「コンドームを買ったら笑われる」
わたしはアフリカにある小国、ルワンダの農村で暮らしている。
ここに来てからずっと気になっていることがあった。
聞きにくいなあと思いながらも、勇気を出して同僚のティックトックおにい(いつも空き時間に延々ティックトックを見てる、貧困問題担当の人)に聞いてみた。
「なんで、この人たちは貧しいのに子どもをたくさん産むの?」
案の定同僚は「ん~」と考え込んだけど、教えてくれた。
彼が言うには、理由はいくつかあるけど、その中でも考えられる理由は3つ。
1.たくさん産めば、政府から援助を受けられると思っている。(実際に受けられるかは別)
2.たくさん産めば産むほど、神のご加護を受けられると思っている。
3.性教育を受けていないため、無計画に妊娠・出産してしまう。未婚でも、妊娠をしてしまい、産むしかなくなる。
1,2に関しては、正直私の手の及ぶ範囲ではないが、3に関しては活動の余地があると思い、おにいを質問攻めしてみた。
私 「みんなコンドームは使わないの?」
ティ「大体使わないと思う。教育を受けてきてないから知識がない」
私 「売ってないの?」
ティ「売ってるよ」
私 「どこで?いくらぐらい?」
ティ「近くの商店で、安いと2つで14円くらい」
私 「あとで行ってみる!」
ティ「いや、ユリがコンドームを買ったら、笑われると思う」
私 「え、なんで?」
ティ「女がコンドームを買ってたら、ビッチだと思われると思う」
うー-----ん、なるほど。。。
その後も質問攻めを続けてみた。
そしたら、やはりエイズも問題になっていると知った。
かなり減少傾向だし、アフリカの中では少ないほうだけど、やっぱり世界的に見たら平均を超えている。
首都や大きい街では無料の配布所があったり、大統領夫人がエイズに関するスピーチをしたりしたらしい。
が、学校に行ってこなかった人たちが多く住むこのエリアでは、やはりそういった知識が不足している。
そして、無計画な妊娠。
日本みたいにアフターピルがすぐに手に入るわけもなく、中絶することもできない。
そのため、準備ができてないのに出産せざるを得なくなる。
そもそも、何でこんな質問をしたかと言うと、一つきっかけがあった。
その日の朝、一度会っただけの女性からこんなお願いをされたのだ。
「私は夫がいなく、7人の子どもがいる。子どもが病気だから病院に行きたいけど、お金がない。お金をください」
もちろん、断った。
そして、疑問だったのは、「なぜ私にお金を要求するのか」よりも、「なぜ養う余裕がないのに7人も産んでしまったのか」だった。
この村には、子どもたちがたくさんいる。
平日の朝、制服を着て、友だちと楽しそうに学校に向かう子どもたち。
土だらけの服を着て、親と一緒に農作業をする子どもたち。
ぼろぼろの汚い服を着て、兄弟の面倒を見ながら外で遊ぶ子どもたち。
最近、うちの前でよく遊んでる姉弟がいる。
姉は多分7歳くらい。弟は5歳と、2歳くらい。
服は、ぼろぼろ。靴はなくて足には血がにじんでいる。顔も汚れまみれで、鼻の穴にハエが3匹止まっていても、気にする様子はない。
昨日、日本から持参したフエラムネとビスケットをあげると、すごくうれしそうにみんなで食べていた。
「もっともっと」とせがむ一番下の弟に、お姉ちゃんは自分の分まで分ける。でも、お姉ちゃんだってまだ全然子ども。やっぱり食べたいから、ちょっとだけかじって、残りを弟にやっていた。
真ん中の弟は、急に自分の手に唾を吐き始めて、何するのかと思ったら、自分の唾で脚を洗い始めた。
あまりに見てられなくて、水を持ってくると、冷たさに震えながら脚を洗っていた。
悲惨で、目をそむけたくなるような光景。だけど、彼らは明るい。
今朝、門を開けるとまた彼らがいて、私を見つけると満面の笑みで抱きついてきた。
服を洗ってあげたいし、お湯で体を流してあげたいし、靴も買ってあげたいし、毎日食べ物をあげたい。
そうできるだけ、私はお金を持っている。だけど、だけど、それは、違う。
だんだんと、彼らをこんな状況にさせている親に腹が立ってきた。
なぜ、養えないのに産むのか。
彼らが、無計画の上の子どもかどうかはわからない。
でも、避妊や、安全日・排卵日などの、性に関する知識がもしあったなら、何かが違っていたかもしれない。
私の本来の活動とは少しずれるが、今日から性教育の調査を始めてみた。
まずは、近所でコンドーム探し。
英語の喋れる近所の友達に協力してもらい、「調査だから」と言い訳しながら探した。
すると、6~7店舗ある商店のうち、コンドームを販売していたのはたった1店舗。
値段は、2個入りで14円。(公務員の月収は1~2万円前後)
「1日にどれくらい売れるの?」と聞くと、1~2個ほどで、買うのは男性らしい。
まあ、日本でも男性が買うことが多いと思うけど、1日に1~2個は少ないと感じた。(この村は意外と人口が多い)
そして、買ってみた。
するとなんと "Thai Nippon Rubber Industry" という文字が!!
NIPPON!!メイド in タイだけど!!
調べたら、ちゃんとしっかりしたホームページもある会社だった。
そして、開封してみても、品質は悪くない。
ちょっとずつ、この村で、性教育の普及活動を始めていこう。
きっと、笑われたり、引かれたり、最悪嫌われたりすることもあるだろう。
けど、性の知識は、必要不可欠。
絶対に、誰もが、正しい知識を持っているべきだ。
そう信じて、笑われても、引かれても、知識、そしてコンドームの普及をして行けたらいいなと思う。
恥ずかしいものじゃないし、自分と大切な人を守るものだということを、教えていきたい。
私の知識も、まだまだ。これから学び直そう。
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