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古地磁気とは、なんぞや?②【地質のきほん:その3】

※トップ画像は宇宙科学研究所ホームページより引用

の続きです!

磁性鉱物って?

磁性鉱物と呼ばれる鉱物があります。
そのうちの1つ磁鉄鉱のお姿はこんな感じでしたね。

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文部科学省ホームページ科学技術週間 一家に一枚ポスターより

簡単に説明しますと、磁力を帯びた鉱物のことです。
鉱物とは、英語で言えばミネラル
例えば身近(?)ではダイヤモンドとかエメラルドなどの宝石鉱物です。マグマが冷えて固まっていく途中で、中の成分が、その成分ごとに独自のカタチで固まる(結晶)と言えばイメージしやすいでしょうか?(※あとで詳しい解説記事を書こうと思います)

ここでは「磁性鉱物」とは磁石の性質を持っている小さい石のカケラと思って下さい。
この磁性鉱物が地球上にたくさんあり、それを含む岩石が形成された当時の地球磁場に影響されて磁気を帯びます。
これは残留磁化(ざんりゅうじか)と呼ばれ、地質の研究で主に使われるものは2種類あります。
この残留磁化を測定することで、古地磁気が分かります。

火成岩の残留磁化(熱残留磁化)とは?

火成岩とはマグマが冷えて固まった岩石ですよね。岩石の基本については以下の記事を見てみて下さい。

火成岩の場合「マグマが冷える」がカギです。

磁石って温度が上がると、その能力がリセットされるって聞いたことあるでしょうか?
その温度は物質(もの)の違いで温度も違うらしいんですが、とにかく磁性が失われる温度ってことでキュリー温度(キュリー夫人のダンナさんの発見)って呼ばれてます。

磁性鉱物磁力を帯びるのは、だいたい500~600度より冷えた場合なんだそうです。
マグマは熱い場合1000度らしいので、中に含まれる磁性鉱物の磁性がリセットされた状態で噴火して、地上付近で冷えて岩石になる過程で磁力を帯びます。この時、キュリー温度より冷えた時点で磁力を帯びますが、その方向などの性質は勝手な磁力にはなりません(笑)
マグマが冷えてできた岩石は、冷えた時の地球磁場にピタッとあった状態で磁化しちゃいます。
これを熱残留磁化(ねつざんりゅうじか)と呼びます。

例えば、1億年前の火成岩の古地磁気を測定したとしましょう。
それで分かった磁気のデータは、まさに1億年前の地磁気の方向などを表していることになるんです!

堆積岩の残留磁化(堆積残留磁化)とは?

火成岩の熱残留磁化は磁力が強く、また年代測定(別記事で解説します)もやりやすいので研究のために便利なのですが、弱点もあります。
それは火山は地球上でも限られた場所にあり、また噴火する時期も限られてしまう。つまりデータが少ないんですよね。

そこで現れた救世主は堆積岩です。堆積岩の中でも粒子の細かい泥岩は主に湖の底や深海底など静かな場所に堆積するので古地磁気の研究に適しています。どういうことかと言うと、磁化する過程にヒミツがあるんです。

堆積残留磁化

自作の図です。
磁性鉱物を含む細かい粒子が水中でゆらゆらと漂いながら沈殿していきます。水の流れの少ない静かな場所でゆっくり沈殿します。
その時に、当時の地磁気の方向に合わせて粒子が並びます。これが堆積残留磁化(たいせきざんりゅうじか)と呼ばれています。
方位磁針がクルクル回るように、水中で向きを変えるんですね。
ただし必ずしも全部の粒子が揃う訳ではなく、また生物に乱される場合もあるので火成岩よりは磁性は弱くなってしまいます。
でも泥岩は様々な場所にあり、一定期間、継続して形成されるので古地磁気研究をする場合、非常に役立ちます。

ちなみに火成岩や堆積岩の磁性は長い年月の間に、その時その時の地場の影響を受けて上書きされたり、落雷の影響を受けたりします。
ですので測定の時に上書きの磁化を消す消磁(しょうじ)という処理をするなど慎重に研究されています。
私も大学生の時にやりましたが、手間のかかる大変な作業でした。

だから何?

以上が古地磁気の基本的な話です。
はい。みなさんの心の声が聞こえてきました(笑)
当然、これだけではピンと来ませんよね。昔の地磁気を知ってどうなるのか?
でも古地磁気の研究のおかげで、みんなが聞いたことのある有名な理論が証明されたり、将来訪れる地球の危機を予測するために役立っています。
それについては、また別の機会にお話ししたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

西山慶尚(1997)古地磁気とプレートテクトニクス.愛媛県総合科学博物館研究報告,2,1-11


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