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語学力不問で翻訳者になれるって本当?詐欺業者にお気をつけください【全文無料】

今日はちょっと目先の変わったお話です。わたしは副業で翻訳の仕事もしていまして、学生時代のバイトから数えれば、ライター業よりも翻訳業の方がキャリアが長いくらい。東京で翻訳のプロジェクトマネージャーをしていた時期もあるのです。

誰でもすぐに翻訳者になれる?

さて、日本では最近、翻訳者を志望する人が増えているようでそれは素晴らしいのですが…。

なんでも「「簡単に翻訳者になることができる。高収入を得られる」などの宣伝文句で受講者を集める翻訳の学校、講座等」「「AIを使った翻訳なので語学力不問で翻訳者になれる」と宣伝する翻訳の学校、講座等」が出現しているようで、とうとう以下の団体が連名で警告を出しました。詳細は上のリンクをクリックしてご覧ください。

特定非営利活動法人 日本翻訳者協会(JAT)
一般社団法人 日本翻訳連盟(JTF)
一般社団法人 日本会議通訳者協会(JACI)
一般社団法人 アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)

そんなレベルの翻訳に企業はお金を払わない

これ、少し考えるとおわかりになるとおり、「誰でもすぐにできるレベルの翻訳」「AIを使ったレベルの翻訳」に企業がお金を払うなんてありえませんよね。だってそんなの自社でできるやん。はーーーっはっはっは😆

たしかにAI翻訳は便利。わたしも疲れている時には、海外ニュースをGoogle翻訳などにかけてざーっと飛ばし読みしたりします。AIが100%正しい翻訳をしてくれることはまずないのですが、それで骨子はわかるからです。気になる部分があれば必ず原文を見て確認するという、そういう使い方には良いですよね。

しかし、それはあくまでプライベートでの話であり、そのようなレベルの翻訳を企業や団体が自社ウェブサイトや契約書、プロモーション資料などに使用すれば、どのような混乱や事故が起こることでしょうか。想像するだに恐ろしい話です。

どんな人が「すぐに」翻訳者になれるのか?

上述の通り、わたしは翻訳のプロジェクトマネージャーを経験しております。そのときに数十人の翻訳者さんたちと仕事をして、経歴書も拝見してきたわけですが…。

端的に言って優秀な翻訳者のほぼ全員が相当な高学歴です。東大早慶上智はアタリマエ、海外の有名大学卒の人も多数。さらに、ITや医薬やエンジニアリングなど、それぞれに専門分野を持っている方も多く、とにかく目がつぶれそうなくらいピッカピカでキラッキラの経歴書が多かったです(※高学歴なら必ず翻訳者になれるという意味ではないですよ)。

つまり、わたしが把握している限り、翻訳者になる方はそもそも学生時代から学業優秀。さらに多くの場合には外国語を専攻していたか、もしくは留学・海外駐在などの経験をしている人がほとんどなのです。

したがって、上の属性をすべて満たしている人の場合には、たしかに半年~1年間ほどのコース受講で「比較的簡単に」翻訳者になれる方は多いのではないかと。人によってはコースすら必要ないかもしれません。しかし、その場合には、長年をかけて築いてきた知識と経験が必要なのです。そういう意味では「すぐ」でも「簡単」でもないと言えるでしょう😌

翻訳業界はそもそも「濡れ手で粟」には程遠い

正直なところ、翻訳者として講演をバンバンしているとか、著書があるとか、何か専門知識を兼ね備えているとかでない限り、翻訳者の年収が1,000万円を超えることは滅多にありません。年収400~700万円あたりの人が多く、会社員と大差ないと思います。時給なら3,000円くらい。

わたしは本業はライターで、そちらではときどき時間や労力のわりに見返りが大きい「おいしい仕事」が回ってきますが、翻訳業界ではそんなことはこれまた滅多にありません。基本的にめちゃくちゃ地味な職人作業です。そういう一見地味な作業のなかに知的な面白さを見出せる能力も必要だなぁ…と思います。

つまり、「楽してお金をがっぽり稼ぎたい」という方にはどう考えても不向きなんですよ(笑)。とにかくカネカネと言うなら、水商売とかYouTuberとか土地ころがし(って今もできるのかな?)とか、他に魅力的な職業はいっぱいあるはず。もちろんそういう仕事にも適性はあるでしょうが、少なくとも向いている人なら短期間で多額のお金を儲けられるでしょう。

まとめ:ダイエットだけかと思っていたら…

「すぐに結果が出る」というのはたしかに魅力的な響きで、今までも「これを飲むだけで3か月で20キロダウン!」みたいな広告はいくらでもありましたよね。英語学習も「3か月でペラペラに!」とかはあったかも。

しかし、「翻訳者に簡単になれる!」と言い出す業者がいてそれを信じる方がいるというのは、時代は変わったというべきか、本当にびっくりしました。

もちろん、翻訳コースの多くはまっとうなものなのでしょうし(受講したことがないのではっきり言いきれないのですが)、実際にわたしは1人、翻訳コースで1年だったか2年だったか勉強してプロの優秀な翻訳者になった方を知っています。

しかし、いかにスバラシイ講師の指導を受けたところで、特別な素地をお持ちでない方が数か月で翻訳者になるのはほぼ無理、さらに語学力なしで翻訳者になるというのは100%無理ということをお伝えしたいと思います。さて、わたしは今日もフル装備で、静かに過酷な翻訳という名のバトルフィールドに赴き、外国語という名の魑魅魍魎と戦ってきます。えいえい😆

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