【短編】仕返し
H美は、クラスでも人目を惹くオーラのある生徒でいつも取り巻きの女子がついて回っていた。
クラスメイトのK子は、まじめだけが取り柄の控えめな生徒だった。
なぜかクラス委員に立候補したものの選ばれることはなく、教師からの推薦で委員のメンバーとして委員長のH美を助けていた。
H美は文化祭や合唱コンクールなどを卒なくこなし、クラスの人望を集め、教師からも一目置かれていた。
半年後、任期を終えた委員の選挙が行われることとなり、誰もがH美の再選を疑わなかった。
ところが、H美が楽しそうに好き放題やっているのがどうしても気に入らなかったK子は、教師を巻き込んで選挙を辞めさせ、副委員長だったU里がスライドして委員長となるということに話が進んでいった。
突然のことで、H美はどうすることもできないまま、なし崩し的にU里の委員長は承認された。
実のところH美は、これまで散々K子に利用されてきていた。
K子はしたたかで、自分のやりたいことを実現させるために、H美を扇動して教師やクラスメイトに働きかけさせていたのだ。
H美自身、そのことには気づいていたものの、取り立てて騒ぎ立てることなく、うまくバランスを取りながらやってきたつもりでいた。
そのK子が、突然反旗を翻したのだ。
晴れてK子の思惑通り、ほんわかとしたキャラのU里の時代となったが、U里は人がいいだけで、実際にはK子が前面に立ち、U里は盾にされているだけに過ぎなかった。
誰もがそのことに気づいていたが、取り立てて関心を持たなかった。
H美は、内心おもしろくなかったが、表面的には平静を装っていた。
ある日、理科の実験で、H美とK子がペアを組むことになった。
もともと理科が得意だったH美はK子に教えながらも、ほぼ1人で実験を進めていった。
K子は時折手を貸す程度で、それに従っていた。
2人の実験の成果は素晴らしく、県のコンクールに提出することとなった。
教師はH美とK子にに資料をまとめさせたが、実際にはH美が1人で取り組んでいた。
H美の心にふと、悪魔がささやいた。
「仕返しをしろ」と。
H美は少しだけ躊躇ったのち、レポートからK子の名前を消した。
H美は提出時にはK子の名前を戻すつもりでいたが、少し懲らしめてやりたいと思っていた。
「これは仕返しなんだ。散々私を利用しておいて、しれっと裏切ったK子が悪いんだ」
そして、H美は名前を消した事実をK子に伝えた。
K子は激怒し、思いつく全ての言葉でH美を罵った。
H美はその言葉を聞きながら、心の中で思っていた。
ザマアミロ。
優等生の仮面を被ったK子の本性は、したたかで、承認欲求が強い、劣等感の塊なのだ。
そのことを証明し、H美は清々しい気持ちで、K子からの怒りのメールを眺めていた。
H美も相当にしたたかだった。
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