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リプレイ佐賀公演(初日)の覚え書き

千秋楽を明日に控えて、とても今さらなんだけど、リプレイ佐賀公演を現地で見た感想をまとめておこうと思う。


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佐賀初日、直前の先着でなんとか手に入れたS席。「テレビやライビュで見るのと現地では、全然違うものだなぁ」と、そんな当たり前のことをしみじみ感じる。薄暗い照明の中で存在感を放つリンク、ひんやりとした空気、そして期待に満ちたざわめき。昔は「テレビ前アリーナで十分、満足」と思っていたけれど。やっぱり会場の空気感というのは、そこでしか味わえない。

佐賀アリーナの4階席は傾斜が急で怖かったし、通路も狭いので移動が大変。でもそのぶんリンクが近く感じられた気がする。静岡エコパでも似たような席位置になったことがあるのだけれど、その時よりも大きく見えたような?

それから今回スタンド席で良かったことは、プロジェクションマッピングの演出の美しさが最大限に感じられたこと。特に"いつか終わる夢"は、1部2部それぞれになんとも美しく幻想的に感じられて。思わず感嘆のため息が出てくるような演出で。

プロローグ横浜の時は、このプログラムをアリーナ席から眺めていて。その時だってとても優雅で、まるで祈りのようにも感じられる神秘性のあるプログラムに感じられたものだけれど…俯瞰の視点で眺めると、まったく別の良さがある。何回見ても、どこから見ても、素晴らしいとしか言えない素敵プロ!

ひとつ不思議だったのが、後半のいつ夢はスタンド席から見てるにも関わらず、なぜかプロローグ横浜でアリーナ席から見た時と同じ印象を受けたこと。祈り捧げる、そういう前半とは違うイメージを受け取った。

あとこのプロで目を惹きつけられたのが、衣装のキラキラということも書いておきたい。ライトが当たるたびにスパンコールが煌めいて、演出と共に光のさざめきのように感じられて、最高に綺麗で。プロジェクションマッピングと合わせて、とにかくひたすらに美しかった…眼福とはこのことか、という感じ。

うっとりと引き込まれたのがいつ夢ならば、テンション上がりまくったのは"MEGALOVANIA"。
これが1番、初見の時とは印象が変わったと思う。ライビュでさいたま公演を見た時には「エッジ音を響かせる演出が素敵だな」とか、「スピン中心のプロだ!わお斬新!かっこいい!」という、予備知識0での単純な感想だったけれど。UNDERTALEファンの感想を読んで、まだ途中までだけれど自分でも実際にSWITCHを買ってプレイしてみて、そうして目にする"MEGALOVANIA"はアツさが違った!!かっこいい!!サンズ!!!

そして1部最後の"破滅への使者"、本当にすごかった。密着ドキュメンタリーで、これがどれだけしんどい限界スレスレの行為かをまざまざと見せつけられたのもあって。まるで試合かのように、とにかくハラハラしながら見守ってしまう。羽生くんがプロに転向した時に語ってた通りの、まさに試合のような緊張感のあるショーで。んまー、この有言実行っぷり!!

特にこの佐賀初日は4回転が決まらないばかりか、羽生くんならばほぼ鉄板と思ってる3Aで抜け?転倒?があって。ジャンプの成功率がいつになく低めだったのもあって、「大丈夫か?大丈夫?酸素足りてる!?」と、それはもうハラハラしながら見入ってた。プロ転向後にもこんなにもドキドキとジャンプを見守る機会があるだなんて、さすがジェットコースター羽生結弦号。

振り返ってみるとプロ転向後にやったショーの中でも、1番ジャンプが決まらなかったのがこの日だった気がする。でもそんな限界ギリギリの中でなお闘志を燃やす姿が、チラ見したスクリーンで目にしたら、それはもうめちゃくちゃ格好良くて。「うっわよく見たい、めっちゃしっかりスクリーン見たい!」ってなった、でも同時に「アップで見たいのに、ご本人から目が離せなくて、スクリーンまでは見られない!!」ってなったので。来月にあるという佐賀初日の放送が、今から楽しみ。


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さて続いては2部。初回に見た時からこの2部がもう、大好きで。特に絶対にいつか生で見たかった"天と地のレクイエム"を演じる、とあっては胸が高鳴るばかり。冒頭の、繰り返されるいつ夢からもう最高。「リプレイを今すぐリプレイしたい 」でも書いたけど、「羽生結弦大天才よね!!」ってなる演出。

そしてお待ちかねのレクイエムは、過去にエキシビションで滑っていた時とは受ける印象が違っていて驚いた。それどころか同じリプレイの演技でも、ライビュやCSの画面越しに見るのとはまた別の感覚で。これは現地で見ることができて本当に良かったと、心から思う。

祈りと共に慟哭と悲嘆までもが響いてくるような、天と地のレクイエムというプロを。ランタンの演出が、あたたかなものへと生まれ変わらせていた。空中に浮かぶランタンの照明が、まるで2部では喰らうことを選ばなかった、スクリーンで流されていたひとつひとつの命のように見える。

