曲げわっぱとの愛おしい毎日
職場で、木でできた小判型のお弁当箱を使っている人がいた。ちらりと覗くと、いろいろなおかずがぎゅうっと詰まっていて、とてもおいしそうだった。
「曲げわっぱっていうんですよ」と教えてもらった。
それからわっぱに憧れを持ちつつ、お弁当箱に500円以上は出せないなあなんてケチっていたけれど、でもやっぱり欲しくって、ついに買った。3000円と、お弁当箱としてはお高いけれど、本当に欲しいのなら早く買うのが良いと思っている。
ネットで注文し、数日待つと、念願の曲げわっぱが我が家にやってきた。天然杉でできた、小判型のお弁当箱。シンプルだけどすごく温かみのあるデザインで、爽やかな木のにおいでいっぱいだ。まだ使ってもいないのに大好きになった。
次の日の朝、いつもよりちょっと早起きをした。木の匂いでいっぱいのわっぱ。濡らしたキッチンペーパーで、内側をさっと湿らせる。
少し色が濃くなったところに、ホカホカの炊き込みご飯を詰める。もう既に、おいしそう。木と炊き込みご飯はとってもよく似合う。付属の仕切り板を入れて、鶏の唐揚げと大根の煮物、彩りにミニトマトを。
最後に、炊き込みご飯の上にオクラの胡麻和えを添えたら、出来上がり。
いつものお弁当が、ぐんと格上げされた。「峠の釜めしみたいじゃん」なんて過大評価をし、仕事へ持って行った。仕事中もずっとお昼が楽しみで、いざお昼になってお弁当箱を開けると、中身を知っていながらも自然と笑みがこぼれ、気分が高揚した。
そして食べるとさらにびっくり。
「おいしすぎる!!」
天然杉の曲げわっぱはレンジが使えないのだけれど、常温でもすごくすごくおいしい。その秘密は、天然杉の持つ吸湿力・保湿力にある。ごはんやおかずの余分な水分を逃がし、適度に保ってくれるので、プラスチックのお弁当箱のようにべちゃっとすることがない。そして、天然杉の爽やかな香りが、ごはんにほんのり移り、それがまたおいしさを増してくれている。殺菌効果もあるため、湿度の高い日本にはすごく相性が良いらしい。
「お弁当にこんな力があったなんて!」
今までお弁当は節約のためとか、健康管理のためとしか思っておらず、作るのも、食べるのも、別に楽しくはなかった。お弁当箱を変えただけで、お弁当を作るのも、食べるのも楽しみに変わり、毎日毎日自分のために心をこめて作っている。
曲げわっぱはデリケートなので、お手入れはちょこっと面倒だ。汁物も入れられない。食後すぐにぬるま湯に浸し、わっぱにしみ込んだ汚れを浮かせる。そして手やスポンジで擦って洗う。(たまに洗剤も使っちゃうけれど)乾くのにも時間がかかるため、丸一日陰干しをする。プラスチックのお弁当箱に比べるとかなり面倒くさいが、その面倒くささがまた愛おしい。
最近は、仕切り板を使わずに、ごはんにおかずを立てかけるようにぎゅうぎゅうと詰めている。昨晩のおかずの残りを、作り置きのお惣菜を、時には朝ささっと作った一品を、冷凍おかずを。
曲げわっぱのある毎日は想像以上に愛おしくて、本当に買ってよかった。
明日は何を詰めようかな。
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