「グラビアアイドル」という名の独断と偏見
「もうグラビアやるの、やめてほしい」
23年間、自由奔放に行動してきた私。それを心配しつつ、どんな道を選んでも応援してくれた母親からの一言。
スマホ越しの電話の声は、今まで聴いたことのないくらい低いトーンで、ゆっくりと、静かに耳の鼓膜にこだました。
「...わかった、もうやめる。」
決して、「迷い」や「後悔」が無かった訳ではない。一度始めたことを、まだ何も成し遂げないまま投げ捨てることはきっと私の中のプライドは許さないだろう。
生きてるうちにやってみたかった「芸能」という業界に右足を入れたのだから、せめて右肩くらいまでは埋めてみたかった。
尊敬する「杉原杏璃」さんや、「馬場ふみか」ちゃん、それに「壇蜜」さんのような色気があって多才な女性に。少しでも近づきたかった。
「グラビアアイドル」の売れ方に多様性を持たせ、諦めるしかなかった女の子達に新しい道筋を作る希望を灯したかった。
世の中の「偏見」とか、「多数派主義」とかを変える絶好のチャンスだとも思った。
数え切れないくらいの「~したかった」が残ることは、今この文章を書いてる中でも有に理解できる。
たった4ヶ月。
たった4ヶ月、日の目もくれず細々とした活動だったけれど、自分の身をもって分かったことがある。
グラビアアイドルだって立派な仕事だ。
泥臭い努力だってある。自分という商品を売り込む営業であり、宣伝広告業であり、接客業だ。
撮影会、DVDの撮影、エキストラ、SNSの発信、ブログ、体のメンテナンス...。ギャラなんて決していいわけじゃない。
それなのに「楽に稼げる仕事」と勘違いしてる人は多い。特に地方では。身近に無いことは、理解し難いのだと思う。きっと。
母親は今にも消えそうな声で小さく呟いた。
「周りの人が、心配してくれてるのよ」
言葉の槍が、心に容赦なく刺さる。
「周りの人」が誰なのかはわからない。幼い頃に可愛がってくれた親戚かもしれないし、同じ地域に住む道端で挨拶したことがある人かもしれない。もしかしたら一度も面識は無いけど、たまたまネットで流れてきて知ったのかもしれない。
昔から田舎特有の窮屈な環境が息苦しかった。どこの誰かも知らない人の「ドコドコの○○さんはこうらしいよ」っていう噂話に嫌気が差していた。
そんなの「誰かの人生にいちいち口を出すほど、私の人生はつまらないです」って公言してるようなものなのに。
見知らぬ誰かからの批判なんていうのは、正直どうでもいい。そんな人のために自分の有限で大切な時間を消費してしまうなんて勿体なすぎる。そう思って秋田を出て「くだらない噂話」から逃げ込むように東京都に来たはずだった。
もう大丈夫、自由だ。
そう思ってしまった私も安易な人間だったのかもしれない。
どこの誰かもわからない人からの「親切の押し売り」を私の代わりに親がうけていた。その事だけがどうしても嫌で仕方がなかった。
だから、事務所をやめる決意をした。
5月1日を持って、私は無所属のグラビアアイドルになったのだ。
この先のことは分からない。
もしかしたらまた、どこかの事務所に入るかもしれないしこのままフリーグラドルとして活動していくかもしれない。露出を辞めてしまう可能性だってある。
でも、どんな形であれグラビアアイドルという肩書きは捨てきれない。
「グラビアアイドル」の定義を知りたくて昔調べたことがあった。
グラビアアイドル(和製英語: gravure idol)とは、日本発祥の、女性モデルの一形態であり、雑誌モデルの一形態ともいえる。男性向けのセクシーなアイドル的アプローチを特徴として雑誌を主体とするメディア上で活動する女性アイドルがこれに該当する。グラドルとも略称される。重複しながら似て非なるものにレースクイーンがある
「アイドル」の定義
アイドルとは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を意味する英語(idol)に由来し[1]、文化に応じて様々に定義される語である。
日本の芸能界における「アイドル」とは、成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物を指す[2]。
キャラクター性を全面に打ち出し、歌・ダンス・演技・お笑いなど幅広いジャンルで活動を展開しやすいのが特色である。[2]
一方で、はっきりと目には見えない“華”や“人間的魅力”が強く求められる。
つまり、男性が見て「セクシー」だと感じる特徴をもち雑誌を主体とするメディア上の存在そのものの魅力で活躍する女性のことを「グラビアアイドル」という、らしい。
それってつまり水着を着てなくても、着エロじゃなくても、肌の露出が少なかったとしても男性が見て「セクシー」と思ったり「色気」を感じてその人自体の存在に魅了されたら「グラビアアイドル」なのだ。
こじつけかもしれない。逃げてると言われたらそれまでかもしれない。だけどもっと寛大で多様な世界でいいと思う。
誰かが貴女をセクシーだと思って好意を持ってくれたら、それはもう貴女はその人にとっての「グラビアアイドル」なのかもしれないな。
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