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#1 私を産んだとき、どうだった?

私:私を産んだときのはなしを聞きたいな。

母:レトロで素敵な個人病院で出産したよ。生まれてすぐに母子同室のところだった。はじめての出産と育児だったから、なんで泣くのかもわからないくらい無知で、あなたと一緒に泣いてたよ。

私:そうだよね。はじめて母親になったんだもんね。

母:でも、濃密な親子関係を築いたと思う。没頭して子育てしてたよ。

私:それはうれしい!当時の自分はどんな人間だった?

母:自分を知らないまま生きていたかな。いまになって、やっと気づいたことだけど。

私:自分を知らないままってどういうこと?

母:自分で決断しているつもりで、人の意見を鵜呑みにしたり、親が喜ぶような選択をしたり。

私:たとえばどんなこと?

母:大学生の頃に旅が好きで旅行会社で働こうと思ってたんだけど、当時親しかった人に「自分が1番好きなものは仕事にしない方がいい」と言われて、旅行会社へのエントリーをやめたんだよね。それで、大学のゼミの先生に紹介された会社に就職したの。

私:人の意見で就職先を決めていった感じだ。

母:そう。あとは、親から「結婚することがしあわせ」と言われ続けて、そういうものだと思っていたし、プロポーズを断るという選択肢があると思っていなかった。

私:結婚することだけがしあわせじゃないよね。

母:うん。結婚してからも、家を建てる過程でいざこざがあったり、義実家の集まりが苦手だったり、うまくいかないことが続いてたかな。就職した会社で資格を取らせてもらったこともあって、出産後は職場復帰しようと思ってたんだけど、それをお父さんに止められたりしたよ。

私:きついね…。

母:どこがきついと思った?

私:自分で選択できないところ。でも当時は、当たり前だったんだよね。

母:そうだね。

私:いまは私に「自分のしたいように選択していいんだよ」って言ってくれるよね。

母:そうね。でも、25歳であなたを産んで、30歳くらいまでは自分で選択しているつもりでも人に左右されていたから、あなたにも影響があったんじゃないかな。

私:影響はあったと思う。相手の様子を過度に気にしちゃうとか、相手の許可が必要だと思ってるとか。あとは、他者と自分の境界線がわからなくなることが多い。だから意識的に自分の意思を確認してから選択するようにしてる。思考を挟まず自然に選択できる大人になれたら、もうちょっと楽だったかな。

母:お互いに自分の選択を守れるようになってよかったよね。


#2 へつづく。

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