【短編】白いタイツ

幼稚園時代。
私は幼稚園の年長さん。
毎日、白いタイツをはいて幼稚園に行きます。
赤いバッジのチューリップ組の私は、青いスモック、黄色い帽子と黄色い肩かけカバン。
そして、白いタイツ。

弟が生まれて大忙しのママ。
私には興味がないみたい。
私の自慢の長い髪の毛だって、うまく結んでくれなくて、いつもボサボサ。
くしで髪をぐいぐい引っ張って、痛いと言っても、ひいっと引っ張って、かわいい髪飾りのひとつもなくて、ただ黒いゴムで、ぐちゃぐちゃにしばる。
それでも、私に白いタイツを履かせてくれる時だけは、私のことだけを見て、タイツが電線しないように丁寧にゆっくり時間をかけてくれました。

白いタイツは、春夏秋はシームレスで、冬になると、毛糸のケーブル編みのものに変わりました。

年長さんのおゆうぎ会で、先生は機関車に乗った白うさぎの役をくれました。
主役のお姫さまと王子さまを、幸せな国へと運ぶいい役です。
白うさぎだから、ママが新しい白いシームレスタイツを用意してくれました。
ダンボール製の黒くて四角い機関車を肩から下げた私は、頭の上に白い長い耳の冠をつけ、白いタートルネックのセーターを着て、白いタイツを履きました。

私は恥ずかしがりながら、機関車の車掌のうさぎを演じました。
ママは白いタイツを履いた私に「とても上手にできた」とほめてくれました。

小学校の入学式。
グレーのブレザーに、紺とグリーンのタータンチェックのプリーツスカート、そして、白いタイツを履かされました。
白いタイツを履いた私は、恥ずかしがりながら、同じ社宅に住むクラスメイトの男子と3人で写真に収まっていました。
写真に映るやせっぽちな私は、1人だけ、ぽちっと飛び抜けていました。

大人になってからも、歳をとってからも、無意識に白いタイツを探しています。
髪に白髪が混じり始めても、白いタイツを探しています。
シームレスと毛糸のケーブルの白いタイツ。

私の幸せなときの象徴。

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