒューンというすごい音を立てだした。


その音にびっくりしていると…


すぐに、ベットが…

カーペットから10センチくらいふんわりと浮いた!


そして、出発の時は今か今かと…

エンジン音をさらに大きく立てだした。


(つづく)


【story】『蓮華が風にゆれていた頃②』

【story】『蓮華が風に揺れていた頃③』


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