いのちのうろこ

本

2017年にアートワークを担当したQooSue10周年アルバム「いのちのうろこ」をキッカケに絵に出てきたキャラクター、通称「もりお」と「たま」に、当時吉岡が書いた物語に改めて五…

#物語

そんなことを考えながらふと前に広がる大きなスイを見ると、夜の目に照らされたスイの表面はキラキラと輝いています。
今、手の中にあるものよりもずっと弱々しいし、常にぬらぬらと蠢いていましたが、その一瞬に見せる輝きは似ていました。

ゆっくりと遠くを見ていくと、夜の目もスイの表面にうつっています。

スイのすぐ上には本物の夜の目があります。今日は、何を考えているかわからない、まんまるの形でした。

おや？

もう一度スイにうつる夜の目を見ます。

こちらのスイは黒い点があります。
他の光のように、スイの蠢きでそう見えるだけかと思いましたが、じっと見つめていてもそこだけは動かずずっと黒いままでした。

手の中の光を見ると、さっきよりずっと光っています。
光りすぎてぼろぼろになっていくように感じました。

いけない。

体を起こし、急いで光をスイの中へ滑り込ませました。

光はスイに導かれ、真っ直ぐに黒い点へ進みます。周りの弱々しい光はまるで邪魔をしないように引き下がっていきます。

やがて、光はぴったりと黒い点に重なりました。

すると、スイに写っていた夜の目がギョロリと色を変え、ウツホを見上げました。

ひろいひろいスイの全部がいっぺんに盛り上がっていき、美しいウロコの大きなサカナが現れ、

一度こちらを見るとゆったりと体を揺らしながら、幾億ものサラサラとした鈴の音を従えて夜の目へと還っていきました。

手をはなさなければ、いっしょに行けたのかな。

了