【夢日記】いつか住んでいた外国の街

またはセピア色に覆われている。
どこか外国の街にいるようだ。
以前に住んでいた街だ。

商業施設と住居が一体となった高層ビルにいる。
ビルは29階建で、私は、26階にいる。
おもちゃ売り場のようなところの後ろに細い通路があって、居住スペースへ行くことができる。
ワンフロアには4部屋ほどしかなく、細い廊下の壁にドアが4つ並んでいて、反対には窓があり、景色が見える。
窓の下に机が出されていて、ミシンが展示販売されている。
廊下沿いのドアの、奥から2つ目の部屋が私の住んでいる部屋だ。
といっても、今来たばかりで、これからここに住むことになる。
部屋はワンルームで、ホテルのような造りになっている。
毎日、ルームメイキングもあって、さながらホテルのようだけれど。

朝になっていた。
出かける支度をして、大きなドラムバッグは荷物でパンパンにふくれている。
重いバッグを肩からかけると、廊下に出た。
エレベーターに乗って、下まで降り、街に出た。
バイクがたくさん走っている。
私もバイクに乗りたい。
以前に、この街に住んでいた時には、バイクに乗っていた。
早くバイクを手に入れないと。
ふと、伊達メガネをかけてこなかったことに気がついた。
バイクに乗ると、目にほこりが入るので、伊達メガネをかけていた。
たしか、部屋の作り付けの机の上に置いてきたはず。
大きな荷物を肩からかけて、急いで部屋に戻る。
ビルにはエレベーターが3基あって、いちばん手前のエレベーターの扉が開いた。
中に乗ってボタンを見ると、このエレベーターは26階には止まらないようだ。
最上階の29階まだ行って、降りてくることにする。
エレベーターは古いくもったガラス張りになっていて、外の景色が見える。
緑が多い街のようだが、足がすくんで、まともに見ることができない。
ガタガタと音を立てて、ものすごいスピードで上がっていくエレベーターに不安を掻き立てられる。

26階の通路を通ると、欧米人の観光客のような人とすれ違った。
私の部屋の隣の、ひとつ手前の部屋から出てきたようだ。
老婆と中年の女性、それに小さな子供もいる。
そんなに寒くもないのに、大袈裟に水色のダウンを着て、毛糸の帽子をかぶっている、
私は長期の居住だが、彼らは旅行でここに泊まっただけのようだ。
私は自分の部屋のドアを開けて、部屋に入った。
まだルームメイキングは来ていないようで、白いシーツはシワがよったままだった。
机の上から伊達メガネを取ると、急いで、廊下に出た。

いちばん奥の部屋から、欧米人の女性が出てくるのが見えた。
きっとそこの住人だろう。
エレベーターに乗ると、制服を着た子どもたちとその親らしい人たちが乗っていた。
外国人かと思ったけれど、言葉がこの国の言葉だったから、きっとこの国の人だろう。
両親と思しき人たちと、その子どものような2人、父親とその子ども2人か3人。
子どもたちは、たぶん中学生くらいで、入学式に参加するようだ。
初めての制服にはしゃいで、じゃれあっている。

ものすごいスピードで降りていくエレベーターの窓から、スタバの看板が見えた。
道の向こうにあるようだ。
そうだ、スタバでタンブラーを買って、コーヒーを持って行こう。
そのためには、タンブラーホルダーが必要だ。
なくても差し支えないけれど、あれば手が空いて、楽になる。
タンブラーホルダーは、部屋の机の上に置いてきた。
また買えばいいけれど、必要以上に増えても困る。

エレベーターが地上着くと、親子連れは降りていったが、私はそのまま上に上がった。
部屋に入って、タンブラーホルダーを取ると、エレベーターに向かった。
廊下からおもちゃ売り場に向かう途中で、ルームメイキングの清掃員とすれ違った。
すれ違い、通り過ぎた少し後で、あっ、と声が出た。
前の職場の同僚の若い日本人女性だった。
薄い緑色の三角巾を被り、同じ色のエプロンをして、何人かの女性たちと、廊下の突き当たりのドアの向こうにある倉庫の方を向いて、清掃の準備をしている。
たしか、契約期間はもうすでに終わっているはずだ。
となると、帰国するか、他の仕事に就いていることが通常だ。
なぜ、まだここに残っているのだろう。
彼女の方から、話しかけてきた。
「もしかして、○○さんじゃないですか?」
無表情で、そうだと答えると、
「こちらでお仕事されてると聞きましたが、ここにお住まいなんですね」と言った。
私は「○○さんこそ、こちらに残って、お仕事をされているのかと思いましたが…」と言って、その先の言葉を探した。
彼女も居心地悪そうに、「まぁ、そうなんですけど…」
いたたまれなくなり、それきり、挨拶もなく、その場を離れた。

エレベーターを降りて、ビルの外に出ると、オープンカフェやビアガーデンが並んでいた。
客引きに声をかけられたけれど、目的地は決まっているから、そっけなく断って、歩道橋を渡って、道の向こうに歩いてスタバに向かった。

スタバの中は、荒廃しているように見えた。
客はそこそこ入っているが、あまり質のいい客ではなさそうだ。
陳列棚には商品も少なく、お目当てのタンブラーもない。
黒髪に浅黒い顔の女性の店員に、タンブラーを探しているというと、今はないと言われた。
もうすぐクリスマスだから、今はちょうど商品の切り替えなのかもしれない。
そんなことを考えていると、先ほどの女性の店員が近づいてきて、「きっと、あなたにはいいことがあるわよ」とささやいた。


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