においフェチの仙人に一度は救われたけど結局40万払った話【前編】
今までの人生で一番高い買い物は何ですか?
私は、歯だ。
正確に言えば、インプラント。この歳で。
歯医者に行くと十中八九待合室にインプラント関連のポスターがあるけど、自分には無関係だと思ってた、そう、2年前までは。
これは、私が小6で歯に異常が起きてから、25歳にしてインプラントを入れざる負えない状況に追い込まれるまでの13年間のドキュメンタリーだ。
正直13年前のことなんて詳細は忘れているので、細かいセリフなどは脚色しているがそれを含め楽しんでいただきたい。
①歯が痛い〜ヤブ医者に騙されて〜
小学6年生。
私は歯の痛みに悩まされていた。痛い。とても痛い。左下の奥から2番目くらいの歯が。
その時は大したことだとは思わずどうせ虫歯だろうくらいの気持ちで町の歯医者に行った。今思えばそれが悲劇の始まりだった。洋画ホラーでいうところの、若い男女4人がオープンカーで避暑地に向かうシーンである。
下された診断は、「噛み合わせが悪いので上の歯を削っちゃいまショウ☆」とのこと。その時は特に疑いもせず、「お願いしマス☆」と言って削ってもらった。今思えば本当に返して欲しい。削った分。健康な歯なのに。今からでも遅くないから。
上の歯を削り数日。
痛い。とても痛い。むしろこの前より痛い。やばい。歯肉も腫れた。外から見てもわかるレベルに。
応急処置として母にクローブというスパイスの粒をかじらされた。
「歯痛に効くから!」と言われたが、もはやそんなジブリ的医療が効くレベルの痛みではない。
もう一度歯医者へ。
「もう少し削っちゃいまショウ☆」
もう少し・削っちゃい・まショウ だと…?
こんなにも歯肉が腫れているのにまだこいつは嚙み合わせが原因だと思ってやがるのか…?
さすがに母も私もこいつぁやばいと気づき、大きな歯医者に行くことにした。
②人生一の痛み~小6女子、暴れ馬と化す~
めちゃくちゃでかい歯医者に行った。歯医者というよりは総合病院みたいなところだった。
仙人みたいな歯医者に歯の痛みと歯肉の腫れを訴え、口を開けた。
「中心結節ですね」
なんだそれは。わからないが、即答であった。
「もうちょっと早く来てくれればよかった。もう神経死んじゃってます」
神経死んじゃってます
神経、死んじゃってるの!!!!!??????
つまり、こういうことらしい。
私の歯は中心結節という突起があって、そこまで神経が伸びていた。
発見が早ければ周りを樹脂で固めるなどすればよかったが、もう既に突起が折れて神経がむき出しになり、死んだ。
SHINKEI IS ALREADY DEAD.
かわいそうな神経!!!!!!!!!!!!!!!!
「折れたところから雑菌が入って歯肉に膿がたまっているので、下まで削って綺麗にし、お薬を詰めてふたをします」
なんかよくわからないが建物の規模的に地元のヤブ医者よりは100000000000倍信用できるので、そうしてもらうことにした。
この治療でのちに生死をさまよう(体感的に)ことになるとは、この時はまだ知る由もなかった。先ほどの洋画ホラーでいうところの、道に迷ってしまった4人に親切な村人が声をかけてくれ、家に泊めてくれるというシーンあだ。
小6は、そこそこ大人だ。
いや、今見ればめちゃくちゃ子供だが、多少の常識はあるし物事の分別はつく。スーパーで駄々をこねて泣きわめくこともなければ、お母さんと手をつないで歩くこともない。
そんな小6女子が、暴れた。
みなさん、知ってましたか…?
