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大雨についての覚え書き

先週末、七夕の前日に大雨が降った。
広島県内のあちこちに避難指示が出て、全国ネットで地元の被害が報道されていた。

幸いにして広島市内でも被害のない、雨量の少なかった地域にいるおかげで。夜になるまでスマホから緊急速報が鳴ることもなく、テレビをつける習慣もないために…予想よりずっと被害が大きいことに気づいたのは、雨が降り始めてだいぶ経ってからだった。

その土日はちょうど、友達家族と一緒に瀬戸内の島へドライブ旅行の予定で。この春に出来たばかりの一棟貸しのおしゃれな宿に泊まって、友達夫妻の結婚記念日と少し前に終わった自分の誕生日を祝って美味しいコース料理を食べることになっていたから。友達家族と一緒にという珍しい機会に、普段はしない"宿を楽しむ"という特別感に浮かれていたから。

数十年に一度の異常気象という言葉は聞き流して。高速道路が通行止めになっていたら、旅行が取りやめになってしまう…ということばかりを気にして。事態の深刻さが響いてきたのは、かなり後になってからだ。

当日の朝になり、前の晩からわかりきっていたことだけれど…当然ながら旅行のキャンセルが確定した。高速が通行止めなのだから仕方が無いことだと思いつつ、ひどくがっかりしながら一日家の中で過ごした。その間にテレビやネットの報道を追うことで…やっと旅行どころではないということを理解した。

行けなくてがっかりどころか。行ってからのことでなくて良かったと、むしろタイミングに感謝した。広島市から東側は土砂や崩落などであちこちが通行止めで。もしも雨が1日ずれて旅行に出てしまっていたならば、下道も高速も数日通行止めの状態で帰宅難民になっていただろう。まだ小さな友達の子供も一緒なのだから、悲しむよりも巻き込まれなかったことを幸いと喜ぶべきだった。

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ニュースを見て、呉市にある実家が心配になり父に連絡をすると「何も問題は無い」と暢気な声で言われたので安心していたら。一時全ての陸路が使えなくなっており、全く大丈夫そうではなかった。

今は迂回路や下道の31号線が復旧しているけれど、主力のJR呉線とクレアラインの呉~坂間は未だに通行止めのままだ。呉線にいたっては復旧の見通しは1ヶ月以上と発表されている。クレアラインは道路の一部がごそっと無くなっていたので、これも短期間での復旧は難しいのかもしれない。来月にある母の3回忌もクレアラインが通れなければ、渋滞する下道を避けてフェリーでの帰省になるだろう。

いつでも帰れる、と思っていた実家が急に遠くなった様に感じられた。

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身の回りや街中は、普段通りの表情をしていて。一部の食料品が少ない以外には、あまりにもいつも通り…しかし皆が皆そうではない。

暢気な声を出し、ニュースで見た断水の心配をする娘に「ガセネタでは?」と言い放った父も。週明けには呉から広島までの30kmを自転車で移動したらしい。(ロードやクロスではない、普通のママチャリで…)また父方の実家ではイチョウの木が倒れ、これの撤去もしなければならない。

友人の住む地域、学生時代に毎日のように眺めた線路沿いの風景…それらがテレビで報道され、土砂に埋まっていている。同じ地域に暮らしているのに、自分があまりにも日常通りの日々を過ごしていることがなんだか少しいたたまれない。

そんな時に、人は寄付をするのだと思う。

それは何も出来ないからこその、僅かばかりの気持ちを込めた罪滅ぼしで。寄付をしたり、現地の支援になるような買い物をしたり…労働力や物資のような直接受け取ってもらえるものが、提供できなくとも。何かしらの形として現地へ届きますように…という己の無力さへの嘆きと他者への思いやりが形になったもので。

自分にとっての寄付とは、そういう心の有り様だ。

だから今回も、自分の心を軽くするために。出来る範囲で、出来るだけのことしかしていないけれど…気持ちばかりの寄付をした。やらない善よりやる偽善、そういうものだと信じて。

できるだけ速やかに、被災地域の方々が日常に戻れますように…



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