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世界に1つだけの土地【都道府県シリーズ第2周:福岡県 上毛町編no.1-2】

都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」。
2周目の第5弾は「福岡県」です。

今回からは、さらに「市町村」まで絞って、ローカルな地形&地質を見ていきます。

ルーレットで決まった市町村は「上毛(こうげ)町」でした。


綺麗な扇状地

上毛町とその周辺の地形を見てみると、まっさきに目につくのが「扇状地」です。

上毛町周辺の地形図:スーパー地形より抜粋

上の図の真ん中あたりに大きな扇状地が1つ見られます。
そして、その東にも2つ。

上毛町周辺の扇状地:スーパー地形画像に筆者一部加筆

ザッと区分するとこんな感じです。

高さや侵食され具合から、赤点線と緑点線の扇状地が少し時代が古く、青点線が新しい扇状地に見えます。
実際、地質図を見ると堆積した時代が違っており・・

赤&緑:第四紀更新世後期(約13万年~1万年前)の段丘堆積物。
青:新生代第四紀完新世(約1万年前~現在)の河川堆積物。

となっています。
地形図を良く見ると、赤と緑が青に侵食されているのが分かりますよね。
少なくとも、そこに気付けば「青が1番新しい」と見抜くことができます。

そして、これらの扇状地が、この地域の平坦地を形成しており、人間にとっても重要な土地となっています。

上毛町の平坦地

では上毛町に属する平坦地がどの範囲か?
市町村境を入れた図を見てみましょう。

上毛町の地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

さきほど区分した扇状地のうち、赤点線の東端と、青点線の中流部が上毛町に属しています。
こうして見ると、西と東の平坦地には段差があり、また河川も違うので、明らかに「異なる土地」として見分けられます。

しかし、実はよ~く見ると、西の平坦地はさらに2つの土地に分けられます。

上毛町の主な河川:スーパー地形画像に筆者一部加筆

河川を基準にして見ると、少し分かりやすくなります。
赤色の佐井川は主に西隣の豊前市(ぶぜんし)を流れており、上図の赤点線の扇状地の土砂を運んだメインの河川です。

しかしこの扇状地の東部は、多少小さいとは言え、2つの河川が流れています。
そのため、実は赤点線扇状地は1つの扇状地ではなく、東部は緑線の黒川と青線の友枝川の影響を受けて形成された別の扇状地でした。

上毛町の主な河川②:スーパー地形画像に筆者一部加筆

拡大すると良く分かるのですが、黒点線のように段差ができており、赤点線扇状地が黒川に侵食されているのが分かります。

つまり、この地域の平坦地は大きく2つに分けられます。

①:佐井川と黒川に挟まれた区域
佐井川(赤)が運んだ土砂を主体とし、東部は黒川(緑)に侵食されている。

②:黒川と友枝川に挟まれた区域
友枝川(青)と黒川(緑)が運んだ土砂を主体(友枝川の方がやや多い)とする。

3つの平坦地

以上のことから、上毛町の平坦地は大きく3つに区別できます。

上毛町の3つの平坦地:スーパー地形画像に筆者一部加筆

そしてそれぞれ、概ねの標高も違います。

①佐井川と黒川に挟まれた区域:標高30~45m
②黒川と友枝川に挟まれた区域:標高20~40m
③山国川沿いの区域:標高15~20m

上毛町周辺の地形図②:スーパー地形より抜粋

国土地理院地形図で見ると、さらに区域ごとの違いが分かります。
よ~く見てみてください!

西ほど、平坦地内に池が多いですよね。

③区域には平坦地内に池は1つもありません

やはり標高が高いほど水に困る頻度が高いのでしょうね。

いかがでしたか?
同じ市町村内の平坦地でも、細かく見ると、その土地をつくる土砂を運んだ河川の違いで特徴が異なるなんて面白いですよね。

もちろん「広い日本の中の福岡県東部」という意味では同じ土地ですが、詳しく見れば、それぞれ背景の異なる唯一無二の土地なのですね。

お読みいただき、ありがとうございました。

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