膿がある場所には麻酔が効かないということを…。
知ってたなら早く教えてよ…。
「治療始めていきますね~」
台の上には物々しい器具がたくさん置かれている。
見たことのない、カラフルな針がいっぱい詰まった箱もある。おそらくこれで膿を取るのだろう。
麻酔を打たれた。
痛い。
麻酔って痛みをマヒさせるためのものなのに、麻酔自体めちゃくちゃ痛いですよね。まあこの後の痛みに比べたら全然かわいいものなんだけど。
次に、歯を削る。
えぐいくらい削る。
心配になるくらい削る。
普通虫歯の治療とかだと表面数ミリしか削らないと思うが、なんせ根元までだ。ケタが違う。体感40センチくらいだ。
でも、まだ痛くない。音は非常に不快だが、あのキュイーンな痛みはない。神経が死んでいるからだ。本当に死んでいたのだ。彼の死をやっと受け入れられた瞬間だった。ここからは前を向いて生きよう…。
根元まで削り終わると、歯医者が例のカラフル針ボックスに手を伸ばした。
膿取りTIMEが始まるようだ。
一本の針(のようなもの)を取り、削った場所に入れ…
「んああああああああああああ!!!!!!!!!!?????????????!!!!!!!!!」
この世に存在する言葉では言い表せない、痛み。もはやこれは痛みなのかすらもわからない、痛み。あまりの衝撃に、反射的に逃げた。もう一度やられたら多分死ぬ。ボスの名前もアジトの場所も全部吐くからもうやめて!!洋画ホラーでいうところの、泊めてくれた村人は実は食人族で………もういいや、この喩え。
当たり前にやめてくれる訳もなく、母と歯科助手が二人がかりで私の体を抑えた。
何という…何という雪辱…ジーザスクライスト!!!!
そして待ったなしの二発目が来る。
「ぐああああfjkbgkjんvjんlれくあgh;rwgんjkfんぶえrhぐうぇjg;kんfdbんfbんfblんfkbんlkb!!!!!」
痛みは和らぐことはない。いっそのこと気絶してしまいたい。全身麻酔をしてくれ。
なんて言うんだろう。むき出しの肉を、針でつんつんつーんってしてる感じ。感じ。というか事実そうなんだけど。
どれくらいの時間そうされていたかわからないが、とにかく人生一痛い時間を歯医者のつるっとしたベッドの上で過ごした。大人二人に押さえつけられながら。
大人二人に押さえつけられる事なんて今後一切ないだろうな。もし同じ治療するとしたら確実にまた暴れるけど。170cmの巨体で。
まあそんなこんなで、腫れの原因になっていた膿を取ってもらい、しばらく通院することが決定しました。
③歯医者へ通院~仙人の癖(へき)~
次の来院日。
もうあの痛い治療をしないとわかってはいるものの、頭によぎる悪夢のような思ひで…。
重たい足を引きずりながら、なんとか母と歯医者へ。
仙人がくる。
「悪魔め」
そう心の中でつぶやき、睨む。(恩知らず)
「見ていきますね~」
仙人が口をこじ開け、歯のふたを削る。
そして中に詰められた綿をピンセットで取る。
そしてそれを自分の鼻に近づけた。
え?
鼻に?
なんで?
そして
「おお、すっごいにおいがする♡」
何かの間違いだろうか。間違いであってほしい。歯医者がそんなことをするはずがない。患者の化膿した歯に詰まってた綿のにおいを嗅ぐ歯医者なんて存在するはずがない。ありえない。
「ほら、すっごいでしょ♡」
あろうことか、その綿を、私の鼻に、近づけた。
嗅いだことのないにおいがする。それ以上に感じる、圧倒的違和感。
これは現実?はたまた幻?
小6のまだうぶな私でも、仙人の”異常さ”を本能的に感じ取ることができた。
女子小学生の化膿した歯に詰まっていた綿を嗅ぎ、さらに本人にも嗅がせる。
超異常性癖である。
しかし歯科助手は普通の顔をしている。
毎度のことで麻痺してしまったんだろう。恐ろしい…洗脳…
小6の私は仙人の異常行動に恐怖を感じながらも担当替えを依頼することもなく、通い続けた。
その後3~4回同じ処置を受けた。
3~4回においを嗅がれた。
治療が終了したとき、治った喜びよりも仙人に会わずに済む喜びのほうが大きかったというのは、さすがに言い過ぎだろうか?
まあでも彼がいなければ私の上の歯が削られ続け膿で顔がアンパンマンになっていたので、多少なりとも感謝はしている。
後編は13年の時が立ち、インプラントを入れたときのことを書こうと思う。
ではまた。
カラサワ
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