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地震がキッカケだったかも?("おむすび地形"はナゼできた??part2):岐阜県南東部山間地域【災害から身をまもるvol.19】

前回は三角おむすびのような地形が地すべりで出来たのではないか?というお話をしました。
今回は地質を手掛かりに解明していきます!

地すべり地形判読図

防災科学技術研究所J-SHIS Mapで地すべり地形と判読されているか確認してみます。

地すべり地形判読図02

地すべり地形判読図(防災科学技術研究所より)に筆者一部加筆

茶色の点線が私が判読した地すべりの範囲(大きく見た場合)です。
防災科学技術研究所は大きな地すべりは無いと考えているようです。
小さい地すべりは判定されていて、それは私の判定とだいたい同じですね。
う~ん、大きいの無いとしたら上の平坦地の成因はどう考えているんだろう?


地質を確認

次に地質も見て検討していきましょう。

地質図_02

20万分の1地質図幅「飯田」(地質調査所より)に筆者一部加筆

地すべりの大部分を占める肌色は中生代白亜紀溶結凝灰岩です。
一般的に考えれば硬くて地すべりになりにくい地質です。
でもこの下に凝灰岩泥岩など滑りやすい地質があれば可能性はあります。
一応この溶結凝灰岩の下には礫岩や泥岩があるらしいのですが、この地域では確認できません(もっと東にある)。
加えて西に見える赤色は溶結凝灰岩の後に貫入した花崗岩
花崗岩は風化が進めば地すべりになる事例もあるんですが、ここではどうか?情報が足りずにイマイチ分かりません。
また黄色の地層はだいぶ新しい時代(新生代新第三紀鮮新世)の砂岩や泥岩などで、溶結凝灰岩の上に載っているので、地すべりに関係は無いです。

う~ん、何だかスッキリしません。


と、思いきや!!

シームレス地質図V2の方を見てみると、何と溶結凝灰岩の時代が先ほどの地質図と全然違う!
この地質図の方が最新なので、こちらをもとに考えていきます。

地質図_03

地質図の中身はだいたい同じなのですが、肌色の溶結凝灰岩の時代は第三紀中新世(約1600万年~700万年前)と5000万年以上も新しくなります。
西の花崗岩は同じく白亜紀で古い地質なので、溶結凝灰岩が花崗岩の上に載っていることになります。
加えて土岐川を挟んだ対岸に見える青色は泥岩溶結凝灰岩の下にあります。こんなに近くに分布してるなら、当然、地すべり範囲内の地下に泥岩があると考えられます。

そして泥岩と礫岩の境界面は東南東方向へ約10度傾斜していると読み取れました(上図南西)。

画像4

となれば巨大地すべりは東南東に動いた可能性が考えられますので、この方向で切ってみます。

地震地すべり

縦横比1:1だとペラペラで見にくいので縦は2倍です。
地すべりになりそうなカタチの線を引いてみたのですが、底面の角度は5度くらいです(縦が2倍なので図では10度です)。

地層の面の傾斜はムラがあるので5~10度のズレはあり得ますし、5度の傾斜であれば地すべりが動く可能性は十分あります。


おむすび地形ができたワケ

以上から、おむすび地形の歴史についての私の考えをお話しします。

①:過去の直下型地震によって巨大地すべりが動く
この地すべりはかなり大きいので地震がキッカケで動いた可能性が考えられます。と言いますのも、実は周辺には活断層が多いんです。

活断層

断層帯位置図(地震本部より)に筆者一部加筆

赤丸がおむすび地形の位置です。断層(黒線)、多いですよね。

地震地すべり移動方向

この時に赤矢印(地層の傾き方向)の方向に動き、左側部(上図①)と頭部(上図②)のキレツができます。これが線状地形になり三角おむすびのカタチになったと考えられます。
またキレツが開いて陥没地形ができ、これが平坦地になりました。

花崗岩は硬いので地震の衝撃で多少は動いたと考えられますが、溶結凝灰岩の範囲ほどは動かなかったと考えられます。そのため花崗岩の範囲には平坦地(陥没地形)がない。

ちなみに当初は南東方向(黒矢印)への動きを想定しましたが、この方向だと花崗岩がつっかえ棒の役割になると考えられます。
でも赤矢印方向だと花崗岩は邪魔にならないため、動きやすかったと考えられますよね。

②:その後
地震で動いた時の衝撃で多くのキレツができ、地下水が溜まりやすくなって風化が進む。花崗岩の風化も進み、斜面下部で多くの地すべりができる。

地すべり地形判読図02

地すべり地形判読図(防災科学技術研究所より)に筆者一部加筆


以上となります。
地形と地質のデータをもとにした私の推測ですが、不思議な地形がなぜできたか?を考えるのはなかなか楽しいですよね。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。


参考文献

山田直利・脇田浩二・広島俊男・駒沢正夫(1990)20万分の1地質図幅「飯田」、地質調査所.

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