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エア・ひとり旅

じつをいうと、わたしは旅行をするのが得意ではない。それは準備にとても時間がかかる、変に心配性で荷物が重くなる、枕が変わると眠れない、団体行動が苦手など、ジコチュウなどうしようもない理由からだ。家族だとまだ理解してくれるところもあるのでいいけれど、他ではそうもいかない。ひとりで勝手に気を遣い、ひとりで勝手に疲れてしまうのである。気を遣うのであればひとりで行けばいいじゃん、と言われそうだけど、そういう問題でもない。もろもろの面倒を超えてまで旅先に行き、何かを吸収したい!という情熱や欲が今のところないのである。


なので世は月に行く時代だというのに、海外旅行にも一度も行ったことがない。でも行きたいなあ、と思う国はたくさんある。


こんなとき、気持ちを満たしてくれるのが旅のエッセイ本だ。わたしは旅の本、特にエッセイ本が好きだ。本を開くだけで行きたい国に行く、という夢を叶えてくれる。その人目線で見聞きした、異国のことを知るのはとても面白い。旅に出るまでのエピソードや機内食、買ったお土産の話なんかも興味深くて、ページをめくるたびにわくわくする。


最近はこの本を読んだ。


本屋さんで手にとったとき、『美味しいものを見に行くツアー』に見えて、なんで美味しいものを食べずに見に行くんだろう?と思ったら「美しいもの」だった。(美味しそうなものも出てきます)


益田ミリさんのゆるいイラストと文章が導いてくれる、ツアー旅の数々。オーロラ、クリスマスマーケット、モンサンミッシェル、プリンスエドワード島など、「美しい」と思うものは、人によって違うと思うけれど、この本の旅に書かれているものは、間違いなく誰が見ても美しいものだと思う。

ひとり旅はもっと気楽なものだと思っていたけれど、ツアーとなるとやっぱりそうでもないらしい。その細かな駆け引きのバトルがちょっと面白かった。

北欧と台湾には1度行けたらいいなあ、と思っていたけれど、ドイツのクリスマスマーケットも良いなあ、と思った。現地であたたかいグリューワインを飲んで、飲んだマグカップをお持ち帰りしたい。クリスマスマーケットのマグカップとか絶対かわいいに決まってる。


本を読んだだけで行った気になれるなんて、我ながら得な性分だなあと思っていたけれど、やっぱり実際に行きたくなってきた。


初めて海外旅行に行くなら、台湾がおすすめ!と、周りの人が口をそろえて言うので、台湾で『千と千尋の神隠し』の舞台とも言われるクフンに行き、小籠包を食べ、パイナップルケーキをお土産に買って帰る、というのが面倒くさがりなわたしのささやかなミッションになった。

そんな自由な時代が、また早く来るといいなあ。

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