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のっぺり禿山モコモコ地形: 鳥取県南東部高山地域【地元再発見の小旅行vol.13】

鳥取県南東部の高山地域をまだまだ見ていきます。
下図のの地域。今回はこの中でも南の方になります。

鳥取県_区分_番号

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像を含め、以下の画像すべて引用もとは同じです。

なだらかな丘が連なる

では、さっそく見ていきましょう。

位置図

黒線が県境です。
前回お話ししただだっ広い斜面は黄色で囲った地域で、今回はこの南西の方の赤丸の場所です。智頭町の東部になります。

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どうでしょう?
とある特徴が見えませんか?

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もう少しアップで!
前回のだだっ広い斜面とは逆で、尾根が分断されて小刻みですよね。
しかも山頂はまるっぽくて緩やか。まるで丘のようです。
谷も上流の割には広い。

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ほら、谷が広くて山頂がなだらかです。

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標高が1000mを超えるほどの高い山なのですが、谷との標高差が数10mから100m程度なので高く感じないみたいです。

3Dも見てみましょう。

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なんかちょっと気持ち悪い(笑)
踏んだら足つぼ刺激されそうです(笑)

地質は?

そうですよね。こういう場合たいがい地質が関係しているものです。

地質図_加工

20万分の1地質図幅「姫路」:地質調査所 より

黒線が県境。赤丸の場所です。
ピンク色でMgdと書いてありますね。これは白亜紀~古第三紀(約1億4000万年前~2300万年前)の花崗閃緑岩です。
マグマの成分が花崗岩と閃緑岩の中間のものです。

花崗岩類は基本的には硬くて石材として利用されていますが、実は風化するスピードがはやいらしいのです。
もちろん建材で使われている花崗岩は表面をコーティングしてるので風化しませんが、自然状態にある花崗岩はボロボロのものも多いのです。

どのように風化する?

もともとマサ化と呼ばれる現象は私も知っていました。
マサ化とは花崗岩類内の各鉱物の密着がなくなり、バラバラになって砂っぽくなる風化のことです。
年間を通じての寒暖差で鉱物が膨張したり収縮したりするのですが、その膨張・収縮の程度鉱物の種類によって違います。
そのため、少しずつバラバラになるのです。

その他にも何かないかな?と思ったら、良い論文を見つけました!

花崗岩地形

出典:池田(1997)より

なるほど・・割れ目の入り方によっても、風化の仕方が変わるみたいです。
智頭町のあの地形の場合、下のタイプが近い感じですよね。

花崗岩類はそもそも地下深くでつくられる岩石ですので、地下から隆起してきて、上を覆っている別の地層が浸食されてはじめて地上にあらわれます。
日本は海洋プレートからギュウギュウに押されながら隆起するため、外国の花崗岩よりも割れ目が多くて風化しやすいのだとか。

加えて日本は雨が多いですからね。
風化してボロボロになって流されやすい。
上流付近なのに谷が広いのは、花崗岩類のマサ(真砂とも書きます)がたまったからでしょう。

花崗岩地形_02

出典:池田(1997)より

これは六甲山の写真ですが、こんなにモコモコの地形になるのですね!

花崗岩地形_03

出典:池田(1997)より

こちらは琵琶湖のあたりの田上山地の写真だそうです。
尾根がなだらかですよね。地形図のイメージとピッタリです。

花崗岩地形_04

出典:池田(1997)より

これも田上山地。
いや~面白い!是非、行ってみて生で見てみたいです。

空中写真3Dで見る!

では智頭町の場合はどうなってるのか、空中写真3Dで見てみましょう!
空中写真はどうしても継ぎ目の色の差が大きいと違和感が出ちゃうのですが、どんな感じですかね?

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やはり継ぎ目が目立ちますが、でもモコモコでノッペリした山頂ではげ山なのは、写真のイメージと合いますね!

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緑が少なく荒涼とした雰囲気もあり、日本の景色ではないみたいです!


いかがでしたか?
緩やかで小刻みな地形。何かと思ったら花崗岩のせいだったようです。
他の花崗岩地帯がどんな感じか、いずれまた紹介しますね。

お読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

猪木幸男(1981)20万分の1地質図幅「姫路」,地質調査所.

山田直利(1966)5万分の1図幅説明書「智頭」、地質調査所、65p.

池田 碩(1997)花崗岩地形の特徴ー組織地形学の視点からー.奈良大学紀要、第26号、p.33ー49.

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