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柔らかい地層なのにナゼ台地が多い?:千葉県南西部平坦~中山間地域【地元再発見の小旅行vol.19】

千葉県南西部の平坦~中山間地域は第四紀更新世(約258万年前)から現在にかけての地層(砂・泥・礫・火山灰など)で出来ています。
普通に考えれば柔らかそうな地層ですが、山間部では台地状の地形が多く見られます。

場所の再確認

千葉県南西部の平坦~中山間地域は東京湾の東側の以下の5つの市に含まれます。

位置図

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。


台地状の地形たち

ではさっそく見てみましょう。

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この地域の主要河川は3本あり、北東から養老川(ようろうがわ)、小櫃川(おびつがわ)、小糸川です。
今回見ていく地形は、このうちの養老川と小櫃川に挟まれた位置にある山地です。

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拡大しました。
北の方が台地が広くて南ほど尾根が小刻みになっていますね。

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さらにアップ!
一番南の台地は例外として、基本的には南ほど台地が狭くなり、尾根が小刻みになっていきます。

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これが上図の北部を拡大したもの。
面白いですね!谷が大地を削って、まるで迷路みたいになっています。

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そして南部の拡大。
やはり一目瞭然ですよね。台地の面積が小さく、または台地ではない山地地形になっています。そして谷も細かく入り組んでいます。

こう言う場合、たいがいは地質に原因があります。見てみましょう。

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シームレス地質図V2をかぶせました。
みんな緑色系統なので見にくいですが、真ん中あたりに境界線が見えますね。南西から北東にかけて曲がりくねりながら伸びる線が見えます。
確かに、だいたいこの線の北西と南東で地形が変わりますよね。

南東側の地質は更新世の中で一番古いジェラシアン期(約258万年~180万年前)から中期更新世の前期の海の地層です。
一方、北西側は中期更新世の後期なので、南東の地層より少し新しい地層です。そして汽水域~海域と陸域の混合層ということですので、南東よりも粒径の大きい堆積物(砂~礫)が多くて浸食に強いのでしょう。(※陸地ほど粒径の大きい堆積物が多い)


なぜ台地ができる?

なるほど。台地がある地域は陸域の地層が混ざっていて、海の地層メインの南東地域より削れにくい。
でもこれまで紹介してきた台地と言えば、溶岩台地火砕流台地と火山系の地質によるものが多かったですよね。
それと東京の武蔵野台地段丘など河川堆積物でできた台地もありました。

今回のように柔らかそうな新しい地層に台地ができるのは、どういうことなのでしょう?

これについては地質図の解説書(徳橋・遠藤,1984)に「この地域は山頂は平坦だが周囲が切り立った崖になっていることが多い」と書いてありました。本当は原文のままを引用しようと思ったのですが、今その箇所がさがせず、数日前の記憶をもとに書きました。スミマセン。

私も大学生時代、同級生が千葉の地層を研究していた関係などで実際に現地を見たことがあります。
地層そのものは柔らかめで、ネジリ鎌で表面の汚れ等を削って地層の観察をしました。

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徳橋・遠藤(1984)より

こんな感じです。
ガッチンゴッチンに硬そうな雰囲気ではないですよね。でも切り立った崖になっています。

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徳橋・遠藤(1984)より

そしてこれを見て、なぜ台地になりやすいか見当がつきました。

まず地層(層理面)が発達している。そしてその面の傾きが小さいこと。
雨水などで削られても地層の面が残り、それが平坦な地形をつくるのでしょう。
また頂上の地質が礫岩凝灰岩など浸食に強い場合に平坦面として残ると考えられます。

そして火山灰質の地層には「通常は粒子が噛み合って強いが、大量の水に触れると噛み合わせがほどけて弱くなる」という特徴があるのですが、この地域の砂岩や泥岩にも似たような特徴があるのかも知れません。(※大雨の時は一気に崩れるけど、通常は削れない→切り立った崖になる)


千葉県にはこのほかの地域でも切り立った崖が見られる場所は多いと思います。見かけた時は是非、地層を観察してみて下さい(※落石が危険なので近づきすぎに注意)。

お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

徳橋秀一・遠藤秀典(1984) 姉崎地域の地質 .地域地質研究報告(5 万分の 1 図幅), 地質調査所 , 136p.

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