そして俯瞰の視点から見た羽生くんは、そのあたたかなやさしい光に照らされ、そっと見守られているようで。空っぽの器を、ゆっくりとやわらかな光が満たしていくように思えて。まさかこんなやさしくてあたたかなレクイエムを見るとは想像もしていなくて、思わず泣いてしまった。けど涙で演技が滲まないよう、必死で耐えた。

「あなたは1人ではないよ」、という視線に見守られているような、あの温かみのある光が上からそっと照らしている演出、いま思い返してみても、すごく好きだなぁ。

嘆きの渦中にいる、本人には認識できない視点かもしれない。その時どころか、自らの足で立ち上がったその後ですら、気づくことはないかもしれない。それでもあなたを温かく見守る者はたしかにそこにいた…という、なんというか、ある種の救いのように見えて。これまで"人"の視点で見ていた天と地のレクイエムというプログラムを、もっとずっと、より高い俯瞰の視点から見ているような気持ちになった。

印象の違いというならば、"あの夏へ…"も。GIFTで見た時には「祈りと巫覡の舞だ」と感じたのが、また何か違うものになっていた。映し出されるプロジェクションマッピングは、まるで水の中で泳いでいるかのような幻想的な演出で。羽生くんが演じるキャラクターが水と一体となり、そして川、海、雨、と巡っていく中で。慈雨、恵みの雨、そういったものに触れることにより何かを悟っていく…そんな風に見えたし。

そして2部最後のプログラム"春よ来い"、これがまた素晴らしかった。
プロローグでもGIFTでも生で見てきたプロだけど、その時ともさいたま公演をライビュで見た時とも、受ける印象が違った。自分はこのプログラムは「まるで冬から春へと季節が変わるように、苦しみや悲しみを抜けた先にある希望を感じさせるプロ」だと思ってたんだけど…この日に見た春よ来いは、希望ではなく「祈り」そのものだった。

これは演出の光の色や印象がよくわかるスタンド席から見た影響も、大きいのかもしれない。中盤の色味を感じさせない暗く青みのある照明が、後半のサビの部分でぶわっと白から桜色の照明に切り替わって、リンクには一気に桜の花が咲き乱れて。その光景を目にした瞬間に「ああ、祈りが花開く瞬間を見た…これまでの祈りがいま花開いた…」という閃きにも似た考えが過ぎって。同時に会場の気配までが、その届いた祈りによって一気に浄化されたように感じられて。なんだか自然と涙が出てきてしまって。

これまでも春ちゃんでの締めは何度も見てきたはずなのに、それまでとはまったく違う体験で。今でもあの瞬間の気持ちを思い出すと泣けてくるような、まるで魔法にでも掛けられたような一瞬だった。

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何度も放送を見てきたのにも関わらず、新たな感想や感動が沢山生まれたこのショーもいよいよラストの3部、アンコールタイムへ。ここまでの演技も、もちろん素晴らしくて最高なんだけど、実はこのアンコールタイムが1番好きかもしれない。なぜなら、めちゃくちゃ楽しいから!

大好きなレミエンで大盛り上がりして、代表作のSEIMEIに、麗しのロンカプ。そして幸せそうな、やることをやり遂げてふんにゃりした羽生くんを見てるのが、何より嬉しい気持ちになるし。自分の気持ちを一生懸命に言語化して伝えてくれる、その誠実さも。「よいしょ」が止まらない、かわいらしさも。"わたしは最強"に合わせて、気持ちと音楽が一体となったように滑る姿も大好きで。「羽生結弦」というそれ以外には、何の役も降ろしていないその姿に、演技中とは違う形で胸を打たれる。

特に今回の公演で語ってくれた、「自分を削ってまで頑張ること、生命を削って滑ること」については心に響いた。
自分も彼のスケートに対するひたむきさには、尊敬と憧れと共に、時に不安になることもあった。もっと強欲にだって怠惰にだってなっていいし、もっと自分を甘やかしてもいいし、ひとりの人として幸せになってもいい、そんな風に思うこともあった。
でもそうすることが、彼のやりたいことなのだと、自分の言葉で話してくれて。「ああ本当にこの人は、アスリートでありアーティストであり…そうか、あなたがそうしたいのか。なら、いつもいつだって応援するよ!」という気持ちで、胸がいっぱいに。

演技の素晴らしさとはまた別に、自分にとっての羽生結弦という人は。その生き様を尊敬していて、自分もそのようにありたくて、でもなれないのもわかっていて。それでも、そうある為の一歩を踏み出すのは、その先で輝くあなたがいるからで。あなたが輝いているから、わたしもまた亀の歩みであろうと、止まることなく光を目指して「そのようにあれたら」と歩み続けられる…という存在に近い。

こういう人だからこそ、応援せずにはいられないし、幸せを祈らずにはいられないんだろうな。安価なチケットではないし、自分の居住地域からはまず間違いなく遠征になるし、そもそもチケットを手に入れるハードルが高すぎるという嘆きもあるけれど…それでもなお出来る限り現地に足を運んで、応援したくなる。そして、その為に自分自身もがんばろうってなる。

明日のリプレイ千秋楽はライビュ観戦だけれど、次の仙台ノッテステラータは現地観戦。願わくはこれからも、できる範囲で現地での応援を続けられますように…(その為にも、がんばれ自分)

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