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まるでおろし金な地形:秋田県中北東部高山間地域【地元再発見の小旅行vol.30】

久しぶりの都道府県シリーズ。何とか年内に復活しました!
2週目トップバッターである秋田県の過去記事はコチラ↓

場所の再確認

秋田県は下図の赤色です。

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周辺都道府県01

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

地形区分

中北東部高山地域は上図の⑨地域!

0409_⑨地域範囲市町村

⑨地域は鹿角市・北秋田市・仙北市の一部地域です。


地形を見る

ではさっそく行ってみましょう!

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真ん中やや西が森吉山(もりよしざん)、東のなだらかな山が八幡平(はちまんたい)です。
下の国土地理院地形図と見比べてみてください。

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森吉山の東西を国道がとおっていて、東の国道341号線沿いに名湯として名高い玉川温泉があります。
この西の地域に気になる地形があるんです。

040901_森吉山焼山

西の赤丸が森吉山、東の赤丸が秋田焼山(やけやま)です。この秋田焼山の西の麓に玉川温泉があります。
この両赤丸に挟まれた地域をズームしてみましょう。

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なんだか凄く細かいギザギザの地形になってますよね。
南東の山地と比べて大違いです。

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さらに拡大!すごくないですか?

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このギザギザな感じ、どこかで見たことあると思ったら、「おろし金」でした(;^_^A 見えませんか?(笑)

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だいぶ拡大しました。
こうやって見ると、谷地形なんですね。しかも東~東北東方向に開けた谷地形が並んでいて、それがおろし金のようなギザギザに見えてるようです。

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東の地形と比べると、ほんと全然違いますよね。

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全然違う!


なぜ?

やはり、地質が違うのでしょうね。

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でも、地質図を見てビックリ。
さっきから「全然違う」と言っていた山地と同じ・・。
第四紀更新世カラブリアン期(約180万~77万年前)火砕流堆積物でした。

でも5万分の1地質図福「森吉山」の説明書を読んで納得しました。
この火砕流堆積物の大部分は溶結凝灰岩・・つまり、ガッチガチに硬いのですが、場所によっては溶結していないものもあるようです。
また風化が進むとボロボロになるとのことなので、あのおろし金のような地形は、溶結していないか、風化が進んでいるのだと考えられます。


「おろし金地形」ができるまで

もちろん、現地で調査したわけではないので、あくまで私の仮説ですが。

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この図を見ると、南北方向に沢があって、その西岸に細かく谷が発達していますよね。

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国土地理院地形図だと、沢が青線で図示してあるのでわかりやすいと思います。上の図と見比べてみましょう。

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同じ図をもう1度出してみました。
この細かい谷地形は、昔崩れた跡だと考えられます。
この地域一帯を見てみると、東向き斜面が急傾斜で、西向き斜面が緩やかな場合が多いようです。
おそらく、火砕流堆積物の地層は西に傾斜しているのでしょう。

急な東向き斜面は大雨の時に崩れ、その崩れた跡を水が流れやすくなり、谷地形になったと考えられます。
なお火砕流堆積物は火山岩の岩塊(数10cm~数m)と火山灰でできているので、ある時、岩塊がポロッと抜け落ち、そのヘッコミに集中的に水が集まって侵食され、谷地形になったのかもしれません。

ちなみに、この周辺には他にも面白い地形を見つけましたので、年明けにそれらを紹介したいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。


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参考文献

大沢 穠・角 清愛(1957)5萬分の1地質図幅說明書 森吉山.,地質調査所,41p.

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