山の方向で故郷を感じよう【都道府県シリーズ第2周:福岡県 上毛町編no.1-3】
都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」。
2周目の第5弾は「福岡県」です。
そして今回は福岡県の中からさらに絞り込み、上毛町(こうげまち)にスポットを当てています。
前回記事はコチラ👇
今度は山を見てみよう
前回は主に平坦地に着目しました。
今度は山地に注目しましょう。
町の約3分の2が山間地域です。
特に中央部(上毛町と書いているあたり)より南は山深い雰囲気になっています。
山深いと言っても町境の山頂部で600m程程度ですので、割と近くまで民家が見られます。
地元の人たちにとって身近な山でしょうね。
今度は地形図だけにして見てみましょう。
何か気づきませんか?
尾根や谷が概ね一定の方向に伸びているように見えませんか?
多少のズレはありますが、赤点線のように、概ね北東-南西方向に尾根や谷が伸びています。
また青点線のように北北東-南南西方向の尾根・谷も見られます。
上毛町の北西隣の地域(豊前市)も似たような雰囲気ですよね。
山の方向の原因は?
山(尾根)や谷の方向は、なぜ上記のように一定方向になっているのでしょうか?
それはおそらく地質が原因です。
特に山や谷が一定方向に伸びている場合は、層理面や節理面が関係していると考えられます。
層理面(そうりめん)とは、地層の境界面のことです。
例えば、浅い海では砂と泥が交互に堆積し、砂泥互層(さでいごそう)あるいは砂岩泥岩互層と呼ばれますが、このときの砂と泥の境目が層理面です。
岩石になると層理面に沿って割れやすいという特徴があります。
節理面(せつりめん)とは、あらゆる地層や岩石に生じる「割れ目」のことで、断層と違って明確な「ズレ」が無いもののことです。
節理面ができる原因は色々ありますが、代表的なものは以下の2つです。
では、この地域の地質はどんな地質でしょうか?
地質図を見ると、山間地域の大部分が黄色ですね。
これは新第三期中新世後期(約1000万~533万年前)の安山岩質火山砕屑岩類です。
文献(英彦山団研グループ,1984)によると、この地質は英彦山(ひこさん)火山岩類と呼ばれ、約500万年前に噴火した溶岩です。
大きく分けて3枚の溶岩で構成され、それぞれ概ね水平方向に重なっています。
つまり溶岩と溶岩の境界面(層理面)がほぼ水平ということです。
層理面が傾いている場合は、差別侵食によって層理面の方向に影響された地形ができやすいのですが、水平の場合はあまり影響はありません。
(※例えば北に20度傾いている地層の場合、北向き斜面は緩く、南向き斜面が急斜面になり、両斜面の境界の尾根筋が東西方向に発達することになります)
とすると、山の方向は節理の影響で決まっていそうです。
溶岩なので柱状節理はあるでしょうが、一般的に柱状節理は数10cm間隔なので、広域的な地形には影響しにくいと思います。
ですので、山や谷の方向は「広域的な応力」が原因でできた節理面が原因になっていると考えられます。
山の方向で故郷を感じよう
山はランドマークとして、地域の人々から親しまれていると思います。
あなたの身近な山を思い浮かべてみてください。
それら山が多い方角や山が伸びている方向をイメージできませんか?
私の場合は宮城県仙台市在住ですので、西の方に南北方向に伸びている山々をイメージできます。
東北地方は太平洋側と日本海側の間に奥羽山脈がありますので、主な山は南北方向なのです。
上毛町にお住いの方々は「南の方角に山があって、山地は北東ー南西方向に伸びている」とイメージするだろうと思います。
みなさんも是非、山の方向をイメージして、「地元ならではの特徴」を地形図で確認してみてはいかがでしょうか?
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
英彦山団研グループ(1984)九州北部,英彦山地域の後期新生代火山層序および地質構造.地質学論集,第24号,pp.56~79.
石塚吉浩・尾崎正紀・星住英夫・松浦浩久・宮崎一博・名和一成・実松健造・駒揮正夫(2009) 20万分の1地質図幅「中津」、産総研地質調査総合センター.
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